デジタルエンタテイメント断片情報誌

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ベートーヴェンの交響曲と日常:序 スウィトナー

2020年はベートーヴェン(1770-1827)の生誕250周年にあたります。実は正月にささやかにお祝いする記事を書いたのですが、そのときは今年がこんなことになるなんて、思ってもみませんでした。

音楽の話題をしている場合か。音楽記事を更新しつつも、そんな気分がしばらく続いていました。最近になって、ようやく日々の生活に音楽を聴く時間が欲しいと思えてきました。音楽が、芸術がこのような状況を救ってくれる。残念ながらそう思ったことはありませんが、こんな状況だからこそ、何か不変のものに触れたい。そんな欲求が少し芽生えてきました。


そこで何を聴くか。というわけで、クラシック音楽の定番、メモリアルイヤーのベートーヴェン、それも交響曲を聴いて何かしら記事にしようというわけです。私にとって、普段から聴きに聴いてそれでも手に取る音楽がベートーヴェンの交響曲でした。そんな自身の基本に立ち返る意味でも、自分のペースで記事を続けていけたらと思います。

手持ちのCD・音源の話が中心ですが、Spotifyといったサブスクリプションの利用も当然予定しています。本来各自検索して頂きたいところですが、コレクション自慢ではないので、手軽に聴けるものは聴けると紹介するつもりです。記事としてはその方が有用かと思います。そういう記事他にもやってるんですよねぇ。続けないとねぇ。

スウィトナーのベートーヴェン交響曲全集

日本でも馴染みあったオトマール・スウィトナー指揮ベルリン・シュターツカペレの録音(日本コロムビア)。CDはプレミア価格でもない様子(2020/8現在)。配信ではmoraで全曲普通の音質で購入して聴ける。Spotifyは一部のみ。残念。


スウィトナーの演奏イメージってどうなのだろうか。「ドイツ伝統の」「構築性」「渋みのある音」⋯そんな言葉が並べられているのは見たことがある。もちろん残された録音や、晩年のNHK交響楽団の演奏を少し観た印象から、そうかなと思うときもある。

ただ、ことこのベートーヴェンの録音に関しては「とことん爽やかなだな」という感想。テンポが速いとか、躍動感がもたらすものだけではない。演奏が生み出す空間とでもいうか、前述の印象を期待すると一瞬、拍子抜けするかもしれない。演奏の中で濃淡・明暗をつけていったのではなく、最初から全体で意図したような印象を受ける。その意味で用意周到な演奏に感じる。ベートーヴェンの全集としては、そこが案外人気の出ないところなのかもしれない。

敢えて他指揮者と比較すれば、アバドが指揮した2回目の全集と同じような印象を受ける。アバドは全曲Spotifyで聴けるんだよなあ。


スウィトナーのベートーヴェンの話に戻るが、第6番など、ゆったりした演奏なのに重苦しくない。見通しが良く、スッキリした第5番もなかなか良い。第7番は軽やかさと重厚さ、その塩梅がどちらに偏っても好きではないのだが、この暑苦しくなさは繰り返し聴いても飽きない。第9番の合唱や声楽陣も癖がなく、がなり立てるでもなく、年中聴ける。


季節といったイメージを押しつけるのは良くないが、涼しい自室で、カラッとした夏の陽気を堪能した気分になった。こんなことを書いておいて、毎年夏頃、暑い時期に聴きたくなりそうだ。そういえば今年はスウィトナー没後10年だった。

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