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『ガールズ&パンツァー劇場版』10周年記念上映~バリエーションちょい増し作戦です!~の感想 10周年に寄せて

『最終章』第5話が2026年公開決定とのことでティザービジュアルも公開されているガルパンですが、11/21より『ガールズ&パンツァー劇場版』が10周年の記念上映をしていたので観てきました。4K上映です。4K ULTRA HD Blu-ray(特装限定版)の発売も控えているようです。

※画像をタッチ・クリックすると動画(YouTube)が再生できます。

『劇場版』公開後の『最終章』制作決定を中心として、何だかんだ話題の絶えないガルパン。もちろん感慨深くはあるのですが、どうも現状『最終章』の公開スケジュールにだいぶ興を削がれています。『最終章』が完結していた後にこの10周年を迎えていたら、また違った印象を抱いていたことでしょう。あるいは『最終章』からさらに新たな展開があったやもしれません。

とは言え『最終章』も大詰めと言った様子(多分)で、どうせならシリーズを通じた『最終章』とリンクした雑談や、今改めて映画館で鑑賞した感想を残しておきたいと思います。記事はネタバレ有です。TV版や『最終章』第4話まで鑑賞済前提です。実は過去何度か『劇場版』の感想を書きましたが、初日はとにかく映像に圧倒されたことは憶えています。ただ、話の本筋やキャラクターの活かし方については色々と求めたいものがあり、その印象は今もさほど薄れてはいません。

『ガールズ&パンツァー劇場版』10周年記念上映~バリエーションちょい増し作戦です!~の感想

久々に映画館で鑑賞すると、冒頭のロングショットからして、やはり映像の古さを感じてしまう。有り体に書くと、画面が暗い。10年前の作品ということを思い知らされてしまう。

それでもエキシビションマッチでは、色々とキャラクターや大洗の町並みを登場させようと苦心しているのだなと新鮮に感じた。当時観たときよりも、キャラクター同士がよく会話しているように感じる。これは『最終章』の戦車戦がより息をつかせぬ展開になった証左かと思う。まさか『最終章』になって、『劇場版』よりも会話シーンが欠乏するとは想像していなかった。

当時そこまで目を引かなかった映像上の小ネタやキャラクターにも目が行く。西隊長の車輌の乗員が可愛いかったり、大浴場でカットが切り替わってもカチューシャのために数を数えているクラーラが微笑ましい。既に話題になっている内容ばかりだろうが、当時はガルパンという作品に前のめりすぎて、こういう楽しみを忘れていたのかもしれない。

とはいえ、メインのストーリーに関しては今でも、当時劇場に足を運んで不完全燃焼だったことを思い出してしまう。これだけは何回鑑賞しようと同じである。せっかく家族や故郷まで描くのなら、役人や大学選抜といった単なる敵役よりも、大洗女子優勝の立役者・みほを向こうに回す展開など観てみたかった。再び廃校の危機、は残念ながら観ている方に盛り上がりのない予定調和の印象しか与えない。

ただ、後年の『最終章』の出来を見るに、本作で本筋のストーリーよりも戦車戦の映像の魅力に舵を切ったのはある種正解だったのかなとも思う。これだけ豊富なキャラクター・チームを活かした戦記のような筋立ては、色々と厳しかったのだろう。幸か不幸か、本作は映像面で多くの観客を惹きつけ新規のファンも呼び込んだようで、制作側・興行主としてもそのような映像を望むのは必然である。私などは四六時中戦車が動いていなくとも、ここぞの見せ場で躍動すれば十分と考えていたので、作品の方向性としては惜しい気がした。余談だが実写でそういう映画を後年になって観てしまい、久々にその思いを新たにしてしまった。

『最終章』を踏まえて鑑賞して改めて思うのは、やはりみほは杏(会長)との結びつきの方が強いのだな、という点である。家族でもなく、あんこうチームの面々でもない。そもそも大洗女子でみほが戦車道を始めるきっかけも杏である。これも今更の話題だろうが、シリーズを通じた核は、みほと杏のストーリー、なのかもしれない。この二人だけは大事なところで言葉を交わし、特別にシーンが設けられてる。

そう考えると、『最終章』第4話で事前に杏がみほと話をつけていたことにも納得せざるを得ない。もっとも『最終章』第4話は、そういう流れで梓がみほや杏と言葉をかわし、交流する描写を前の話までに仕込んでおいて欲しかったのに、唐突な隊長抜擢の格好になったのがつくづく残念である。梓に目をかけるみほ、梓に先輩風を吹かせるみほ、梓を呼び捨てにするみほ、それをあんこうチームの面々にからかわれるみほ⋯妄想は尽きないが、まだ残っている『最終章』本編に僅かばかり期待しよう。


後半の殲滅戦に関して、まだこの頃は車内の描写を入れようという演出の意志を感じる。公開当時はこれでも物足りなかったのだが、残念だが『最終章』と比較すると作品に丁寧さがまだまだ残っている。攻撃を受けた時、敵に陣を突破された時、退却する時⋯少しでもキャラクターのそういう画が入ると臨場感が増すというものだ。4D上映を腐すものでは決してないが、迫力や緊張感は本当に体を揺さぶったりしなくとも、音と映像で脳に突き刺されば侮れないものだ。

公開当時何気なく観ていたロングショットや会場を俯瞰した構図も出色の出来映えである。『最終章』では徒にチマチマした画が多いように思うが、『劇場版』ではカットや絵面が良く気にならない。

この『劇場版』の見せ方と同様に、映像技術は見劣りしても演出やカットで今観ても完成度が高いのがOVA『これが本当のアンツィオ戦です!』である。しかもOVAはメインのストーリーも良い。カバさんチームにスポットを当てつつ、あんこうチームはもちろん他のチームや対戦校も存在感抜群である。これはアンツィオ高校の人気に貢献したと思う。私はこのOVAがあったので『劇場版』に期待し、その後の『最終章』にも望みを託したのだが、今のところあてが外れている。『最終章』も第1話、第2話まではワクワクしたのだが、以降が振るわない。

『劇場版』での描写が良い方向に作用したのが知波単学園である。『劇場版』ではあまりにもコメディリリーフだったが、おかげで『最終章』第2話で同じような役回りかと思いきや大暴れである。私など知波単学園と聞いただけで冷めていたのに、すっかりファンになってしまった。『最終章』のおかげで『劇場版』登場場面が感慨深くなる数少ない学校ではないだろうか。

ラストの愛里寿対みほ・まほは、ここに至るストーリーに不満は残るものの、映像面としてはもうこれ以上ないのではないか。今後もし、同系統で単騎の戦車同士の戦闘を描いても正攻法でなく、奇を衒うことになると思う。私は『劇場版』公開当時の初鑑賞では「殲滅戦で、実はみほ・まほ以外に白旗が上がっていない車輌が大学選抜より1つ多く残ってました」みたいなオチを予想しながら観ていた。

『最終章』では、第5話、第6話が聖グロリアーナとの試合のみとして、聖グロリアーナのフラッグ車はティザービジュアルを見る限りチャーチルのようである。なので、聖グロリアーナとの決着は一騎打ちではなく、何か作戦なり罠に嵌める気がする。元はチャーチル相手に決めたかったとは言え、まさかTV版最終話と同じ戦法で決着にはしないと思うが⋯。今のところ『最終章』でああいう試合での伏線がないので、可能性がなくはないのが、やや不安である。


当時観て感じた不満が完全に消え去ることはなかったが、満を持して作られたという趣向が凝らされていて、改めて感銘を受けた。面白さの本質は技術的なことだけではないことを、良くも悪くも感じた。作品としてのまとまりも良く、制作筋のことは全く知らないが、『最終章』も映画三部作くらいで公開していればとっくに完結していたのではないか、と邪推をしたくなる。久々のガルパンの余韻に、またスピンオフ作品でも足がかりに興味を再燃させたいと思う。


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