デジタルエンタテイメント断片情報誌

デジタルな話題もそうでない話題も疎らに投稿

ウルトラQとウルトラマンの間に 『ウルトラ作戦 科特隊出撃せよ!』

特撮作品で圧倒的な存在感を放つヒーローよりも、地球の平和を守るべく強大な敵に立ち向かう人類側、防衛集団についつい感情移入してしまうのは私だけでしょうか。

今回は空想特撮シリーズ『ウルトラマン』に登場する防衛チーム、科学特捜隊の活躍を描いたPCゲーム『空想特撮シリーズ ウルトラ作戦 科特隊出撃せよ!』(1992 バンプレスト PC-98)の話です。ちなみに記事タイトルは旬な話題に便乗したのではなく、付属のマニュアルの見出しから。いやちょっと狙いました。

ウルトラ作戦 科特隊出撃せよ!』とは

バンプレストのPCゲーム参入第1弾は題材を『ウルトラマン』に求めながらも、当時のいかにもPC作品、ディープなファン向けのゲームでした。科特隊のムラマツキャップの視点を中心に怪獣や宇宙人と戦う全6話構成のアドベンチャーゲームです。発売はPC-98のみでコンシューマ移植もされませんでした。最近話題になったフロッピーディスク7枚組。ハードディスクにもインストール可能。ちなみに参入第2弾のゲームは『ああっ女神さまっ』だったはず。これもPC-98作品。

※OPはもちろん『科特隊のテーマ』が流れています

特典冊子の『ウルトラ作戦大図鑑』によると、最初はウルトラシリーズと関係のない怪獣撃退ゲームを作る予定だったのが円谷プロの協力、しかも”空想特撮シリーズ”まで冠してOK、となって出来上がったとのこと。なのでゲームのOPにも当然「監修:円谷プロダクション」。円谷プロ公認のアナザーストーリー、これはファンなら遊びたくなるはず。私は当時既にウルトラマンから”卒業”気味でしたが、こういうPCゲームや平成ゴジラシリーズがきっかけで戻ってきて今に至ります。それがまさか今の今になっても語っているとは。いや世間に語れる土壌があるとは。

『ウルトラ作戦大図鑑』にはゲームに登場するオリジナル怪獣の造形写真や図解(まるで小学館の『怪獣図解入門』)、ウルトラマン制作当時の企画書から再録された科特隊の各種設定、制作者インタビュー(怪獣デザイン・西川伸司はじめ存命だった円谷皐の寄稿も有)と盛りだくさんです。そうそう、科特隊メンバー5名プラス佐原健二のインタビューも載っています。読んでいるだけで至福の時間です。

※科特隊インタビューではイデ隊員(二瓶正也)が、”ウルトラマンのいない地球を科特隊が守るんですか。大丈夫かなぁ。”なんて仰っていてニンマリ。イオゴンは先鋭的なデザイン。

ゲーム概要とスピンオフの在り方

本作では『ウルトラQ』と『ウルトラマン』を繋ぐ、科特隊の誕生からウルトラマンが地球にやってくる直前までが描かれます。これが前述の通り、ファン向け、ファンのためのつくりで本当にニクい。

グラフィックは『ウルトラマン』本編のキャプチャと新たに撮影したミニチュアを組み合わせており、雰囲気満点です。当時のPC-98に画像を取り込んでいるので解像度は低いですが、ぼやけた画像がかえって想像力を高めてくれる気がします。我ながらちょっと贔屓目かな。登場人物も当時のまま! 一の谷博士に岩本博士も登場します。ゲームだからこそできる、夢の世界です。第一話の科特隊メンバーお披露目はウキウキします。

※ウルトラQから話が続いていることに胸が高鳴る

※志願して入隊したフジ隊員

※消去エネルギーといえば⋯『シン』では登場しませんでしたねぇ

※特殊潜航艇S号に危険察知のネクタイピンもちゃんと使ってます


怪獣のデザインは後の『ウルトラマン』を意識した怪獣が多く、「この着ぐるみを改造して⋯」と想像して楽しめます。私は合神竜ミドンガのコンセプトが大好き。ミドとロンガ2体の合体怪獣ね。

※この合体方式の怪獣は映像作品で見たい

※レッドキング感アリアリのゴルドキング。そこが良い

※パゴスとネロンガの間にもう一体、ゴロモス。ゴルドンのダイヤモンド版

※完全オリジナルの怪獣も魅力的なのが素晴らしい。宇宙鳥獣エックスと再生ビルガメラー。


ストーリーは全6話の選択型アドベンチャーで一本道です。難しい選択肢はなし。科特隊誕生から環境問題、『ウルトラQ』で登場したあの宇宙人再びに古来の伝説等々、バリエーションに富んでます。たまに寄り道しないと見られないグラフィックがあるので総当りしておきましょう。

※イントロダクションがまた、らしくてグッド

※例えば1話のこのグラフィックなど、見なくても話が進んでしまいます


戦闘モードはターン制のシミュレーションゲーム形式。そうそう、ゲームはオリジナルBGMも怪奇色があってなかなか良いですが、ここぞでは宮内國郎の音楽です。『科特隊のテーマ』から、戦闘モードでは『ウルトラ作戦第一号』から「戦い」の曲も流れます。

ゲーム時点の科特隊には強力な武器がなく、怪獣の体力がなかなか減りません。怪獣が目標に到達するのを防ぐマップもあり不安になりますが、四分の一くらい減らせばクリアです。

※戦闘前には勝利条件が表示されます。バックのシルエットがカッコいい

あとはマニュアルに載ってない攻撃技を紹介しておきます。スーパーガンを所持している隊員ユニット(ムラマツ、ハヤタ、イデ、フジ)を3人隣接させて、真ん中のユニットのターンで攻撃すると強力な「トリプルショット」になります。隣接はまっすぐでもカギ括弧型(「、」)でもOK。斜めはダメ(\、/)。これを使うと比較的早めにダメージを与えられるはず。

※アラシはスパイダーショットを使っているからできないのね。⋯スーパーガンも持ってるよな


最後に作品について。私は普段スピンオフを語る際に、安易にスピンオフのストーリーを本編に結びつけたり、設定をごちゃ混ぜにして語ったりしないように気をつけています。メディアの違い、制作者の違い、本編との設定の違い、制作側の(情報)連携⋯。受け手の想像力や読解力も大事ですが、制作側が作品裏話や現場の話をSNSで気楽に発信したりする昨今、バズるため・PVを稼ぐために一二を争って作品を「曲解」し自分の考えを喧伝することを避けたいからです。

そんな中、本作はとりわけ『ウルトラQ』『ウルトラマン』の世界観を大事にしており、当時違和感なくゲームにのめり込んだことを改めて思い出しました。制作者の個性や人間性を読み解かせウルトラマン蘊蓄披露に終始したりすることもなく、「面白い設定だな」「こんなエピソードがあったらいいなあ」と素直に思わせてくれる作品でした。世間的な知名度やヒットには程遠い作品ではありましたが、”空想特撮シリーズ”の名にふさわしい作品だと思います。ウルトラマンについてはゲームに限らず、このような出会いをまだまだ望みたいです。

それでは説明不要のゲームEDとともに。


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