デジタルエンタテイメント断片情報誌

デジタルな話題もそうでない話題も疎らに投稿

邦画と特撮、アニメに寄せて 映画『シン・ウルトラマン』の感想

ネタバレありです。5/13公開の映画『シン・ウルトラマン』を観てきたので感想です(公式サイト)。詳細なあらすじを並べたりはしませんが、観た人には分かる内容だと思います。感想は目次と前書きでワンクッション置きます。

※画像をタッチ・クリックすると特報②(YouTube)が再生できます。

『シン・ウルトラマン』を観る前に

感想の前に、私がどの程度ウルトラマンが好きか、知っているか、というお話を。所謂テレビ放映された空想特撮シリーズ、『ウルトラマン』(1966)は一通り観ました。『怪獣図解入門』のような本も好きでした。ただ、映画の前に視聴し直したり、日頃から繰り返し観ているわけではないです。ぬるいファン、程度だと思います。

今回は日本を代表するヒーローを題材にした最新映画としてどうだったか、他の一般映画作品と同じスタンスで鑑賞したつもりなので、まずはその感想を書きます。その後は、あれこれ思いついたウルトラマンに纏わる与太話を。

『シン・ウルトラマン』の感想

冒頭の巨大不明生物出現と禍特対の設置までのダイジェスト。これが映像への興味やわかりやすさよりも、映画の始まりとして凄く残念だった。ウルトラマンを知らない層に向けた”軽さ”を狙っているのかもしれないが、物語の導入や伏線として経緯はベタでも劇中に織り込んで欲しかった。特にガボラなど序盤に登場しており、もっと唐突さを排して話を構成できなかったのか。

また今回、政府と関係者の立ち回りがいかにも風刺で床屋政談が過ぎている。タイトルで登場したので書くが、『シン・ゴジラ』が同様な路線でありつつも政治家・役人の”責任”の所在を描くことに腐心していたのに対し、本作は人類側の描写が矮小化してしまった。人間であり宇宙人、という本作のウルトラマンを描くために人類という存在が必要なはずなのに、である。喜劇・コント的な台詞回しの面白さだけ印象に残っていては、ラストで人類滅亡の危機を乗り越えてもカタルシスは得られない。インターネットに現代的な世間・世界の表現を任せる一方で、VR会議が滑稽だけどやっていることは凄い、といった取り残された世代を代弁するような場面にしか演出できなかったことにも本作の限界を感じた。数式の絵面も小手先である。未知の技術や存在に翻弄される人類、だけではなく未来の人類はこうだ、という”空想”や夢の視点を入れて欲しかった。それが後に作品の評価に繋がることもある。

そういう粗さ、雑さは禍特対の描写にも言える。チームや仲間としての妙味以前にリアリティを感じることができなかった。例えば状況に応じた指揮の点で現場に赴く必要性は認めるにしても、禍威獣が暴れる度に班長以下メンバー全員で出動する必要はない気がした。全滅したらどうするのか。対処中に別の場所で禍威獣が現れたら? 禍特対をお役所、ビジネス然として打ち出すのならそういう目で見てしまう。ちょっとしたフォローすらないのが釈然としないのだ。当然ドラマ的、映画的な、ここぞで全員集合という見せ場もない。ウルトラマン誕生のきっかけである、現場での行動も解せない。あの少数精鋭で、神永が一般市民を保護しに動く流れが不自然なのだ。せめて神永が動く前に自衛隊員が手を挙げる、といった描写は入れられなかったのか。説得力が違ったように思う。

ストーリー・展開にももう一捻り欲しかった。高度な知能と科学力を持つ宇宙人、星人が相手だ。アナログが見抜けない、というありがちな弱点を突いたと思ったらさらに出し抜かれる、そういう応酬が観たかった。ザラブなどあれだけ電子データを自由に操れるのならば、浅見と公安の人間が接した時点で察知するだろう。そこで妨害が入って、というドラマがひとつできる。最終的に神永の居場所に辿り着くにしても、本作のテーマである人間の限界や底力、可能性が結びつけられる。禍特対のコンビネーションがあればラストにも繋がる。単独行動が文字通り一人の行動でなくてもよい。ベーターシステム周りの話を考察・解釈の餌にして風除けにするのではなく、この辺りの丁寧な画が観たかった。

ウルトラマンの格闘シーンについては、活動リミットに纏わる演出が今一つだったように思う。エネルギーがなくなるとカラータイマーの代わりに体色が変わるだけでなく、もう少し動作でピンチが表現できたのではないか。肩で息をする、膝を折る⋯圧倒的な力を見せた後ならば、その落差で表現は容易なはずだ。そもそもそうやっておけば、体色が変わる必要があったのか疑問だ。時間的な制限をなくした割に、最後がわざわざストップウォッチまで示して間隙を縫う戦いだったのは、作品のコンセプトとしては本末転倒に映った。

また全体的な印象として、一部台詞回しや言葉のチョイスにセンスを感じなかった。現代的な言葉遣いを入れるのは構わないが、芝居がかった言い回しとの使い分けがちぐはぐしている。少し時代が変わっただけで作品が古びてしまいそうだ。余談だが今日日女性にコーヒーを淹れたり勧めてもハラスメントの危険性を孕んでいるが、あのシーンは風刺なのか皮肉なのかキャラクターの性格を示唆しているだけだったのか。カメラアングルも独特であること以前に正直男性向けを狙ったようなものが目立ち、作品の意図を測りかねる。

CGについてはクオリティが高く、このレベルならと好意的に鑑賞していた。最後のゼットンだけCG感アリアリで今一つだったか。狙ったのかもしれないが、宇宙という地球上の環境と比較対象できない場所であの表現は画が浮いてしまう。これはゼットンのサイズ設定も同様で、ウルトラマンよりもさらに巨大な相手=強敵を印象づけたかったのだろうが、前述の通り宇宙だとスケールがあやふやになってしまうのだ。バクテリアのような相手にウルトラマンが小さくなって戦っているようにも見える。あれが昨今エンターテイメントで題材にされる仮想空間での戦いだと言われてもおそらく違和感がない。そこが劇中の”日常”以上に、ラストが人類の存亡をかけた最後の戦いという盛り上がりに欠けた要因の一つだと思う。映画全体にこじんまりとした印象を与えたのではないか。もっともそういう含みを持たせて、最後にウルトラマンが帰ってきた場所は果たしてどこだ、という余韻を残すように仕向けたのだとしたら、あざとい。

最後に音楽については、なぜ全て新録しなかったのか不思議だ。ウルトラマンのオリジナル音源は『シン・ゴジラ』で使用されたゴジラシリーズの音源より状態が良さそうだったが、やはり映画館の音響設備だと画の新しさと調和がとれていない。シネマコンサートも盛んな昨今、オリジナルの楽曲を使いたかったら新録で「再現」に挑んでよいと思う。今回新録したと思われる音楽が良かったので尚更だ。


特撮で見たい夢

見出しは『ウルトラマン誕生』(著:実相寺昭雄 ちくま文庫)より。最後にウルトラシリーズ、特に初代ウルトラマンを踏まえて私が『シン』で観たかったもの、期待していたものについて放言しておきたい。既に巷に溢れている内容と大いに被るかもしれないが、独善的に。

ちなみに「特撮で見たい夢」は何か、ウルトラシリーズを担当したカメラマン・中堀正夫がとても素敵な言葉を残しているので引用する:

「⋯⋯むずかしいけど、どこかで本物をこえてなきゃ、特撮がほんとうにすごい、夢が見られたっていえないんじゃないかなあ」
(『ウルトラマン誕生』 ちくま文庫)


・現代においてウルトラマンがいかにバレずに変身するかを楽しみにしていたのだが、早い段階で正体がバレて人前で変身するようになったのが残念。いつも単独行動だからではなく、少しは疑ってもよかったのに。現場にいなくて怒られたりとか。その辺りが様式美の押しつけだとしたら頂けない。逆に変身シーンはもう少しじっくりと、フラッシュビームが体を覆うバージョンが見たかった。ゴメスのついでにジラース出してもよかったのに。


・ウルトラマンのスペシウム光線お披露目はポーズを溜めていてガッカリ。サッと構えてスッと発射が一番好き。あの一連の所作は溜めがないから美しい。以降は溜めてなかったので良しとする。最近のゴジラの熱線といい、なんか溜めるんだな。ゴジラもサッと吐いてくれる方が絶望感を煽る。


・ザラブ、メフィラス、とくればファンなら、あるいはファンでなくてもアイツが出てくると思った宇宙人が出なかった。宇宙忍者ね。デザインは2代目で。こいつなら宇宙語ネタも巻き取れるし、地球侵略の背景も他人事ではない。八つ裂き光輪といえば、でもある。実は各宇宙人が連携していた、みたいな話もつくりやすそうだ。そういう定跡はおそらく外したのだろう。そう言えば本作のウルトラマンは「シュワッチ」などと声を発しなかった。これもとっておきかと思ったら最後まで黙ったままだった。宇宙人としての肉付けなのか意図不明だが、声を発しないことが特段の映画に出来栄えに影響しているとも思えない。

ULTRA-ACT バルタン星人 (2代目)

ULTRA-ACT バルタン星人 (2代目)

  • BANDAI SPIRITS(バンダイ スピリッツ)
Amazon


・前述のウルトラマンの正体が疑われる、宇宙人が結託してウルトラマンを倒しに次々と現れる、というのはネタ元がある。『小説ウルトラマン』(著:金城哲夫 ちくま文庫)である。この本に『ウルトラマン(1966)』放映後に発表されたノベライズが収録されているが、本編にない、あるいは一部削られたかもしれない前述の要素が補われているのだ。今回ウルトラマンのデザインで成田亨が注目されているが、氏に匹敵するウルトラマンの創造主の一人が著者である。宇宙人ラッシュで『シン・ウルトラマン』を締めたのは金城哲夫に敬意を込めてのことかもしれない。


・名前を出したので書くと、ウルトラマン以外に「ああこいつか」「これだよね」という成田亨オリジナルデザインままの怪獣や宇宙人があと1、2体観たかった。尊重するのはウルトラマンのデザインだけ、というのであれば異議を唱えたい。ネロンガはグロテスクな要素がやや蛇足。パゴス、ガボラの顔は萎えた。ザラブ(星人)のアレンジは今だからこそできるものだと感心した。やっぱりメフィラス(星人)か、ゼットンだな。どちらもデザインが好きなので甲乙つけがたい。ゼットンはあのシルエットでウルトラマンと同サイズ、要塞ではなく生物だからこそ無機的で恐ろしいほどの強さが際立つものだと再認した。1兆度~を真剣に取り扱い、小ネタ要素も含めたかったのだろうが、ウルトラマンを倒した怪獣として変わらぬシンボルであることで溜飲を下げたかった。


・感想を書きながらストーリーを思い出していると、『ウルトラマン』の設定で『ウルトラセブン』をやったのだなと今更感じた。例えばウルトラマンの正体がバレて最後は人類の力を借りてゼットンを倒す、なんて「セブン暗殺計画 前篇・後編」プラス「史上最大の侵略 前編・後編」ではないか。ヒロインポジションを配したのもそうか。居酒屋で酒飲むシーンもそのノリか。地球はもう狙うに値しない、という話は先越されてたな。体色が変わったり、正体がバレるのは最近のウルトラシリーズでもあった。こうなると映画のラストを観るに、知的生命体が地球に大勢攻め込んでくるらしい『シン・ウルトラセブン』は何をネタにするのだろうか。先に『シン・帰ってきたウルトラマン』か。初代ウルトラマンが帰ってきたという当初の企画を掘り起こすのか。何だかんだで観に行くんだろうな。

狙われた街

狙われた街

  • Kôji Moritsugu
Amazon


・身も蓋もない話かもしれないが、あくまで『シン・ウルトラマン』劇中の話、解釈として書いておきたい。劇中で「ウルトラマン」と呼称を決めていたが、なぜ「マン」になったのだろうか。マン(man)に「人、人類」の意味があるのはわかるが、初登場時、まさか人だとは認識されていないだろう。ではヒト型、という意味で正しい使い方なのか、浅学故わからない。手元の辞書でもよくわからなかった。

もちろんこんなことは古今東西の「~マン」とつく作品で考えたことすらなかった。だが劇中では「ウルトラマン」という概念が存在しない様子の上、ウルトラマンが服を着ているか云々の台詞があったので気になってしまった。外見のみで男女の判別をするのは案外難しくないだろうか。大体、もし性別についての調査・検討があったとしたら、正体不明の存在に「マン」とつけないのではないだろうか。地球上のUMAだってビッグフットにヒバゴンだ。性に関する昨今センシティブな話題でもあるので、できれば劇中で答えが知りたかった。

[asin:B0B6S1BFVB:detail]


『ガールズ&パンツァー』関連物落ち穂拾い その19『アハトゥンク・ガールズ&パンツァー3』他雑談

いつも以上に時期を逃してしまいましたが、『最終章』第3話の内容を踏まえたムックが今年になって発売されているので、ガルパン放談しておきたいと思います。スタッフ本は通販後に話題にできたら。10周年の続報ないね、うーん、今年はちょっとね⋯という雑談も少々。

ガルパンと2022年の世界情勢

大げさな見出しにしたが、何を言わんとするか分かりやすくしたつもりである。

ガルパンが話題になり始めた頃、あるいは作品に纏わる話題で、本作の作風や存在が「危険」とする論調を見かけることがあった。どう危険なのか。実在の兵器を肯定的に扱い軍国主義の前触れ云々、といったものである。頻度や件数は定かでないが、今でも時折WebニュースやSNSで見かけるように思う。

ここ最近、作品内ではなく、現実で兵器や戦争に関するニュースが頻繁に流れている。今年2月に始まった侵略行為のことだ。その経緯や実態はとても残虐で理不尽、の一言に尽きる。この凄惨な状況は創作では到底及びつかない。既に現地を含め、極限状態を目の当たりにした一般の人々は、悲しみ苦しみ逃げ惑うだけでなく、現実を受けとめ対処し淡々と行動する所まで事態が進行している様子だ。この段階に来ていることが本当に恐ろしい。戦争の終わりが見えなくなっているからである。

こういう事態は望んでいなかったし、このことにかこつけて文章を書きたかったわけでは決してない。ただ図らずも現実によって、本作が題材を昇華して打ち出した魅力はせいぜい競技やスポーツマンシップのそれであり、そこにギャグ漫画のノリを織り交ぜた位のものだと再認してしまった。安直に戦争などと結びつくものではない。もし結びつけている向きがいるとしたらあまりに短絡的だし、歴史から学ぶような思慮に欠けている。月並みだが現実と空想の区別がついていないのではないか。一体どこの戦車が砲撃をくらって、車内で操縦していた人間が転げまわってススがついて眼鏡が割れるだけで済むものか。

とは言えである。現実を思い返さず、本作の作品世界のみに没入するというのは、現況なかなか難しい。憶測に過ぎないが公式の情報発信はそのような配慮をしている様子であり、前述の通り私などが徒に騒ぐことではないのはわかっている。それでも日々のニュースに接していると、どうしても以前のような気分で作品を楽しむとまでいかないのだ。

ガルパン10周年に『最終章』新作公開、もう少し穏やかな気持ちで祝い、待ちたかった。

関連物落ち穂拾い その19

今年2月、3月に『アハトゥンク・ガールズ&パンツァー3』と『月刊戦車道別冊 第41回冬季無限軌道杯大特集号2』が発売されました。個人的に色々と思うところのあった、第3話の話題を交えつつ読んでおきましょう。

まず『アハトゥンク~3』は、ほぼいつもと同じ構成です。登場車輌を紹介しつつ、本編おさらい。後半は戦車内部や小ネタの一覧。なので私が常々不満な戦車外観の各部名称は載ってないままです。私は記事にするときに一々調べるのが面倒なのですが、大多数はわかるのかなあ。ファンのレベルを上げなくちゃ。

あとは1~3話までの構成なので、発売されるであろう続刊にも継続高校(戦)が掲載になっちゃうのね。そう考えると、最終話まで話のボリュームは変わらないのかしら。決勝、6話だけスペシャル編の線はないのか。と願望を書いたりして。

一方の『月刊戦車道別冊 第41回冬季無限軌道杯大特集号2』は3話後半、継続戦を含めてないのでちょっと薄味。日本戦車の記事など、内容は良いがネタ切れのような気がする。まだまだ大洗観光の話題を出しにくい状況というのは寂しいですね。まだ通販しているようなので(2022/5/14時点)、気になるなら今のうちにどうぞ。私はボールペンは要らない。

表紙の全員集合で脚が並ぶ絵面が正直頂けない。私だけでしょうか。第3話の新ビジュアルもそうだったか。画一的でセンスを感じない。こういうのは見せ方、魅せ方なのに。これが今時、高校生的とでも? ガルパンのキャラデザは頭を大きめにしているので、細身の脚がアンバランスに感じるのね。何より露出させた脚を並べただけでファンが興奮するような作風でもないと常々考えているのですが⋯。これが商売でウケているのなら私には関係ない話です。

そうそう、今回採り上げた『アハトゥンク~3』や『最終章』第3話BDに関して気になった点を一つ。

もうオフィシャルで載ってる・言っていることなので書いてしまうと、継続の車輌T-26とまだ登場していない継続の生徒たちが第4話で活躍するっぽいのね。BDの感想で「3話のBDは今後の展開について触れてるからネタバレ気にするなら注意して」みたいなことを書いたのですが、『アハトゥンク~3』の方でもそんなニュアンスの文面がT-26の紹介とともに載ってます。

以前の公式なら、ここまで『最終章』の今後を明かすことはなかったと思うのです。展開の肝にはあまり触れなかったはず。本当に下衆の勘繰りですが、やはり3話のT-26は不気味なだけの数合わせモブ戦車の印象強すぎ、みたいなことを方方で言われて堪えたのでしょうか。方方と書きつつ私も書きましたが⋯。だって、ねぇ。あの個性希薄な大学選抜チームと被るし。

こういうことがあると、改めて3話の出来はちょっとまずかったのかなという印象です。3話時点で、T-26の活躍を予感・期待させるような見せ方がもう少し必要だったのではと。4話ではこういう3話で感じたモヤモヤを払拭する展開を期待します。まだまだ期待します。

映画『白蛇:縁起』をより楽しむために:『白蛇伝』をもうちょっと知る

昨年日本で公開されたアニメーション映画『白蛇:縁起』のBlu-ray、DVDの発売が今月5/28に発売予定だ。今年1月に全国のイオンシネマで再上映されたりと、映画館での人気も根強い様子だが、平日・日中の上映時間だと厳しい向きもあっただろう。ディスクでなくてもU-NEXTで配信中なので、見逃した向きには是非観てもらいたい。

今回はそんな『白蛇:縁起』の世界のベースになった中国の代表的な物語、『白蛇伝』を知るための話をしておきたい。

もうちょっと知る『白蛇伝』

『白蛇伝』については公式がツイッターで発信していた伝承・用語解説が充実している上に、Wikipediaも日本語版・中国版共に詳細なので、まずはそちらをあたっておけば全く問題ない。既に『白蛇伝』の前日譚として話を膨らませた『白蛇:縁起』の凄さ、みたいな記事も見かけたのでチェックしている向きも多いと思う。

ただやはりこれらの情報はダイジェスト化や話の旨味になる部分が省略されている様子なので、一度ちゃんと楽しみながら情報収集しておくと良いと思う。日本での『白蛇伝』の人気・知名度のせいか、そもそも日本で『白蛇伝』に関する文献・書籍は驚くほど見かけない。アニメーション映画の古典として名高い東映版が配信でも観られるが、興味のきっかけとしては限られるのが現状だろう。中国の実写ドラマ・映画といったところも同様だ。

白蛇伝

白蛇伝

  • 森繁久彌
Amazon

だからこそ改めて物語を追っておこうというわけだ。一度知れば東映版、『白蛇:縁起』に限らず中国娯楽作品に触れる際にも大いに役に立つはずだ。『白蛇伝』の情報はネット上にも案外少ないので、手元に参照できれば何かと心強い。何より既に中国で公開済の『2』が日本公開されたときの楽しみの一助になるのではないだろうか。

絵本で読む『白蛇伝』

絵本の題材としても日本で『白蛇伝』は正直マイナーかと思う。『白蛇:縁起』本編の水墨画で描かれたエンドロール、あの箇所がまさに『白蛇伝』原作ダイジェストなのだが、それすら日本ではあまり知識として定着していない気がする。そこで公式ツイッターで公開されていた読み聞かせ動画、あの動画プラスワン、くらいの感覚で気軽に『白蛇伝』を知るのであればちょうど良い絵本がある。『白蛇伝  詩の絵本 中国編 2』(絵:施昌秀 文:甲斐 勝二 海鳥社)だ。

中身は大人向けの絵本といった趣だ。絵本にしては漢字が多いと思う(ふりがな有)。これを読むと『白蛇伝』の基本の流れ、がよくわかる。白(蛇)がメチャクチャ強くて、青(蛇)も強くて、妖怪が恐れられている。アレンジされた箇所ならば、宣(許宣)が終始疑り深いのが印象的。妖怪だってなんだって構わない! という主人公然とした性格ではなく、情けなくすら感じる。実は『白蛇:縁起』を初めて観たときこれを思い出して苦笑してしまった。とにかくやたらカッコ悪い。人間の限界をまざまざと感じるのも原作、『白蛇伝』ならではだ。公式の”原作紹介”はライトに仕上げていることもわかる。

『白蛇伝』の成立を辿る

前述の通り日本語で読める『白蛇伝』に関する書籍は驚くほど少ない。熱心な専門家・ライターすら「誰かいるのだろうか?」という状況だ。『三国志』を代表格とした中国の古典は今だ日本で大人気なのに、これは知名度なのか国民性なのか。そんな中で、『白蛇伝』の物語から成立までをコンパクトに知ることができるのが『蛇女の伝説 「白蛇伝」を追って東へ西へ 』(著:南條竹則 平凡社新書) 。

著者は”読書録”などと謙遜の様子だが、これほど『白蛇伝』を研究している書籍が現行見当たらないのが残念だ。入手しやすいと思うが、絶版なのが惜しい。『白蛇伝』のいろんな劇や映画のベースとなっている『雷峰塔伝奇』の紹介から始まって(前述の絵本もこの内容に即している。『2』に関係ありそうな題名)、一体いかにして『白蛇伝』が形作られたか、そのルーツを辿る試みが興味深い。ギリシア神話にインドの類話とスケールの大きさに心打たれる。これらを紐解けば世界中のエンターテイメントが楽しめるのでは、というきっかけにもなって欲しい一冊だ。
余談だが著者の人となりから、この作品を観てそうなのでぜひとも『白蛇:縁起』の感想、解説など聞いてみたいと思った。実写のドラマや映画も増えているので注目されて欲しい。

こんなところから見識を深めつつ『白蛇:縁起』や続編(早く観たい)の世界に浸ってみてはどうだろうか。


(2022/5追記)などと書いてたら続編『白蛇2: 青蛇興起』は既にNetflixで配信されているじゃないか⋯ああこのアンテナの弱さ。恥ずかしー。U-NEXTじゃないんだね。劇場公開待たずに観て感想書いちゃおうかしら。キャスト云々よりとにかく続きが気になる方もどうぞ。
https://www.netflix.com/jp/title/81504698



(2022/6追記)『白蛇2:青蛇興起』の感想はこちら:

新年音楽始め2022

毎年この時期は、私撰ニューイヤーコンサートと称してクラシック中心に好きな音楽を聴いていたりします。

コンサートや番組を心待ちにする気持ちは理解する一方で、サブスクリプション隆盛の昨今、ちょっと検索すれば既知・未知の曲がうじゃうじゃ出てくるのは大変ありがたいです。慣れ親しんだ音楽、今じゃてんで話題になってない音楽、そんなものを回顧・懐古するにもうってつけです。新たな発見もあったりします。


生誕110年、そして没後20年を迎えたというのに話題再燃という感じでもなさそうな指揮者・朝比奈隆。CDはともかく、ダウンロード販売は順調なのだろうか。1997、98年頃に新日本フィルハーモニー交響楽団と演奏したベートーヴェンはまだまだ充実していると思う。演奏終了直後の手放しブラボーもなく、ちょっと全集を聴いてみたくなった。そのうちSACDかハイレゾ配信してくれるのか。


1月から2月にかけてのニューイヤーコンサートでやたら取り扱われるドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。アノーソフ指揮ソビエト国立交響楽団の演奏をようやく発見。クラシック音楽をサブスクで検索するとなかなか目当ての曲が見つからないのだ。でも使い倒す。録音情報とアノーソフの生没年情報が噛み合わない録音。何だか不安定な第1楽章から、なかなか情緒豊かになる第2楽章、そして冒頭のリタルダンドが「ストコフスキーかよ」の第4楽章。最高。見つけてよかった。


去年の「よかったアルバム」で紹介しようと思ったら記事自体忘れていた、『シンフォニック・フィルム・スペクタキュラー 12』(竹本泰蔵指揮日本フィルハーモニー交響楽団 キングレコード)。日本を賑わせた映画音楽のオンパレード。正月にもうってつけ。映画『東京オリンピック』の”エンディング”から始まるので、2021→2022の流れでバッチリ。さて2022年は、という気分でここまで。

2021年の話題雑談 平常でないのが平常

今年は世の中の状況に慣れてしまいつつも緊張感は保つ、というサイクルで過ごした一年だった。そして来年もまたこうやって過ごさねばならないようだ。

その中で音楽や映画といった私の楽しみは解禁されつつあり、これは来年以降もっと盛況になることを願ってやまない。

「面白い作品を観たい」と意識して映画館に赴いていたアニメ映画では、夏公開の『白蛇:縁起』が面白かった。これを観たおかげで、ようやく、アニメ映画に満足した気がする。日本でのプロモーション戦略も上手く、ヒットしたようだ。もちろん、それ抜きにしても作品が面白いことは保証する。中国では既に続編も公開されており、大変楽しみにしている。

ネタ元の「白蛇伝」は日本でいう「桃太郎」に相当するほど中国ではポピュラーだそうだ。いやそれにしたって、日本でそんな桃太郎ベースでヒット作があるか? などと考えたが、昨今ヒットした映画は「鬼退治」がテーマだったのを忘れていた。やっぱ桃太郎もお国柄なのだな、と戯言をぬかしておこう。


あと、同じく夏に観に行ったアニメ映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』の感想をいつものように書いたら、ブログピックアップされてしまった。恥ずかしー。


やっぱ読まれてるんだなあ。世界に向けて発信してるんだもんなあ。こういうことがあるから、きちんと書かなきゃなあと思うことしきり。

今日くらいは個人的な話をして締めくくろう。良いお年を。

『ガールズ&パンツァー最終章』第3話の感想 Blu-ray発売に寄せて

12/24に『ガールズ&パンツァー最終章』第3話OVAのBlu-rayが発売されたので感想です。セル配信も同時で、レンタル配信はまだ。公開からディスク発売が年を跨ぐより心証はよいです。

継続戦の本番前に

さんざこんなヤツ出るだろ、いるだろと話題になり続けた新キャラを引っさげて継続高校が準決勝の相手です。『劇場版』の頃から人気の高い学校だったようなので、軽めに元ネタを楽しむアイテムを並べるだけにします。本番どころか第4話であっさり決着だったら? それはそれで面白いじゃないの。大洗女子敗退でね。『最終章』後半が俄然楽しみになりそう。私もしつこいな。

※『カレワラ』にはカンテレに纏わる話が出てきます。準決勝試合後はカンテレの演奏会か、誰かの涙か。

映像特典について

まず戦車講座について。おーいその戦車を紹介するなら本編で出してよ、と言いたくなりました。浜名湖に眠る虎の子。

それにしてもTV版、『劇場版』の過去映像を観ると作品の進化をつくづく感じます。当時これでも十分クオリティが高いと思っていた映像がチャチに見えます。ただ、この点を制作スタッフに感謝する一方で、私が「面白かったな」と思い出すカットや演出はTV版、アンツィオOVAなのだなあ。新しくなるにつれて、戦車戦の見せ場が映像のスピード感一辺倒になりつつあるのが残念です。

今回のスタッフコメンタリーは第4話以降の話題が結構出てくるので、アレコレ展開予想をしたい向き、公開まで予告編を観ない向きは聞かない方がよいかもしれません。サラッと「4話(今後)はこうなる」、みたいな話をしちゃっています。それ以外の話については、正直「そういうのは本編でちゃんと表現してよ」という小ネタや設定がチラホラ。例えば優花里の操縦は、もっとわかりやすく荒々しくてよかったかな。それからやはり、みほ(あんこうチーム)関係は「何気ないように見えるけど実は凄いんだよ、ほらここの判断は、対応は」という話が耳につきます。さすがにこういう描写や(本編外とはいえ)フォローが続くと、超人ぶりとご都合感で冷めてくる。何かこう、人間味を加えた方が人物とドラマ両方に新鮮さと意外性をもたらして良いように私は思います。素人の妄言でしょうかね。


映像特典OVAの内容は残念ですが期待外れ。はあ、この世界観を広げるんですか、こういうのを見せたいのかあ、というところ。さすがに戦車道ありきの世界に興味を抱いてこの作品を観たわけで、「もう、こっち(制作側)が何やってもついてくるだろう」とまで思われるのはね。箸休めのつもりなのかもしれませんが、本編公開にこれだけ間隔が空いたら箸休めも何もあったものではないです。

もはやあんこうチームの面々がいつの間にか馬を乗りこなしたってツッコミませんよ。そりゃ、あの身体能力と動体視力ならね。『最終章』第1話前半もそんな感じでしたし。今更手間取られても困る。もしかして第4話以降、馬が登場するのかしら。

あと褐色キャラに何か思い入れがあるのでしょうか。私にはいつものハンコ顔、という印象以上何もありませんでしたが⋯。実は自動車部やお銀だった、というわけでもなく。

ただEDのノリは好きか嫌いかでいうと、好きですね。ガルパンは歌の親和性が高いので、もっと劇中で歌うか、ミュージカルやっていいですよ。人が集まるのはまだまだ厳しいのでしょうが、キャストも人数含め揃ってますから。他作品の話題で目にしましたが、ガルパンでこそやるべきでは。サンダースなんて歌いまくって欲しいです。と、あっさり本編で片付けられた贔屓の名前を出しながらロバート・ショウ合唱団を聴きつつ。


『ガールズ&パンツァー最終章』第3話の感想補足

第3話の感想や今後については既に下記リンクで書いており、今回は簡単に。

今回改めて、作中で車輌や試合会場の位置関係を示す画、あるいは俯瞰する画が目立ちました。後半の継続戦は位置関係が伏線になるのかまだわかりませんが、知波単戦は映像的魅力としてもあまり寄与していなかったように思います。例えば私の好きな「偏差射撃で一点照準!」の場面も一斉射撃のカットは俯瞰になりますが、果たして入れる必要あったのかと今だ疑問です。この辺りが、第3話が何となく冴えなく映る要因の一つではないでしょうか。


今後も戦車戦中心で話が進んでいくようなので、まさかその魅力まで減退するとはハナから考えたくないものの⋯どうなるか早く第4話が観たいです。

年の瀬に『モスラ』(1961) 4Kデジタルリマスター版の感想

クリスマス・イブに映画『モスラ』(1961 東宝)を観てきました。4Kデジタルリマスター版の発表と上映が予告されており、記事タイトル通り楽しみにしていた作品。

4K版の上映情報や制作過程は下記リンクやYouTubeが詳しいのでどうぞ(※2022/1追記:YouTubeの公開は終了したようなので4K化決定動画に変更。貴重な内容だったので残念)。今回は4K版の映像、音楽の印象と、良い機会ですので作品の感想を。

※画像をタッチ・クリックすると動画(YouTube)が再生できます。

映画『モスラ』(1961)4Kデジタルリマスター版の感想

既にDVDや配信で観られる作品のため、大筋の内容を改めて書くこともしない。観てきた人、知っている人向きの感想を書きたいと思う。念のため、今回の4K版で従来と話の大筋が変わったりはしていない。

まず今回の映像は情報量が素晴らしい。YouTubeを観た限りでは、映像が少し暗いのが映画館でどうかと気になっていたが、杞憂だった。当時の作品の褪色した映像に慣れた目で観に行くと、色味が大幅に良くなった印象。衣装や乗り物、町並み等々観ていて飽きない。特撮でも幼虫モスラの体表の生々しさがアップしていて感動。本当に生きてるみたい。そう言えば、修復映像と聞くとつい操演の映りなど探してしまうものだが、4K版でピアノ線がハッキリクッキリ⋯といった箇所はなかったように思う。むしろ特撮技術の高さに「どうやって操演・撮影しているのかなあ」と改めて感服する。

復活した「序曲」を初め、古関裕而の音楽についてはぜひ映画館で堪能して頂きたい。神秘的な魅力をたたえた楽曲の魅力もさることながら、音楽が磁気4チャンネル音源で残されていたことが嬉しい。音楽もまた極彩色である。余談だが映画館だと、SEも臨場感が凄まじい。何回も観た映画のはずなのにモスラの鳴き声に少しビクッとしてしまった。


あとは内容について心に留めておきたいところを。詳しい解説や見所の列挙は先人から各種SNSまで既に溢れていると思うので省略。

子供心に良い意味で期待を裏切られた作品。私は『モスラ対ゴジラ』を観た後に『モスラ』を観たのだが、後半こんなに特撮がふんだんだと思わなかった。モスラが孵化した後に突風で壊れる河川の水道管から水が吹き出るシーンなど芸が細かい。海上の広さも、シャーマンが攻撃するロングショットも、消防車が走るシーンだって良い。お馴染みの実写を交える手法も入るが、「ここを特撮で作るのか」というシーンが多く目が離せない。

その特撮の中にあって、とにかくモスラが強くて怖い。現在の平和の使者たる以前は、弾もミサイルも熱線にもビクともしない大怪獣のイメージだったのだ。本作は防衛隊の攻撃の着弾が良く(特撮の出来が良く)、それが一層モスラの強さを引き立てる。今だに私は本作のモスラの顔に怨念を感じるが(特に幼虫)、それもそのはず、これは小美人を取り返すため一直線に東京に向かってきているからなのだ。成虫の目については円谷英二曰く、”悲しい目”である。

最後にストーリーだが、コメディタッチ有りの軽妙でテンポの良い構成で、映画館でもクスクス笑い声が聞こえたほど。だが実は本作は、水爆実験に大国主義、マスコミ、はたまた女性の社会進出と、現在に通じるテーマてんこ盛りの味わい深い作品である。『キングコング対ゴジラ』や『モスラ対ゴジラ』でもそうだが、この頃の東宝映画は世相の風刺・批判をいい塩梅に取り入れているのだ。個人的に、今より巧みかもしれない。

例えば、生存者がいないはずのインファント島で見つけた身長30cmほどの小美人のことを、フランキー堺が演じる新聞記者(福田)を初めとした調査隊の面々が悪巧みや口外しようとせず、

「別にロマンかぶれしたわけじゃないけど、こういう島はそっとしときたいような気がしますねぇ」

と漏らすシーンなど、まさに当時より情報伝達が発達した昨今のSNSでの騒動や過熱報道に求めたくなる良心のように思える。結局この後小美人はブローカーのネルソン達に捕まえられ、ショーの見世物にされてしまうのだが、個人が情報の発信から各種活動するに易い今だからこそ響いてこないだろうか。バズると思えば誰もがすぐに写真を撮り動画を撮り、SNSで呟いて動画をアップして⋯この箇所は本作を観て考えて欲しい。話の本質は古くなっていない。変わっていない。

またこのシーンはこれに終わらず、小美人のことを特ダネ記事にしなかった福田を志村喬演じる上司の社会部長が後に問い詰めるシーンがある。「記者だって人間だ、みんな人間としてそっとしておいた方がいいと思ったから」と福田が答えたのに対して社会部長が、

「俺だって人間だぞ!」

と吐き捨てるところも一筋縄ではいかない。知りたくなる、見たくなる、人に伝えたくなる、商売したくなる⋯のもまた、人間の業というわけである。モスラは善悪がわからないそうだが、なるほど人間も善悪だけではとても語り尽くせないだろう。


年の瀬の楽しみというだけでなく、特撮の魅力だけでなく、今だ光るものを残している作品のように思う。年始も上映しているようなので映画館でも、配信でも是非。


『ガールズ&パンツァー』関連物落ち穂拾い その18 10周年プロジェクト始動

大変遅まきながら、ガルパンが2012年のTV放映から来年10周年ということで、プロジェクト始動だそうです。発表されている企画は今のところ博覧会くらいですが、明るく楽しい話題で盛り上がればと思っています。

※PVも公開されています。画像をタッチ・クリックすると動画(YouTube)が再生できます。

『最終章』第3話のBD発売目前ですが、今回はこの10周年にかこつけた雑談です。グッズ紹介は特にないです。実は他に発表がないか待っていたのですが、特に何もないので記事にすることにしました。

ガルパンのこれまでとこれからに寄せて

まず、TV版が繰り返し鑑賞するに値する作品だったことに感謝したい。第1弾PVで抱いた期待や想像を遥かに超えた。「おちゃらけた出来なら、それはそれでネタになるから」などと一瞬でも考えたのが愚かしい。今見るべきは10周年PVではなくこちらだと思う。

※題材には惹かれたが、とても10年続くどころか続編があるとは思えなかったPV。画像をタッチ・クリックすると動画(YouTube)が再生できます。

一方でTV版の頃から気になっていたことがある。制作・公開の遅れだ。制作快調!!と公表しなくなっただけ進歩した、というのは贔屓目だろう。まさかこの話題も10年引きずると思わなかった。

作品を取り巻く状況や関係者、ファンの存在まで全てがコンテンツを形成し、それが当然という風潮がある。私自身それらの話題から注目した作品もある。だがもちろん作品外の話には目もくれず、作品のみに集中したいときはある。本作はそうやって鑑賞する魅力が十分あると思う。放映当初から観ていなくても、グッズを買わなくとも、イベントに参加せずとも、興味を抱くファンが絶えない出来栄えなのが根強い人気の秘訣だとも私は考えている。だからこそ作品周辺の話題を面白おかしく騒ぐのも程々に、と記事を書くときに気をつけてきたつもりだ。

ただ現在公開が進んでいる『最終章』に至っては、やはり公開の遅れが様々な機を逸しているように思えてならない。内容に関して言えば、TV放映なら許されたお話のテンポが、1本の映画なら楽しめた映像の見せ場が、それぞれ長所を失いつつある。そこに作品周辺の要素として、イベントもろくに開催できない現況が重なっている。結果、魅力が共倒れしているのだ。正直、私も本作の話題を記事にする頻度はぐっと少なくなった。

それでもまだ完結していない作品の評価を断ずるのは早い。(最後まで)観もしないで不満を述べる気もないし、無条件に「いいぞ」と呟くこともしない。願わくばまた熱を入れたくなる展開を望んでやまない。


博覧会以外にイベントないのでしょうか。まだ企画も難しいのでしょうかね。10周年の博覧会は、5周年のときのようなスカスカ展示に最後の物販コーナーが大きく待ち構える構成にはしないで欲しいなあ。色んな資料や展示物の集大成にしてもらいたい。全国で開催するには色々ハードルが高くなるのでしょうが。5周年のときの、物販コーナーの無言のレジ行列はもう勘弁だなあ。他作品の展覧会も似たような状況なのかしら。

あとは博覧会で同じ衣装の着せ替え全員集合されても、多分私はグッズ買わないと思います。着せ替えするなら是非とも本編で。ついでに各校生徒の交流描写も。他の記事でも書きましたが、だからこそのOVA展開だと期待したのだがなあ。さんざ書き散らしておいて、まだ期待はします。


『日本映画音楽の巨匠たち シンフォニック・フィルム・スペクタキュラー 12』を聴く そして観る

芸術の秋、と意気込まなくとも年中容易に芸術に触れることができるようになった。殊に音楽や映画は種々の配信・DLサービスが充実してきた。ホールや映画館に行かなくとも、ディスクを購入しなくとも、自宅で楽しめるケースが少なくない。

そこで私などは最近、「そういえば観てなかったな」「また観たいな」という日本映画の旧作を漁る。やはり名だたる旧作を観ずして「近頃の日本映画は」などと語りたくないし、そもそも日本映画の旧作も新作も最近ろくに観ていないのでは、と思い返す機会が多いからだ。世間的にはどうなのだろうか。

そんなところに、CD『シンフォニック・フィルム・スペクタキュラー 12』(キングレコード)が発売された。映画音楽を日本フィルハーモニー交響楽団が演奏し、最新の録音で発表するシリーズである。

もちろんSpotifyでも配信されているし、ハイレゾ音源も発売されている(過去にはSACDもあった)。CDを買わずとも聴ける。

この先月発売された最新盤のテーマが「日本映画音楽の巨匠たち」なのである。個人的には、『ゴジラ』以外の伊福部昭が音楽を担当した特撮映画群を除いて、日本映画の代表格と言って差し支えなさそうな作品の音楽が大方収録されていると思うが、どうだろうか。最近はこれらの作品でさえ、音楽共々忘れられていないだろうか。忘れ去られる程度の作品、そんな声もあろう。だが、手軽に観られるようになった今こそ映画と音楽を楽しむきっかけになることを願いたい。今回は映画のリンクも並べておきたい。

繰り返すが、伊福部昭が音楽を担当した『ゴジラ』以外の特撮映画音楽は、完全に”ファン向け”の収録だと思う。日本映画音楽の巨匠であることは否定しないが、伊福部昭はまだまだ知られていない部類の作曲家と言える。もちろん東宝の看板となった『ゴジラ』シリーズの一連の音楽を担当したというだけで十分偉大なのかもしれない。だが、ここに収録されている佐藤勝や山本直純が音楽を担当した作品のような知名度を持った作品に音楽はつけていない。


・『東京オリンピック』(1965)


・『東京物語』(1953)
[asin:B08JHQ2TKT:detail]


・『赤ひげ』(1965) 佐藤勝では、個人的に『用心棒』の音楽も捨て難いが。

赤ひげ

赤ひげ

  • 三船敏郎
Amazon


・『影武者』(1980)

影武者

影武者

  • 仲代達矢
Amazon


・『乱』(1985)
[asin:B00V5H1G3M:detail]


・『男はつらいよ』 次に紹介する伊福部昭作品群にちなんで、ここは『男はつらいよ 寅次郎真実一路』(1984)を紹介しておこう。観たことがない方は是非。私はストーリーも好き。


・『銀嶺の果て』(1947) 伊福部昭の音楽作品は前述の通り、好事家ラインナップなので収録曲の感想等々、雑談を入れておく。伊福部昭の映画音楽デビュー作だが(三船敏郎のデビュー作でもある)、それだけでよく採り上げられている印象。このラインナップに並べるには正直マニアックな作品だと思う。

・『ゴジラ』(1954)

ゴジラ

ゴジラ

  • 宝田 明
Amazon

・『空の大怪獣ラドン』(1956) 次の『対キングコング』共々、ハリウッドの『GODZILLA』シリーズを意識した並びか。収録曲「ラドン追撃せよ」は映画のテンポに忠実で好演。ラドンとセイバーの追跡劇が楽しめる。
[asin:B00L8HGGIO:detail]

・『キングコング対ゴジラ』(1962) 合唱の再現度も高く、メインタイトルの最新演奏の中では、最も迫力があり素晴らしい。当時の聴視率(視聴率)戦争の風刺も盛り込んだ、再評価されてよい作品。

・『怪獣大戦争』(1965) マーチは遅すぎず早すぎず、テンポ設定が絶妙で威勢がよい。近年のステレオ録音はライブで音を外したくないからか、慎重になりすぎていると思う。これはスタジオ録音の意義がある。

・『怪獣総進撃』(1968) マーチは『SF交響ファンタジー第1番』でやたら快速演奏されて食傷気味だが、正調のテンポ。『東京大襲撃』が聞き物。


・『八甲田山』(1977)


・『妖怪大戦争』(1968)

『ガールズ&パンツァー最終章』第3話 4D:MX4D上映の感想

10/8から上映の『ガールズ&パンツァー最終章』第3話 4Dを観てきました。MX4D形式です。MX4Dは『総集編』以来久々。初日の夜は、ソコソコ席が埋まっていたでしょうか。私が行った劇場は満員・残席わずか、ではなさそうでした。何はともあれ福田の手紙は回収しておかないと。色紙はもう欲しいの揃ってるし。クリアファイルは要らない。

『第1話+第2話』が4D上映されるまでに時間を要したためか、第3話4Dは単発です。『最終章』はこの上映形式が予告されていたので、今後も意識したつくりになるのでしょう。もっともそれが作品の面白味に繋がっているかどうかは、体感して確認したいと思います。感想はネタバレしています。

※「第3話 4D上映告知PV 上映中ver.」。第3話はやはり知波単戦の攻防がウリのようです。画像をタッチ・クリックすると動画(YouTube)が再生できます。

MX4Dで観る『最終章』第3話 4Dの感想

4Dで観るガルパン、としては『最終章』第3話が一番しっくりきた気がする。ここで動くのか、といった徒に効果をつけるでなく、自然なアトラクションが楽しめる。4Dを意識した作品づくりと、シリーズを重ねた強みが噛み合ってきたのだと思う。こうなると4DX上映との違いが気になってくる。

特に知波単戦は夜戦、ジャングルということもあって、戦車に乗っているような振動が心地よい。ストロボで曳光弾の効果をつけているのは臨場感が増して◎。以前の感想でも書いたが、目まぐるしい映像の福田対バレー部は4Dのためのシーンと言ってよいだろう。後半の継続戦は知波単戦ほど動きは激しくないので、風の効果で寒さを演出しても楽しかったかもしれない。

ただ、設備の兼ね合いがあるのだろうが、動きがつくと今度は音響面が少々物足りなく感じるのは仕方がないところか。劇場毎の調整の違いもあるかもしれない。この効果に音がもう少しせり出してくれば、という場面があった。

あとは音響の話で思い出したが、そろそろ新しい楽曲・選曲が聞きたい。さすがに「あ、あの音楽が流れるだろうな」と予想がつくようになってきた(ちなみに第3話は演出的にも音楽の挿入がモッサリしていて不満)。カッコよく愛らしく、今後の展開を示唆するような、サントラが楽しみになる音楽を是非期待したい。これまでの使用曲はここぞという場面のとっておきにしてもよいのだから。

また改めて第3話は映像面での表現が気になった。4Dの効果は丁度良い具合だったが、もっとぬかるみ障害物に乗り上げながら走るような画であれば、このようなスピード感ある映像でなくても十分な効果がつけられた気がする。結果としてスイスイした動きが戦車を軽く見せてしまっている。さんざ書いているが、戦車の重量感を作中でもう少し表現して欲しい。TV版の方がまだできていたと思う。それがあってこそ戦車の機動力の見せ場や、みほを始めとした各校の戦術的な特色が引き立つのではないか。どうも『劇場版』以降、戦車の強さ、戦車戦のクライマックスが”すばしこさ”に帰結しているような気がしてならない。

後の感想は既に総括した内容の通り。

そんなことを考えつつ、試合観戦でひざ掛け使ってる女子力高い大野ちゃんや箸でピザを食う生活感溢れる西隊長にニンマリし、エンディングの座席のビートで余韻に浸り劇場を後にした。

雑談:『最終章』第3話 Blu-ray発売に寄せて

年末に第3話のBlu-rayが発売されるということで雑談。Blu-rayは発売されますが、第4話の上映はいつなんでしょうね。正直第3話は内容もさることながら、作品の旬を逃した感があります。それでも年1ペースにすら持っていけないのでしょうね。クオリティあってこその人気なのは理解はしつつも、いい塩梅を探って欲しいところ。以前のような活発なイベントで盛り上げるというのは、すぐには難しいでしょうし。

あとは映像特典について。もちろん感想は観てからですが、その方向で大洗女子学園を肉付けするのかあ、という印象。本編外の軽いお楽しみではあるものの、あまり食指が動かない。新キャラよりも深く知りたいキャラがガルパンには既に大勢いるのですがねぇ。本作は作品世界を薄く広く描くだけでは惜しい作品だと思ってきたのですが、私が前のめり過ぎなのでしょうか。

その辺りは後半残り3話、僅かに期待したいと思います。



スポンサーリンク