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映画『クラユカバ』『クラメルカガリ』の感想 邦画と特撮、アニメに寄せて 

4/12(金)から2作品同時公開の映画『クラユカバ』『クラメルカガリ』の感想です。内容を1から10まで書くようなネタバレはなし。途中クラウドファンディングをやったり、制作中だったのは知っていましたが、ついに完成ということで楽しみにしていた作品。なので公開前から映像やキャストの情報を比較的追いかけていたかもしれません。

※画像をタッチ・クリックすると2作品の予告(YouTube)が再生できます。

映画『クラメルカガリ』の感想

『クラメルカガリ』は『クラユカバ』のスピンオフという位置づけだが、体感的に『クラユカバ』の上映時間帯より先に上映していることが多い様子である。同じ映画館で観ると、『クラメルカガリ』→『クラユカバ』の順になってしまうのではないか(1日のうち1回しか上映のない映画館もある)。時間に余裕があるのなら、個人的には『クラユカバ』→『クラメルカガリ』の順で観ることを勧めたい。

というのも前述の通り『クラメルカガリ』はスピンオフであるがゆえに、やや前のめり・ファン向けの内容になっているフシがある。『クラユカバ』を観て興味を抱いた後ならば「この世界ではこんなことも起きてるんだ」「こういうキャラクターも良いな」という楽しみ方もできるが、先行・単発で観ると詰め込みすぎ、とっ散らかった印象を受ける。同時公開の理由がわかる気がする。

例えば主人公始め登場人物は『クラユカバ』より多いが、各々キャラクターの背景で魅せる場面は少ない。作品内での人物相関図にただ当てはめて作っただけのような役回りに終始している。出番はあるものの細切れであまり作品の進行に寄与しない登場人物もいる。ビジュアル・職業設定・性格付けで楽しむには、表層的でやや限界を感じる。ストーリーも破綻ないが駆け足という印象で、余韻は悪くないが引きは弱い。後述するが作品の構成含め総合点では、『クラユカバ』の方が高い仕上がりだ。


余談だがアブラムシは動作音が映画『ラドン』(1956)のメガヌロンの鳴き声みたいで、見た目といい舞台といいちょっとニンマリした。

映画『クラユカバ』の感想

制作過程を見るにやはりというか、こちらは作品世界に筋が通っている。探偵もの・冒険譚の始まり、といった小説的・ドラマ的な趣向が心地よい。年齢層が高くても「観られる」作品かと思う。夜、レイトショーの時間帯に上映したら一定の評価はされそうな気がする。

まず主要な登場人物の生い立ちや過去に一定の謎や含みを持たせているのが良い。そしてそれを完全にではなく少しずつ、少しだけストーリーで明かしていくのが巧い。端的に書くと続きが観たくなる構成なのだ。この辺りの作品の魅力は『クラメルカガリ』とは大きく異なる。作品世界含め、短い上映時間の中でちゃんと咀嚼できるように練られている。

探偵ものと書いたが、作品のための職業というわけでなく、探偵という存在が作品世界にマッチしているのも大きい。作中で飛び抜けた超人がいない分、作品にリアリティを与えていると思う。主要な登場人物が、数を絞った上で総じて(精神)年齢高めなのも好印象。作品全体がそうだが、良い意味ではしゃいでないのだ。アニメらしくない、とも言える。

メインのストーリーもちょっとした種明かしがありつつも(これも推理小説的)、まだまだ不可解な点がある。登場人物同様、鑑賞後の引きが強い。クラガリの世界をもっと知りたくなる。今度は探偵依頼第二弾でも、ヒロイン側から主人公側にアプローチする展開になってもよい。主人公とヒロインだって、良い塩梅に謎を残している。個人的な趣味で書けば、主人公とヒロインの色恋を描いても面白いだろう。もちろん、そんな一気に燃え上がるような進展がなくたっていい。それが作品の趣になる。色んなポテンシャルのある作品だと思う。

キャストについては主人公・荘太郎の演技が素晴らしい。芝居、独白、異彩を放っている。もう一遍、いや一遍と言わず、演ってもらいたい。記者との掛け合いも味があって良し。ヒロインのタンネは抑制が効いた演技で魅力的だ。もっと情のこもった台詞が聴きたくなる。そんな場面を想像してしまう。サキの案外年相応な感じはよく出ていた。次作をやるなら”少年探偵団”的な話もできそうだ。後はコヅチの大人の女性、という雰囲気がたまらない。キャストの演技で楽しめる作品は久々。その点でも観て損はない。音楽も映像によくマッチしていて、作品としての一体感を感じる。

予告で観る以上のクオリティであることは保証するので、『クラユカバ』を観た上で『クラメルカガリ』を観れば楽しめると思う。『クラユカバ』の続編をまとまった時間、2時間くらいでまた劇場で観てみたい。



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