配信サービスのSpotifyとナクソス・ミュージック・ライブラリー(NML)でクラシック音楽を楽しもうという記事だが、今回からレコードライブラリーを揃えていくような感覚で音源紹介をしたいと思う。ここから順々楽しんでいけば、費用もそれほどかからない、場所もとらない、いいことづくめではないだろうか。
※もう一度確認:クラシック音楽を聴くきっかけ
その1で「なんでも結構」と書いたのだが、念押ししておこう。上記配信サービスは、せっかく色々聴けるのだから、やはり選択肢が多いほうが楽しい。特にSpotifyで聴くのなら、色んなジャンルに立ち寄り、つまみ聴きもできる。私自身クラシックに限らず、邦楽・洋楽ジャンル問わず漁って、音源を見つける度にはしゃいで聴いている。そんな楽しみ方から、月並みだが「クラシック音楽の裾野」が広がるのも現代の音楽シーンだと思う。
それでは今回の音源紹介:
ベートーヴェンの交響曲全集
”第9”や”運命”の知名度は、明確なソースがなくともある程度信用しても良いのではないか。”田園”も冒頭を聴けばわかると思う。だが今回は、それら有名曲を丁寧に聴くというよりも、ライブラリーとしてベートーヴェンの交響曲全曲をセットで聴いてしまおう、という提案をしたい。CDで聴くわけではないのだから、全曲流しっぱなしも余裕だろう。
9つの交響曲の中で、知らない曲があっても良い。ここからお気に入りのナンバーを見つけて聴く。コンサートではないのだから、気に入った楽章を繰り返し聴くのもアリだ。それは他の音楽の楽しみ方となんら変りはない。個人的には、全集で巡り合った第2番のおどけたような音楽の運びや、凛々しい力強さも垣間見える第4番に感銘を受けた記憶がある。また、第9は全楽章通して聴いてみることをお薦めしたい。
また実際に全集を聴いて、ベートーヴェンの交響曲が何だか合わない、好みでないと思ったアナタ。一向に構わない。ともすれば無料で聴けるサービスなのに、食わず嫌いでないだけ大いにマシというものだ。それに共通の話題としてベートーヴェンの曲を聴いておくことは無駄ではないし、何より、まだまだクラシック音楽の世界は深い。大体ベートーヴェンだって、交響曲だけでなく、協奏曲、弦楽四重奏、ピアノ曲・・・等々あるのだから。見切るのは早いかもしれない。
そんなわけで、音源紹介。まずは、セル指揮クリーヴランド管弦楽団の演奏。シャープな演奏も柔らかい表現も巧みな全集。第5番や第6番がそんな印象か。これはSpotifyでどうぞ。Spotifyの利点は、NMLにないSONY/BMGの音源が揃っていることだったりする。
マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏は、落ち着いた楽器の音色の魅力が特色。新旧2種類の演奏があるが、第9、それも第4楽章が意外と意識的にテンポを動かしたりして個性的。リンクは新しい方。旧版はNMLにもあり。
モントゥー指揮ロンドン交響楽団・ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏。特に第7番が豪放磊落(らいらく)で素晴らしい。
CDその他の音源でも入手が容易そうな音源を並べたが、ベートーヴェンの全集は沢山あるので、とにかくお気に入りの全集を見つけていただきたい。
芥川也寸志の管弦楽曲
もうすぐ没後30年という作曲家・芥川也寸志。芥川龍之介の三男であることはともかく、生前のタレント的な活動や、何より音楽が急速に忘れ去られようとしている気がしてならない。
特に初期の管弦楽曲は音楽のキレや華やかさ、旋律のカッコ良さが特筆で、もっと聴かれても良いし、演奏頻度が上がってもおかしくないとつくづく思う。日本以外では、東欧のオーケストラが稀に取り上げていたりする。芥川也寸志の音源取扱についてはやはりと言うか、NMLに分がある。
ドゥチマル指揮ポーランド放送アマデウス室内管の『弦楽のための三楽章”トリプティーク”』が異様に切れ味鋭い演奏だ。CDも希少なので、NMLに加入していたら聴いてもらいたい。
そして『交響三章』(トリニタ・シンフォニカ)は、まさに”青春絵巻”といった趣。Spotifyでも聴けるナクソスの演奏も素晴らしいが、NMLのみの飯守泰次郎指揮新交響楽団の演奏が、明るさ爆発の上に切なさ全開で聴かせる。この曲で芥川也寸志の魅力に取り憑かれる人も少なくないので、興味があれば是非。
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