今年はやれ年末だ、1年の締めくくりだという気分にならないですね。静かで目に見えない不安に気が滅入ることは、ようやくなくなりましたがね。でも、これからどうなるかわかりませんよ。誰にもわかりませんよ。ニュースを慎重に受けとめつつ、巷に溢れる憶測と素人の見解と思しき情報は、UFOと心霊記事の感覚で読むのをお薦めします。何だか懐かしいな。
とまあ多少皮肉を書く余裕はできましたが、例年12/31に書いていたクラシック音楽の雑談は、今年はどうもまとまりませんでした。平時の話題だったのだなあと、つくづく実感します。残念ではありますが、やはり音楽や芸術がこのような状況を救ってくれるとは、私は思うに至りません。
ただ、音楽もそうですが、平常運転している世界にシンパシーを感じたくなるときはある。最近はその頻度が高くなってきました。
そこで今年買って良かったなと思った漫画の話で2020年を締めたいと思います。『おとぼけ課長』『おとぼけ部長代理』(著:植田まさし 芳文社)。Kindleのセールでまとめて購入。連載は追いかけておらず、”部長代理”になったのは後々雑誌のインタビューで知りました。

- 作者:植田まさし
- 発売日: 2015/05/22
- メディア: Kindle版

- 作者:植田まさし
- 発売日: 2018/10/05
- メディア: Kindle版
家族、変わらない日常、といったテーマは続けているものの、ある程度現実に即した要素は取り入れています。”古き良き”を時代に移行、対応させているわけです。テレビは当然リモコンだし、スマホも使ってます。オチにだって使ってます。

本作は何より『コボちゃん』や『かりあげクン』とも味わいが異なる、人間の性(さが)が感じられるコマが沁みる。時事的なものだけではない「これわかる」「こんな瞬間あるある」、そんな一言、一コマの表現が好きです。これが絵柄だけでは、たとえ絵柄だけ真似したとしても、立脚しえない、本作のロングヒットの底力だと思います。
本質は”悪人”ではないつもりだが、自分の行動を自虐したり自己嫌悪に陥ることが日常生活でありませんか? ちょっと嫌味や捻くれたことを言いたくなる出来事にぶつかることはありませんか? 改めてこの味は、今の世でも通用するかと思います。どの巻から読んでも、途中で読むのをやめても大丈夫なので気楽にお薦めします。

お題「#買って良かった2020 」