デジタルエンタテイメント断片情報誌

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戦いを知る:戦国時代編 『戦の作法』

今だに戦国時代を題材にしたゲーム、特に歴史SLGを遊ぶことがある。だが元々戦国時代に興味があったかというと、私は逆だった。『信長の野望』や『天下統一』というゲームがあって、それらを遊びたくて日本史を紐解き、とりわけ歴史小説を読み漁ったのだ。

ちなみにその頃遊んでいたのは家庭用ゲーム機で発売された版ではなく、インターネットがない、あるいは普及していない時代のパソコン版。ゲームに対する偏見は当時からさほど感じなかったが、「パソコン」に関してはすごかった。それが今や、各人が通話できるパソコンを所持しているわけだ。隔世の感である。

話が少しそれた。そんな風に歴史小説を読み漁ってゲームに臨んだが、ことに歴史SLGで戦い・合戦については簡略化されていることが多かった。兵糧や兵隊は数値での存在であり、言ってしまえば”多ければ多いほど有利”。それを前述の知識で憶えた武将たちに割り振って、物量で攻めれば大体攻略できる。最近では若干システムとして複雑・多様化しているが、歴史SLGは案外”キャラゲー”みたいなノリで遊んでいたのである。

前知識の歴史小説にしても、名だたる小説家の本でさえ、兵隊や合戦の実態が事細かに描写されることは少なかった。大名・武将を中心に描くからである。合戦では戦況と時間経過や、せいぜい行軍の様子と途中で湯漬けを食べたりする場面ばかりが物語でフィーチャーされていたように思う。映画化、TVドラマ化されても似たような印象だ。武将の心の機微や運命に翻弄される様は克明でも、現場の実態はぼんやりと知らないままだった。


そんな戦国時代の戦(いくさ)について簡便に解説した書籍がないか少し探していたのだが、『戦の作法』(株式会社G.B.)がコンパクトで、ビジュアル的にもわかりやすい。

戦国 戦(いくさ)の作法

戦国 戦(いくさ)の作法

まず戦いは矢を放ち、槍を突き合い⋯といった合戦の始まりから、武器の種類、戦場や城の解説、兵糧(食事のこと)から戦後処理まで、一連の流れが全項イラストつきで解説されている。同種の他の本と比べても、構成の良さが光る。著者に思い入れなく、どうせ同じような内容ならば、こちらを採るというものだ。

戦国時代のビジュアルなので、首をはねるといった血なまぐさい話の箇所は当然あるが、グロテスクなものではなく表現は抑えられており、資料として読み進められると思う。こういう本が、もっとゲームや歴史に熱中していた頃に、入り口として欲しかった。


ただ簡便にわかったところで、戦国時代にタイムスリップするのはやはり勘弁、かな。切腹だな。

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