デジタルエンタテイメント断片情報誌

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チャイコフスキー 交響曲第4番ヘ短調Op.36の名盤

チャイコフスキーの交響曲第4番ヘ短調Op.36で、お薦めの録音を紹介します。第5番を既に紹介しました。

この類の記事でいつも駄弁っているのですが、やはり”名盤”と記事タイトルに冠すると外部からのアクセスが良好ですね。そういえば「決定盤」だ「特選盤」だの煽ってきた業界も終焉しつつありますね。今やサブスクのリンク一つ貼って、「じゃあ聴いてみて自分で判断するか、探してね」で終わりますからね。自分の好みすら見出せない向きにこそ、サブスクは色々試せて好都合なのになあ。妄言多謝、と書いたら許されるのかしら。

知られているようで知られていないの境界その2

クラシック音楽の世界への導入として申し分ない派手さと華やかさを持ちつつも、第5番に匹敵する「クラシックファンなら知ってるあの曲」であり、そのインパクトゆえに後々関心が薄れていく曲ではないか。まだまだ世間的な知名度がなさそうなところも同じだ。

もっともらしいことを書きながら、これは単なる自分の体感に過ぎない。そんなわけで、無性に聴きたくなったときはガイドや検索で真っ先に引っ掛かるあの定番の、だけでなく、これはという音源を採りだして、満足しておきたい。

 

ディスコグラフィ

すべてステレオ録音。私はこの音楽絵巻は状態の良いステレオで聴きたい。

まず新しい録音でお薦めなのが、リンドベルイ指揮アークティック・フィルの後期交響曲集から(BIS)。極端なテンポをとるわけでなく、優美かつ鳴らすところはキチンと鳴らす解釈が良い。サブスクもあるし、SACD・ハイレゾの音も良い。こういう演奏が容易に聴けるのは有難い。第6番もなかなか良い。


いやいやかつての名指揮者はどうなんだ、ということでベーム指揮チェコ・フィルの演奏(ORFEO)。私にとって指揮者ベームといえばこのチャイコフスキー。それも晩年の後期交響曲集(DG)ではなくこちら。実はベームに来日公演等の思い入れも思い出も全くない。それでもこのライブ録音には打ちのめされた。自分や他人が勝手に作り上げた指揮者のイメージに囚われてはいけない。こんなドラマチックに聴かせる熱いチャイコフスキー、なかなかない。こういう演奏を、私は爆演と言いたい。権利関係が原因なのか、なぜかサブスクで聴けない様子。


どうせ古典を紹介するならば、アルベルト指揮ラムルー管弦楽団の演奏。これよこれ。以前別の記事でも紹介。近年になってCDで復刻されたもの(ACCORD)。管楽器に馬力があって、ロシアのオーケストラの響きとも違う、華々しく勢い溢れる演奏がとても楽しい録音。この指揮者の他の録音も面白いので、まずはサブスクでどうぞ。


ムラヴィンスキーやカラヤンの録音と一緒に並んでいてもおかしくないのに、別に隠れた名演・名指揮者でもないのに、最近あまり話題にならない録音。モントゥー指揮ボストン交響楽団の演奏(RCA)。ついでにハイレゾ音源を心待ちにしているのに出ない録音。破綻なく統率が取れた演奏で(なのに決して退屈でない)、こういうのをスタンダードというのではないだろうか。


フランス繋がりでもう少し。これも実は再度の紹介だが、ALTUSのコンドラシン指揮フランス国立放送管弦楽団による1976年のステレオライブ録音。同コンビでショスタコーヴィチの交響曲第8番もあるが、それより聴くべきはこのCD。私も最初はショスタコーヴィチ目当てだったが、チャイコフスキーを聴いて感激した。もの凄く剛直なチャイコフスキー。細かいミスなんて気にせず音が、音楽が突進してくる。これを聴くとコンドラシンはチャイコフスキーからショスタコーヴィチまで、「ロシアの作曲家の作品解釈」を脈々と今に伝えているのだな、などと妄想したくなる。併録のキージェ中尉がまた同解釈のかっ飛ばした演奏で最高。N響とのライブより何倍も素晴らしい。


ドミトリエフ指揮サンクトペテルブルク交響楽団のチャイコフスキー後期交響曲(SONY)から、第5番に続いて第4番も紹介したい。ロシアの指揮者・オーケストラでイチオシはこれ。録音も新しめ。豪放な演奏で、金管楽器なんて下品スレスレまで鳴らしている。コンドラシン同様、ロシア(旧ソ連)の系譜、みたいなものを期待している向きは是非。CDの入手は難しくともサブスク(Spotify)で聴ける。

交響曲第4番ヘ短調

交響曲第4番ヘ短調

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最後にクーベリックの最近発掘されたライブ音源。色々聴ける良い時代。auditeから発売されているクーベリック指揮の第4番はバイエルン放送交響楽団との演奏も良かったが、これはそれの上を行く掘り出し物。ニュー・フィルハーモニア管弦楽団との1968年の演奏。第一楽章からフィナーレまで圧巻で、ああ良い第4番を聴いた、という満足感がたまらない。オーケストラがノッていて、ロシアの指揮者・オーケストラ顔負けの弾けっぷりである。これも私の考える爆演。というより第4番はあまり”ロシア物”という意識で探さないほうが名演に当たる気がする。生々しい録音がまた素晴らしい。そうそうこの録音、ショップサイトの宣伝では「モノラル」となっているようだが、ステレオ録音。買う前にこういう確認ができるのがサブスクの良い所。併録のハイドンやシェーンベルクも面白い。

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