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指揮:山田一雄に期待して・・・その2 山田一雄とチャイコフスキー交響曲第5番

山田一雄(1912-1991)という日本の指揮者に興味を持って久しい。新たな音源の発売は今でもチェックしている。没後20周年(2011)・生誕100周年(2012)を迎えて以来、細々と音源が発掘されているのを見るにつけ、そんなファンは今でも一定数いるものだと推察している。

だが私自身、その音源を嬉々として聴いてみると、これが期待の割に、ウーン、という音源が多く、困惑にも近い感情を度々起こしている。炎の指揮者・完全燃焼のヤマカズには、もはや録音媒体でほんの少しだけでも”触れる”ことすらできないのか。そんな悲喜交交を以前(2015年)の記事で書いた。

今回はそんな悩ましい指揮者・山田一雄の残した録音、チャイコフスキーの交響曲第5番の録音について少し語りたい。

山田一雄が指揮したチャイコフスキー交響曲第5番

  • 新星日本交響楽団(1989年)

タワレコード企画盤(TWFS 90002)。5年ほど前にSACD化されたものだが、元々フォンテックからCDは発売されていた。生前の山田一雄の指揮ぶりを知らないファンにとっては、前述した山田一雄の”伝説・逸話”を聞いて期待に胸を膨らませて手に取った音源の一つではないだろうか。
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チャイコフスキー:交響曲第5番

チャイコフスキー:交響曲第5番

しかしこれがスタジオ録音ということもあってなのか、解釈は大人しく、演奏も淡々とした印象が否めない。京都市響との第九や札響とのベートーヴェンを知った後だと、尚更ガッカリしてしまう。スタジオ録音なのに管楽器が妙に不安定なのも気になる。ちなみに同レーベルの新日フィルとのモーツァルト交響曲第41番も同様の印象(こちらはオケの状態はそれほど気にならない)。私の思い出の”ハズレ”演奏だったりする。

  • 札幌交響楽団(1983年)

こちらもタワレコード企画盤(TWFS90012)。2年前に発売された初出音源。何かと縁のあった札響との定期演奏会より。これは正直オケの状態がマイナス。当時の札響のレベル云々以前に、結構ボロボロなのだ。散漫というわけではないが、各パートが指揮についていくのがやっと、という演奏ぶりだ。終楽章ではそれが特に顕著で、聴いていて堪えきれず噴き出してしまった。やはり”オススメ”したい音源ではないなあ。
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ちなみに前半のプロで伊福部昭の『ラウダ・コンチェルタータ』を演奏したそうだ。そちらの録音は残っていないのか気になる向きもあるだろう。私のことだが。まさか『ラウダ』にエネルギーを割いたからチャイコフスキーがこうなった、などと考えるのは下衆の勘繰りだと思うが・・・。

  • 日本フィルハーモニー交響楽団(1972年)

最後もタワレコード企画盤(TWCO-1010)。タワーレコードの企画担当には本当に感謝している。解散直前の日フィルとの定期演奏会から。ここでも山田一雄の解釈は穏当なのだが、予想外にオケの状態が良くて「おっ」と思わせる。第1楽章の雰囲気なんて、前2種とは異なる静寂感が漂っていて聴かせる。第3楽章も小気味良い。ただ音源が古いせいか、編集した際のテープの接ぎ目が分かる箇所があるのが残念。ヘッドホンで聴くと一瞬興ざめしてしまう。

チャイコフスキー:交響曲第5番; プロコフィエフ:交響曲第7番

チャイコフスキー:交響曲第5番; プロコフィエフ:交響曲第7番

チャイコフスキーは悪くなかったが、併録のプロコフィエフの交響曲第7番の方が聴き物かもしれない。演奏会用ラストを使用。


こんな風に列挙すると、やはりチャイコフスキーに関してはコレクターズアイテムの域を出ないかなあ、という印象である。他に「コレはすごかった」という録音が発掘されるのを願ってやまない。

番外:札幌交響楽団とチャイコフスキー交響曲第5番

札幌交響楽団の名前が出たので、最近の新譜の話題と併せて番外編といきたい。配信サービスを使いつつ、まだまだ配信サービスでは楽しめない音源は地道に従来の楽しみ方を踏襲している。

  • エリシュカ指揮(2016年 ライブ録音)

個人的にエリシュカが指揮した曲としては、ドヴォルザークの交響曲よりも広く薦めたい録音(DQC-1581)。第1楽章冒頭こそ慎重になりすぎた感があるが、以降は管楽器の鳴らしっぷりに代表される、メリハリのついた好演奏。この作品にはこんな音の華やかさ、強弱の付け方が必要なんだと納得させる解釈は、もはや日本のオケが・外国のオケだから、といった議論など些事だと思わせるレベルだ。

交響曲第5番(チャイコフスキー)

交響曲第5番(チャイコフスキー)

  • アーティスト: 指揮:ラドミル・エリシュカ管弦楽:札幌交響楽団
  • 出版社/メーカー: SPACE SHOWER MUSIC
  • 発売日: 2017/11/08
  • メディア: CD
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そもそもエリシュカの解釈を評して「滋味ある」「派手さはないが温かみある」といった言葉ばかり並べてしまうのは、何らかの先入観に拠るものではないかと顧みることがある。スメタナの『我が祖国』もそうだが、エリシュカの凄みは、ときには派手な音作りも辞さない”演出”にあったのではないだろうか。そしてその演出における、管楽器の扱いにとりわけ優れていたように思う。いずれにせよ、日本での公演がなくなるのが惜しい指揮者だ。

  • 堤俊作指揮(1988年 ライブ録音)

これは唸った。音楽の魅力がみなぎる演奏。今回の記事のために聴いたのだが、一押し。札響ファンでこれを聴いていない人はモグリ、などとつまらないレッテル貼りをしたくなるくらい。いやお詫びして改める。未聴の方には是非聴いてもらいたい。私が持っているのは東芝EMI発売のもの(CZ30-9070)だが、別レーベルでも発売されているはず。堤俊作という指揮者の名前と活動くらいは知っていたが、今更ながら録音に興味が湧いてきてしまった。

交響曲第5番ホ短調

交響曲第5番ホ短調

  • アーティスト: 札幌(交),チャイコフスキー,堤俊作
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1989/06/07
  • メディア: CD
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第1楽章からして荘厳さに惹き込まれる。第2楽章の優美さ、激しさ、しなやかさ。こんなに聴きどころがあったのか、と襟を正したくなる。第3楽章の夢見心地。そして第4楽章は熱気をはらみ、つんのめっている様までありありと録音に残されているが、それすら嬉しくなる。オケの状態は良く、録音は収録レベルがやや低いが、それほど古臭く感じない。

ちなみにライナーには故・高円宮憲仁親王が当日の演奏を絶賛した文章(新聞記事)が掲載されているが、仰る通りとしか言いようがない。洒脱な文章で、こういうライナーを読みたくてディスクを買っていた頃を思い出した。


山田一雄からチャイコフスキー、札響と話題が渡ったが、今後もこんな楽しみを忘れず収集と鑑賞に勤しみたい。

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