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映画『白蛇:縁起』をより楽しむために:『白蛇伝』をもうちょっと知る

昨年日本で公開されたアニメーション映画『白蛇:縁起』のBlu-ray、DVDの発売が今月5/28に発売予定だ。今年1月に全国のイオンシネマで再上映されたりと、映画館での人気も根強い様子だが、平日・日中の上映時間だと厳しい向きもあっただろう。ディスクでなくてもU-NEXTで配信中なので、見逃した向きには是非観てもらいたい。

今回はそんな『白蛇:縁起』の世界のベースになった中国の代表的な物語、『白蛇伝』を知るための話をしておきたい。

もうちょっと知る『白蛇伝』

『白蛇伝』については公式がツイッターで発信していた伝承・用語解説が充実している上に、Wikipediaも日本語版・中国版共に詳細なので、まずはそちらをあたっておけば全く問題ない。既に『白蛇伝』の前日譚として話を膨らませた『白蛇:縁起』の凄さ、みたいな記事も見かけたのでチェックしている向きも多いと思う。

ただやはりこれらの情報はダイジェスト化や話の旨味になる部分が省略されている様子なので、一度ちゃんと楽しみながら情報収集しておくと良いと思う。日本での『白蛇伝』の人気・知名度のせいか、そもそも日本で『白蛇伝』に関する文献・書籍は驚くほど見かけない。アニメーション映画の古典として名高い東映版が配信でも観られるが、興味のきっかけとしては限られるのが現状だろう。中国の実写ドラマ・映画といったところも同様だ。

白蛇伝

白蛇伝

  • 森繁久彌
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だからこそ改めて物語を追っておこうというわけだ。一度知れば東映版、『白蛇:縁起』に限らず中国娯楽作品に触れる際にも大いに役に立つはずだ。『白蛇伝』の情報はネット上にも案外少ないので、手元に参照できれば何かと心強い。何より既に中国で公開済の『2』が日本公開されたときの楽しみの一助になるのではないだろうか。

絵本で読む『白蛇伝』

絵本の題材としても日本で『白蛇伝』は正直マイナーかと思う。『白蛇:縁起』本編の水墨画で描かれたエンドロール、あの箇所がまさに『白蛇伝』原作ダイジェストなのだが、それすら日本ではあまり知識として定着していない気がする。そこで公式ツイッターで公開されていた読み聞かせ動画、あの動画プラスワン、くらいの感覚で気軽に『白蛇伝』を知るのであればちょうど良い絵本がある。『白蛇伝  詩の絵本 中国編 2』(絵:施昌秀 文:甲斐 勝二 海鳥社)だ。

中身は大人向けの絵本といった趣だ。絵本にしては漢字が多いと思う(ふりがな有)。これを読むと『白蛇伝』の基本の流れ、がよくわかる。白(蛇)がメチャクチャ強くて、青(蛇)も強くて、妖怪が恐れられている。アレンジされた箇所ならば、宣(許宣)が終始疑り深いのが印象的。妖怪だってなんだって構わない! という主人公然とした性格ではなく、情けなくすら感じる。実は『白蛇:縁起』を初めて観たときこれを思い出して苦笑してしまった。とにかくやたらカッコ悪い。人間の限界をまざまざと感じるのも原作、『白蛇伝』ならではだ。公式の”原作紹介”はライトに仕上げていることもわかる。

『白蛇伝』の成立を辿る

前述の通り日本語で読める『白蛇伝』に関する書籍は驚くほど少ない。熱心な専門家・ライターすら「誰かいるのだろうか?」という状況だ。『三国志』を代表格とした中国の古典は今だ日本で大人気なのに、これは知名度なのか国民性なのか。そんな中で、『白蛇伝』の物語から成立までをコンパクトに知ることができるのが『蛇女の伝説 「白蛇伝」を追って東へ西へ 』(著:南條竹則 平凡社新書) 。

著者は”読書録”などと謙遜の様子だが、これほど『白蛇伝』を研究している書籍が現行見当たらないのが残念だ。入手しやすいと思うが、絶版なのが惜しい。『白蛇伝』のいろんな劇や映画のベースとなっている『雷峰塔伝奇』の紹介から始まって(前述の絵本もこの内容に即している。『2』に関係ありそうな題名)、一体いかにして『白蛇伝』が形作られたか、そのルーツを辿る試みが興味深い。ギリシア神話にインドの類話とスケールの大きさに心打たれる。これらを紐解けば世界中のエンターテイメントが楽しめるのでは、というきっかけにもなって欲しい一冊だ。
余談だが著者の人となりから、この作品を観てそうなのでぜひとも『白蛇:縁起』の感想、解説など聞いてみたいと思った。実写のドラマや映画も増えているので注目されて欲しい。


こんなところから読みつつ『白蛇:縁起』や続編(早く観たい)の世界に浸ってみてはどうだろうか。

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