デジタルエンタテイメント断片情報誌

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生誕でも没後でもショスタコーヴィチ その1 最近購入したCD雑談

今年はコンサートに行ってどうこう、という年ではなかった。CDを買いに行くことも一時期ままならなかった。一方で、ネット通販の、サブスクリプションの力をまざまざと感じる年であった。私も何かにつけて「配信サービスが便利だから使え」と書いてきたが、クラシック音楽のファンでも利用者が増えていることを願う。

とは言っても、ショスタコーヴィチの音楽である。まだまだサブスクリプション等々で聴けない音源は根強よく残っている。ただ、それらをコレクション自慢がてら「この演奏はまだCD(レコード)でしか聴けないが~見つけたら入手すべきだ」などと紹介する気は毛頭ない。いかんいかん、また下衆の勘繰りで余計なことを書いてしまった。ともかく、ファンとして気になることは確かだ。便利なものはとことん利用し、良い演奏に出会うのに糸目はつけたくない。そこでディスクを購入する。今回はそんなディスク雑談。

※前回の記事はこちら:

最近購入したCDから

私も聴きに行った、ロジェストヴェンスキーが読売日本交響楽団を指揮したライブ録音(2016年9月26日)がAltusから例によってCDで発売。CD・レコードでの音源発売は結構だが、同じ音源を何回もリマスタして発売するので買うタイミングを見極めたくなるレーベル。

テンポからして悠然とした解釈かと思いきや、厳格な演奏。ホールの音響や録音状態に惑わされない解釈。特に第2楽章まではやっぱり良い。録音状態や演奏された時代を紐解き、過去の音源を聴く楽しみは否定しない。だが、今のオーケストラ、録音でもちゃんと音楽の振幅を感じることができると再認した。

こうして聴くと、当日の印象より後半楽章もダレていない気がする。⋯と思ったが、やはり第4楽章など表現の意図より柔らかく、穏当になってしまったのかな。演奏や曲が崩壊しているわけではない。ロジェストヴェンスキーはそのうち読売日本交響楽団との演奏が順次CD化されそう。そうそう、この日のピアノ協奏曲第1番(ピアノ:ポストニコワ)が素晴らしかったのでそちらもお願いしたい。ピアノの音色が深いのに躍動感が凄まじかった。


バルシャイも、もう没後10年。クラシック音楽の話題って生誕と没後ばっかりね。記事タイトル回収。それはさておき、バルシャイは世界各地で指揮活動しており、当然珍しい音源もそこに残されていたりする。その中では、バンクーバー交響楽団との交響曲第1番が素晴らしい(CBC Enterprises SMCD5074)。オーケストラからとても澄んだ音色を引き出していて、第1番ではなく、中期の室内楽曲のような清廉な佇まいだ。全集の録音より良い。久々にこれは聴ける、と思った第1番だった。ただ、その流れで期待した第9番はオーケストラが硬くて表情に乏しい。うまくいかないものなのだろう。


アリーナ・イブラギモヴァが独奏のヴァイオリン協奏曲集(Hyperion)はどうだったか。指揮はユロフスキ、ロシア国立交響楽団の演奏。第1番の第4楽章冒頭をヴァイオリン独奏が演奏する稿で演奏・録音。それだけで注目したファンも少なくないと思う。実演ではヴァディム・レーピンが演奏していたやつね。これがまだSpotify辺りで配信されておらず(2020/12時点)、早くしてよというところだが、CDを買ってしまった。

(※2023/9追記:Hyperionが配信開始したのでリンク。やったね。まず試聴できます)

それで演奏はどうなのというわけだが、実は私、第1番のこの稿あまり好きじゃないのね。あの箇所の音響は、オーケストラの妙味は、やはり最終稿に軍配を上げたい。ドクシツェルの編曲したピアノ協奏曲第1番を聴いたときのような、違和感を抱いてしまう。あれはトランペットが目立ち過ぎてピアノとオーケストラの面白さが失われてしまい、音楽のバランスを崩している。もちろん人の好みは自由だが、ちょっとショスタコーヴィチの魅力が削げてしまったように感じてしまうのだ。このCDの第1番も同様の印象だ。オイストラフとのエピソードを経て生まれた形だとしても、完成度は最終稿だと思う。あと第1番は、オーケストラがもう少し独奏者を覆い尽くすような演奏をしてくれたら。そこが物足りなかった。ショスタコーヴィチの協奏曲は、ときにオーケストラが独奏者を置いてきぼりにするようなノリが私は欲しい。

その点だと、第2番の方が面白い。独奏とオーケストラがこの曲のソリスティックな魅力を互いに表現していて、音楽や音を聴き分ける楽しさがある。こちらのオーケストラは好調。良い第2番を録音してくれたな、と思う。何かと再発されまくってるオイストラフが独奏のメロディア音源だけでは食傷気味だった。


パッと思いついたところでこんなものか。やっぱりCDは買ってないな。サブスクでまず聴いちゃうからな。次はレコードの話でもしよう。ショスタコーヴィチのレコードは珍しくても手頃だったりするから。思ったより人気ないんだよなあ。ではまたいつか。

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