デジタルエンタテイメント断片情報誌

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映画『白蛇:縁起』の感想(字幕版)

7/30公開の映画『白蛇:縁起』(字幕版)を観たが面白い。物語の核心に触れるようなネタバレなしで感想を書いておきたい。

と書いたものの公式サイトにある通り、元々中国では2019年公開とのことで、記事のタイミングといい遅ればせながらだ。このご時世今更というところだろう。それにしても、ここ数年意識して劇場公開のアニメーション映画を観てきた中でようやくアタリと言える作品に巡り会った。

※画像をタッチ・クリックすると吹替版の予告(YouTube)が再生できます。



先ず以て本作は題材とその表現が良い。妖怪や五行といった要素は、昨今のエンターテイメント作品でも顔馴染みのまさに古典であり、それを謂わば”本場”が最新の技術で昇華していることに感服した。日本のアニメ映画『白蛇伝』から興味が湧いた向きも少なくないだろうが、どちらかというと『山海経』に登場する妖怪、特に動物モチーフで頭が複数ある妖怪などに親しんでいた方が思いを馳せることだろう。そこに現代的なアレンジが加わって、鮮烈さが加味されている。実写でも度々題材になっていたが、実写だとCGや合成の出来によっては作り物感があって気になる要素が、アニメで表現すると違和感ないことも大きい。

ストーリーはラブストーリーと大々的に宣伝している通り、子供向きで収まらない。ここも輪廻転生や不老不死といった、今だ人気を誇る要素が軸だ。いや始祖はこういうものだ、と書くべきか。そこに男女の出会いから過去の経緯、そして⋯という展開をきっちり楽しませてくれる。通り一遍なハッピーエンドでもないし、途中マスコットキャラのような存在が妙に媚を売ることもない。自然な見せ方が本作の真骨頂なのだ。

子供向きで収まらないと書いたが、登場人物が醸し出す色気ですら、キャラクターを立てるための表現手段として有効活用している。これは無駄なエロ、ではない。アニメのラブシーンで艶っぽいと感じたのは久々だ。

映像面では、水墨画のような処理や色彩感覚にも惹かれる。都市部の建物や自然の背景に至っては眼福の一言。ただ刺々しい、毒々しいのではなく、情緒がある。背景を眺めるように観るだけでも楽しめる。話題になっている通り、中国や台湾、日本の過去作からのオマージュもある。これを作品の構成要素として活かしていて、シーンが浮足立っていないのがまた素晴らしい。宝青坊の様子など、「あ、こういうの見たことある」という印象を受ける一方で、歴史的な造りの美観を損ねず、ファンタジーとして機能性を加えることにも抜かりがない。アクションシーンも画面や音響の効果が激しすぎてくたびれることがない。それでいて、前述の本場らしさ全開の攻防に痺れる。

※2019年公開のため、既に中国版サントラはSpotifyで配信されている。

今回字幕版を観たのだが、中国語(外国語)だからこそ、音楽にお話に、字幕による台詞に集中でき、想像力を働かせることができたのかな、と感じた。不肖ながら中国語は解らないが、この異国風情は最初に字幕版を観てよかった。音楽がこれまた画との調和が良い。後々観られるなら字幕版がまた観たいし、オススメしたい。字幕版の公開期間が短いのが惜しい。もちろん吹替版も観て比べてみたいところだ。


最後に本編の話に戻るが、名残惜しいがしょうがないな、彼女たちはこれからどうなるのかな⋯という心地良い余韻から、最後はやってくれたなという印象だ。できればエンドロールで足早に席を立たないように。詳しくは書かないが、2段仕掛けである(2021/8追記:吹替版なら3段仕掛けかな)。日本公開以前から知ってる向きも少なくないだろうが、次も恋愛物でお願いします。ありますように、か。


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