デジタルエンタテイメント断片情報誌

デジタルな話題もそうでない話題も疎らに投稿

指揮:山田一雄に期待して・・・その3 山田一雄とベートーヴェンの交響曲

没後20周年(2011)・生誕100周年(2012)を迎えて以来、細々と音源が発掘されている指揮者の山田一雄(1912-1991)だが、これまで2回ほど録音について語った。


しかしこの2回いずれも、「なんか話に聞くより残された録音はイマイチっすね」みたいな話題を誤魔化している感があり、さすがに”ヤマカズ”ファンの端くれとして何となく体裁が悪い。

そこで今回は、私が好きな山田一雄が指揮したベートーヴェンの交響曲の話題を穏やかに語りたい。私がヤマカズに唸ったのは20年以上前、既に手に入れにくくなりつつあった、ベートーヴェンの録音を入手してからである。今思えば没後の節目に発掘された録音よりも、既に素晴らしいものが揃っていた印象だ。今回は躊躇なく思いの丈をぶつけられそうだ。

山田一雄が指揮したベートーヴェンの交響曲

他の記事でも書いたが、ベートーヴェンの交響曲全集は、毎年何かしら聴き直している。最近はPCオーディオ環境を整えた上に、配信サービスも利用しているので、延々と再生していることも多い。

それでもCD時代に集め、今でも愛聴している全集がある。厳密には第1番以外だが、山田一雄が札幌交響楽団を指揮したもの(タワーレコード)だ。

この全集の第7番が本当に素晴らしい。第四楽章など、聴く前は「正直飽きた」という気分が邪魔することもあるが、久々に第四楽章まで聴いて感動してしまった。重厚さと推進力、躍動感、私の「第7番、第四楽章はこういうのが聴きたい」を全て満たしている。巨象が踊るような”重さ”も欲しいが、バレエダンサーのようなキレと軽やかさも同時に欲しいのだ。これがないと鈍重なだけの演奏になったり、せせこましく感じてしまう。

当時のオケの状態も問題なく、よく指揮に反応していると思う。録音は自然な収録で収録レベルも気にならない。かつて”レア盤探し”をしていたころの大当たり、だった。当時手に入れた盤(ファンダンゴ盤、ジャケットの字は山田一雄のもの)も手元に残している。

ちなみにこれと同系統の感動を受けたのがテンシュテット指揮北ドイツ放送交響楽団の録音(EMI)。どちらも「マーラー指揮者」として有名だが、この偶然を大々的に書き連ねる気はない。ただ、遅まきながら伝説と騒がれていた指揮者の凄みを理解した録音である。

テンシュテットも一過性のようにブームが落ち着いた感があるが、配信・ダウンロードサービスが充実してない指揮者のひとり。


後は京都市交響楽団との第9。これはタワーレコードの復刻万歳、に尽きる。どうも新星日本交響楽団との録音はライブゆえの疵が気になる録音が多い。伊福部昭作品でもそう。ベートーヴェンは没後20周年以降に出された盤を含めて、詰めの甘さも気になる。そこに行くと、京都市響や新日本フィルはやっぱ技術的に上だな、という印象。それこそベートーヴェンなんて、配信以前から海外の名だたる録音で溢れているわけですから。どうしても比較が厳しくなる。

ことに第九を聴く限り、日本のオーケストラは一日の長があると思うのは私だけか。そこにヤマカズらしい、キレと歌い上げがよくハマっている。京都市響とのコンビで、もっと録音を残して欲しかったと思うことしきり。

スポンサーリンク