デジタルエンタテイメント断片情報誌

デジタルな話題もそうでない話題も疎らに投稿

異星人を相手の後か、その前か 『地球防衛軍』(1957)・4Kデジタルリマスター版の感想

「午前十時の映画祭13」で8/4上映開始の『地球防衛軍』(1957)・4Kデジタルリマスター版を観てきたので感想です。今は同名のゲームシリーズの方が有名でしょうか。今回の感想は作品に纏わる話だけでなく、映画館での体感・4K版の映像・音響諸々に書ければと思います。

『地球防衛軍』(1957)の感想

まず映像について。現在流通している配信やDVDは後半に痛みが目立っていたが、綺麗になっている。冒頭のタイトルクレジットの発色からして印象的だ。また4K版は全体的に質感が向上している。例えば放水を浴びたモゲラのテカリ具合などより生々しくなった。

ただ本作はかなり手を加えたせいか、いい感じにぼやけていた操演が少々クッキリした気がする。とは言え「どうやって吊っているのかな」と注意深く見ればの話である。従来通り全くわからないシーンも多く、当時の技術や完成度の高い映像作りに感心してしまう。F-86やF-104、円盤の操演は本当に凄いと思う。

音響面では事前にアナウンスあったように、疑似ステレオの効果が面白い。台詞が発せられる場所毎にスピーカーを使い分けているのがよくわかる。音楽も『キングコング対ゴジラ』のように立体音響があったらと、楽曲の弾け具合を聴いてつくづく惜しい。

ストーリーは単純なようで、存外味わい深い。ただ侵略者を撃つのみの通り一遍でなく(後半はその色が強いが)、この頃の東宝特撮らしさが盛り込まれている。

秘密裏にいきなり土地を拝借した挙句、災害を起こして事実発覚。それを些細な犠牲と言い、さらに土地を要求する。侵略ではない、平和裏に解決したいと言いつつターゲットの女性は既に拉致を開始、決裂するとさらに広大な土地を力づくで奪うと宣言。地球人が敵うわけがないとタカを括っていると猛反撃に遭って退散。ミステリアンの侵略経緯と言い、侵略の手口と言い、人類側に、現代にこそ思い当たる節がないだろうか。声高に述べるより、メッセージはさり気ない方が効果的な場合がある。そしてそこに図らずも作品の普遍性が生まれている。

そうして観ていくと、後半の人類大攻勢も考えさせられる。相手が原水爆以上の武器を持っていそうだが、原水爆で対抗はできない。でももしそんな武器を使ってきたら? その前に決着をつけるとしたら? 本作でその答えは電子砲とマーカライト(ファープ)だった。それらの効力が無かったときのことは描かれなかった。ファンタジーが故の、あまりにも強力なゲームチェンジャーだったからだ。映画での活躍は痛快この上なかったが、そういった上には上を行く技術の登場や応酬もまた、現実世界では終わりが見えないので寒気がする。


そもそも我々は今、ミステリアンが攻めて来たら世界で一致団結して対抗するのだろうか。ミステリアンに協力を表明する国も、民間団体も、個人も、いそうではないか? 映画の中以上に。

そしてそうなって地球が焼け野原になったときに、宇宙に逃れる人々も、いそうではないか? 宇宙船だって、別に国家や政府の要人だけが使えるわけではないのだから。

これまで幾度となく楽しんでいた作品だが、思わずそんな時事を織り交ぜたくなった。

そういえば最終決戦になると大将クラスが自ら戦場に赴いて指揮を執る、というのもフィクションのようで案外リアルである。余程改修に自信があっても、あれだけ首脳陣が搭乗しているα号をわざわざドームに近づけないだろう。ただ、そうしたトップの行動や心意気が士気に影響する、というのはごく最近の現実でも思いつく。こうなると渥美の単身ドーム潜入や白石の寝返りによる形勢逆転が映画的なお約束で、むしろ安心する作品だ。

雑談:ゲームで遊ぶ『地球防衛軍』

最後は特撮好きとして雑談で楽しく。冒頭で小ネタを入れたが、本当に本作をベースとしたゲームがあるので紹介しておきたい。1993年にPC-98で発売された『ゴジラ』(システムソフト 現システムソフトベータ)である。

以前に別の記事でも紹介したが、このゲームは防衛隊(自衛隊)となってゴジラを始めとした東宝特撮怪獣を倒したり誘導したりする戦略SLGである。もちろんシナリオは映画ベース。この中の『地球防衛軍』ベースのシナリオがまた最高なのである。映画の感想では色々書いたが、ゲームは楽しく映画に登場する兵器でミステリアンと一大攻防戦を繰り広げることができる。

当時のPC、それもPC-98のスペックで動くゲームなのでグラフィックは地味だが、その再現度が素晴らしい。効果音や鳴き声も劇中使用のものだし、BGMも伊福部昭と佐藤勝の音楽だ。当然『地球防衛軍』ではあのマーチ。テンション上がりっぱなし。その上α号やβ号、マーカライトファープを操作できるのだから至福の時間である。

※β号の攻撃。カッコいい。円盤にナパーム? 気にしない気にしない。

ちなみに映画序盤を再現したシナリオ『第一次攻防戦』の目標達成はミステリアンドームに隣接だ(シャーマンで突撃していたのを再現するわけだ)。これが結構難しい。ドームは映画さながらの強さなので、隣接する前に簡単に1ユニットが吹っ飛ぶ。モゲラは通常兵器で倒せる強さだが、案外しぶとい。

※映画のような攻防。放水車はいらないけどデフォルト配置で外せない。

また映画よろしくどんな兵器でも怪獣を攻撃できる。なので画像のようにモゲラに放水だってできる(もちろんダメージは0)。とまあこんな感じで、大げさだが私はこのゲームで夢が叶った。このゲームをプレイできるよう、今でもPC-98とディスクをメンテし続けている。いい加減プロジェクトEGGあたりで復刻してほしい。今回映画を鑑賞して再現を狙うのも一興。

スポンサーリンク