今年は作曲家・信時潔の没後60年、そして『海道東征』の初演から85年である。確か10年前の没後50年は盛大なイベントや企画があったように思う。私も当時記事にしていた。
それに比べれば2025年は静かな気がするが、ポツポツと話題を見かけたので、まだまだ語り継がれているのだろう。
それにしても、没後50年から10年経って『海道東征』はグッと手軽に聴けるようになった。戦後何故か秘曲と言われ、SPしかなかった時代を経て、今や音楽配信で聴けるようになったのである。Spotifyで検索するとざっと4種類はすぐに出てくる。私は趣味でディスクを収集したが、これは大変喜ばしい状況である。
楽曲成立の背景や歌詞を十分に調べて鑑賞に挑む姿勢、俗に書けば御託を並べて聴くことを否定はしない。しかし、楽譜しかない、聴けない、ではやはり広く音楽を語り継ぐに厳しいのではないか。少なくともそういう状況は一掃された。他人のことは言えないが、容易に聴けないことを好事家が嘆き騒いで喧伝して終わるよりも、楽曲が未来に、これからに託されたのだと思う。聴かれることで毀誉褒貶の波は当然あるかもしれないが、泰然自若として音楽が存在していくのである。
というわけで、少しでも聴かれて欲しいと願って以下に配信とディスクを紹介しておく。日本のクラシック音楽界隈では今だディスクが発売されており、案外知らない向きもいるかもしれないからだ。それぞれ併録曲にも趣向を凝らしているので、それを聴くのも一興だ。もちろん正攻法に『海ゆかば』を収録しているアルバムもある。やはり日本のクラシック音楽シーンにおいて、2度もアルバムを発売しているエクストン(オクタヴィア・レコード)の心意気は大いに買いたい。
また、知っている向きには今更だろうが、これらに先立って演奏・発売されていたディスクも紹介しておきたい。オーケストラ・ニッポニカの偉業の一つだと思う。
私は『海道東征』だけでなく、信時潔の楽曲の持つ透明感がとても気に入っている。端的に書けば、耳に心地よい。声楽曲はよほど好みの曲でないとそこまでのめり込まないが、信時潔についてはかなり親しんでいるつもりである。また、ピアノ曲が大変好みである。花岡千春の一連の録音は愛聴盤である。『海道東征』が大仰と言うのなら、ピアノ曲からでも良いと私は思う。できればピアノ曲も配信されればと願ってやまない。
![信時潔:交聲曲「海道東征」/我国と音楽との関係を思ひて/絃楽四部合奏 - 弦楽オーケストラ版 -[SACD-Hybrid] 信時潔:交聲曲「海道東征」/我国と音楽との関係を思ひて/絃楽四部合奏 - 弦楽オーケストラ版 -[SACD-Hybrid]](https://m.media-amazon.com/images/I/51nvUz5GR0L._SL500_.jpg)






