デジタルエンタテイメント断片情報誌

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プロジェクトEGG配信SLG『トキオ〜東京都第24区〜』の魅力

プロジェクトEGGというゲーム配信サービスがある。知っている向きには今更だろうが、日本で発売されたPC・家庭用ゲーム機の作品を中心に、1990年代くらいまでのいわゆる”レトロゲー”を復刻・配信して遊べるサービスだ。

https://www.amusement-center.com/project/egg/

これが当時実際に遊んだ向きには懐かしさ、あるいは再チャレンジしたくなるラインナップで嬉しい。近年になって移植・リメイクされた作品のルーツを辿りたくて遊んでいるゲーマーもいるのではないか。いずれにせよ、当時のソフト・機器が手に入れにくくなっている昨今、大変意義あるサービスだと思う。

このサービスで2018年に配信されたシミュレーションゲーム(以下SLG)、『トキオ ~東京都第24区~』(アートディンク 1992年 オリジナルはPC-98他、Windows98版あり)を正月から遊び始めたのだが、やはり面白い。今回はせっかくなのでこの作品とその魅力を紹介したい。今後もEGGで気になるタイトルがあったら記事にするかもしれない。


https://www.amusement-center.com/project/egg/game/?product_id=1459


『トキオ』は一口で言えば、『シムシティ』型の都市開発・建設SLGだ。宇宙に浮かぶスペースコロニー、東京都第”24”区の区長になって区の行政を進めていく。区長としての裁量も始めから国家並みに大きく、最終的には区から「独立」することもできる。だが「東京都~」というのがこのゲームのミソで、実に日本らしさ溢れるシステムや設定がふんだんに盛り込まれているのが魅力なのだ。

ちなみにグラフィックも『A列車で行こう』シリーズの流れを組んだ当時としては美麗なもので、大げさだが「日本のゲームがシムシティ(初代)を超えたな」とPC-98版を遊びながらほくそ笑んでいた。その後シリーズが『2』までしか続かなかったこと、その後のアートディンク作品と『シム』シリーズの発展を辿ると、今でもやるせない気持ちになる。


話を戻すと、当然のごとく各種税率を設定できたりする。酸素税はこのゲーム世界特有なもの。スペースコロニーでは人工的に酸素を作っているので、税金がかかるのだ。


今ゲームをやり直していると、この年金設定、必ず徴収額を下げて支給額を上げ、支給開始年齢を引き下げてやる、と息巻きたくなる。


また、公共施設の建設といったこの手のゲームで基本的なコマンド以外に、区議会で条例を制定することができる。もちろん区政の状況によって、賛成・反対の結果が変わる。

画面の「公共事業による強制立ち退き」はデフォルトの区画を整理する際には絶対通したい条例なのだが(これがないとデフォルトの住居が整備できない)、最初から上手くいかないんだなコレが。条例の中には際どく感じるものもあるが、ゲーム内で意図的、差別的な表現や効果はないのでご安心を。むしろこの”お遊び感覚”がこの作品の魅力なのだ。


実はそういった遊び心は他にもある。区民に電話をかけて不満や要望を聞いたり(各コマンドで登場する局員も当然この街に住んでいる)、テレビを観て流行をつかまえたり、外出して居酒屋や定食屋の値段を見ることもできる。

店の値段を見て「最近イカが高いんだな」などと思いながらイカの輸入を増やしたりすることもできるのだ(トキオは宇宙にあるから”輸入”と”宇宙”航行・観光が重要なのね)。


それでも近年の進歩した”箱庭系”SLGと比べると、大雑把に見えたり、グラフィック含めて時代がかって見えるかもしれない。確かに近年の作品が追求しているような、緻密なグラフィックもない(当時としては画期的だったが)。また住民の一挙手一投足を追いかけて生活する様子を見たり、賄賂や政治工作といった生々しいコマンド類を実行することもできない。

だがプレーしていくにつれて、決して劇的ではなく、支持率や人口といった数値が徐々に変わっていく様にある種のリアルさを感じる時がある。実際に話したことも、会ったこともない住民が確かに生活していて、自分の”仕事”に反応していることに、実感が湧いてくるのだ。

これは現実の仕事や社会生活とのリンクを考えるとなかなか味わい深い。企業やプロジェクトの規模は様々だ。目の前にいるメンバーだけで完結し、成果が丸わかりの仕事もあれば、一度も会ったことのない相手・団体のためにサービスを提供していることもある。独立して働いている人間もいれば、大組織で働く人間もいる。それをゲームに落とし込み、表現するのは何も綺麗なグラフィックや動作環境だけの役目ではないと痛感する。


今から新たにこのゲームを、という人は正直少ないと思う。だが、昔遊んだことがある人はもう一度遊び直すと、また発見があるかもしれない。私は懐かしさよりも、当時気づかなかった、先進性を見出して感心している。


※そうそう、このゲームは4年に1回選挙があって、落選するとゲームオーバーなのね。ホントよくできてるでしょ? 最初の4年目でこれが乗り越えられなくてゲームを放棄する(した)人が割といるっぽいので、攻略法を簡単に。まずは支持率50%以上を維持して、各町の議席数を1にしておこう。これで条例の制定含めて多分乗り切れるはず。なんてことはない、当時のベーマガ(マイコンBASICマガジン)で見たのだ。間違ってたらすいません。プレイ中なので間違っていたら記事訂正します。


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