デジタルエンタテイメント断片情報誌

デジタルな話題もそうでない話題も疎らに投稿

令和に『霊はあるか』

住んでる地域の暑さにやられてくだらない記事タイトルにした。もう誰かやってるか。

毎年この時期といえば、超常現象、霊の話題が旬だった頃を思い出す。書店には1コーナー設けられ、『ムー』に限らず小~高校までの学習誌に一面が割かれていた。テレビ番組でも平然と特集されていた。新聞に挟まっているチラシでは先祖の霊に苦しむ人の悩みを霊媒師が解決していた。

今もそれらは形態を変え、世に適応して生きながらえているのかもしれない。きっと超常現象や霊の意識は根強く、各人が心の奥底に抱えているのだろう。私が最近観た映画一つをとってみても、死んだ恋人が水の中だけ蘇って主人公をこの世で助けたり、家出した少年が天気を晴れにできる少女に出会ったりする。別に映画の批判じゃないですよ。念のためね。


そんな超常現象について各種アンケート調査し、過去の事例を辿り、また「霊が存在する」と仮定し論理的、科学的に検証した本がある。『霊はあるか』(著:安斎育郎 講談社ブルーバックス)である。初版は2002年。まだ多少は”心霊ブーム”の残り香があった頃のように記憶する。

導入からして心霊商法の事例をぶつけ、「あったなー」みたいな懐かしさが溢れてしまう。続けてヨーロッパ由来の「こっくりさん」がいかに日本で伝播したか、歴史とその顛末を紹介している。日本では一度明治時代にブームが終焉したはずなのに、この私すら知っているとは。やはり根強い。そういえばイギリスでモンティ・パイソンもネタにしていた気がする。どこも変わらず、とは言い過ぎか。

仏教各宗派に「霊の存在」についてアンケートを取っているのは興味深い。個人的には「霊障」「祟り」について「一切ない」と回答する各宗派の見解が「教義」のようで、宗教の意地を垣間見た気がする。

本書の冒頭で筆者が述べている通り、第三章が読み物で、「心霊写真」や「念写」の話題である。写真のトリックから、千里眼事件までカバーしている。”「写真は真を写すとは限らない」ことを肝に銘じなければなるまい。”がいい塩梅の皮肉だ。幽霊の存在を発光現象として細菌や動物を挙げて検証しているのは面白い。恨めしい表情を出すには発光バクテリアの付着に濃淡が必要だ、といったくだりは真摯さゆえに笑ってしまった。


強面で霊やその現象を糾弾するのではなく、”現代科学で分からないことはたくさんあるが、「現代科学で分かっていることもたくさんある」”、その観点を大事に、誠実に霊を考察してくれている本で、すっきりする。

実はかくいう私も食事どきに、快活で魅力的な霊と一緒に焼肉を食べながらビールでも飲みたいと思うことがある。霊じゃなくてもかまわないが。

「お前も一度死んで霊の存在を確かめるといい」と言われそうだ。

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