芸術の秋、と意気込まなくとも年中容易に芸術に触れることができるようになった。殊に音楽や映画は種々の配信・DLサービスが充実してきた。ホールや映画館に行かなくとも、ディスクを購入しなくとも、自宅で楽しめるケースが少なくない。
そこで私などは最近、「そういえば観てなかったな」「また観たいな」という日本映画の旧作を漁る。やはり名だたる旧作を観ずして「近頃の日本映画は」などと語りたくないし、そもそも日本映画の旧作も新作も最近ろくに観ていないのでは、と思い返す機会が多いからだ。世間的にはどうなのだろうか。
そんなところに、CD『シンフォニック・フィルム・スペクタキュラー 12』(キングレコード)が発売された。映画音楽を日本フィルハーモニー交響楽団が演奏し、最新の録音で発表するシリーズである。
もちろんSpotifyでも配信されているし、ハイレゾ音源も発売されている(過去にはSACDもあった)。CDを買わずとも聴ける。
この先月発売された最新盤のテーマが「日本映画音楽の巨匠たち」なのである。個人的には、『ゴジラ』以外の伊福部昭が音楽を担当した特撮映画群を除いて、日本映画の代表格と言って差し支えなさそうな作品の音楽が大方収録されていると思うが、どうだろうか。最近はこれらの作品でさえ、音楽共々忘れられていないだろうか。忘れ去られる程度の作品、そんな声もあろう。だが、手軽に観られるようになった今こそ映画と音楽を楽しむきっかけになることを願いたい。今回は映画のリンクも並べておきたい。
繰り返すが、伊福部昭が音楽を担当した『ゴジラ』以外の特撮映画音楽は、完全に”ファン向け”の収録だと思う。日本映画音楽の巨匠であることは否定しないが、伊福部昭はまだまだ知られていない部類の作曲家と言える。もちろん東宝の看板となった『ゴジラ』シリーズの一連の音楽を担当したというだけで十分偉大なのかもしれない。だが、ここに収録されている佐藤勝や山本直純が音楽を担当した作品のような知名度を持った作品に音楽はつけていない。
・『東京オリンピック』(1965)
・『東京物語』(1953)
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・『赤ひげ』(1965) 佐藤勝では、個人的に『用心棒』の音楽も捨て難いが。
・『影武者』(1980)
・『乱』(1985)
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・『男はつらいよ』 次に紹介する伊福部昭作品群にちなんで、ここは『男はつらいよ 寅次郎真実一路』(1984)を紹介しておこう。観たことがない方は是非。私はストーリーも好き。
・『銀嶺の果て』(1947) 伊福部昭の音楽作品は前述の通り、好事家ラインナップなので収録曲の感想等々、雑談を入れておく。伊福部昭の映画音楽デビュー作だが(三船敏郎のデビュー作でもある)、それだけでよく採り上げられている印象。このラインナップに並べるには正直マニアックな作品だと思う。
・『ゴジラ』(1954)
・『空の大怪獣ラドン』(1956) 次の『対キングコング』共々、ハリウッドの『GODZILLA』シリーズを意識した並びか。収録曲「ラドン追撃せよ」は映画のテンポに忠実で好演。ラドンとセイバーの追跡劇が楽しめる。
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・『キングコング対ゴジラ』(1962) 合唱の再現度も高く、メインタイトルの最新演奏の中では、最も迫力があり素晴らしい。当時の聴視率(視聴率)戦争の風刺も盛り込んだ、再評価されてよい作品。
・『怪獣大戦争』(1965) マーチは遅すぎず早すぎず、テンポ設定が絶妙で威勢がよい。近年のステレオ録音はライブで音を外したくないからか、慎重になりすぎていると思う。これはスタジオ録音の意義がある。
・『怪獣総進撃』(1968) マーチは『SF交響ファンタジー第1番』でやたら快速演奏されて食傷気味だが、正調のテンポ。『東京大襲撃』が聞き物。
・『八甲田山』(1977)
・『妖怪大戦争』(1968)