先月8/15(金)から公開されている映画『ChaO』の感想です。細かいネタバレはしませんが観た人向けの内容です。映画館でチラシと予告を見て観に行きました。ただ、それ以外に宣伝しているところを見た記憶がなく。ここ数年、こういったオリジナル作品を楽しみに鑑賞しているのですが、個人的にこれだという作品がほとんどないのでアタリが欲しいところです。
※画像をタッチ・クリックすると予告(YouTube)が再生できます。

映画『ChaO』の感想
ベースとなったおとぎ話『人魚姫』を知らなくても多分楽しめる。作品内での設定や世界観の消化はさほど気にならないと思う。ストーリーやキャラクターの背景を作品内の時間経過とともに明かしていく、倒叙ものパターンだからだ。『人魚姫』はそれなりに知名度があると思っているが、全く知らないという向きもあるだろうから軽く触れておく。
どこかで見たような日本の風景も出てくるが、広くアジアを舞台にしていることを凄く意識する作品だ。私は美術に大いに関心を持った。美しさだけではない、スケールの大きさに個人的な憧れがある。考えてみれば架空の世界なのだから、いわゆる西洋風、日本風だけに発想を限ることはないのだ。もちろんマーケティングの点で狙った舞台設定ということも考えられる。このような表現をある種の思想信条ありきで毛嫌いするのであれば狭量だろう。例えばアジアでこのような画作りが実際どういう評価を受けているか、そういう観点から分析でもした方が国民性や価値観の議論に余程寄与するのではないか。アニメ作品は今後このような舞台設定の作品も増えてくるのではないかと思うので注目していきたい。
キャラクターデザインは一部奇を衒いすぎたか。ヒロインや人魚のデザインにはセンスを感じるが、その他デフォルメしたキャラクターには面白みを感じなかった。インパクトを狙って没個性に陥った感がある。ギャグのくどさも同様。ただ繰り返せば面白いというものでもないと思う。またアジア作品でみかける糞尿系の汚い表現が、果たして今の日本でヒットを狙うにどうか、などと要らぬ思案をしてしまった。キャストの演技は新鮮に感じた。ヒロインの演技は擦れていない感じを出すのが上手い。年相応の演じ分けもよかった。良い配役だと思う。
肝心のストーリーについては鑑賞後の余韻は悪くないが、こちらは雑な王道が過ぎている。大まかには、少年時代の出来事が現在に繋がって⋯というものだ。もう少し作中で意外性のある伏線や想像を張り巡らせるような展開が欲しかった。もはや日本で公開されるこの手のアニメ映画は、ハッピーエンドに舵を切るのが常套手段、という強迫観念すら感じてしまった。とにかくハッピーエンドでないとリピーターが来ないと市場調査されているようだ。世知辛い世相で景気の良い、希望が湧くような作品を何回も観たい。その心情は想像するに易い。だが、ここ数年そのような作品で面白いと感じて世間的にも足跡を残すような作品に、残念ながら私はほとんど出会っていない。こうやって感想を書いても、公開の規模が拡大されることもなく、盛り上がっても極々一部で、後々配信・ディスク化されても再評価されていない気がする。
映画に限らず、アニメや各種作品の話題で、本筋の感想や考察そっちのけで元ネタや他作品の鑑賞や比較に執着したり、終始するような発信をしばし見かける。だが興味深い作品なら、そのような楽しみ方は後から発現しても遅くはないはずだ。特にこのような全国規模で公開するような作品であれば、まずは単体の出来栄えのレベルが問われるのではないか。そこで疑問符がついて話が終わるのであれば、作品理解の深度云々以前に、それまでの作品ということになる。面白い面白くないを言葉遊びまで駆使して発信して盛り上がったとしても一過性に過ぎないし、そういう刹那的な承認欲求が見え隠れする発信は何だかんだ風化するだろう。少し話がそれたが、本作は本編そのものから滲み出てくるような楽しみや盛り上がりには残念ながら至らなかった。