唐突だが、学生時分までは落語に全く興味がなかった。テレビで観てもサッパリ面白さがわからなかった。ありがちな話だと思うが、TV番組『笑点』の大喜利を観て「落語ってあんなものか」と勘違いしていた。そのせいで、本当の落語を知って余計に「つまらない」と感じてしまった。実際には面白味を理解していなかっただけなのだが。
その頃の私はもっぱらパソコン、PCゲームに興味があった。この遊びで将来メシが食えたらいいな、などと考えることもしばしばだった。
そのうち、有名人・著名人とされる人物のエッセイ・コラムを読んでいくと、落語に関する例え話が多く出てくることに気がついた。落語を知らないから例え話の意味がわからない。そう思って、落語のことを調べだして、寄席(よせ)にも行くようになった。そこでようやく落語に開眼した。
何の話だと思われるかもしれないが、そうして落語に興味を持ち始めて、思い出した人物がいる。三遊亭円丈という落語家である。PCゲーム誌『ポプコム』で連載を持っており、私が読んでいた『ログイン』でも度々話題になっていた。「泣ける落語をつくれるのはこの人だけ」みたいな評だったか。
そんな円丈師匠が開発に携わったPCゲームが、プロジェクトEGGで配信されている。知っている向きには今更だろうが、日本で発売されたPC・家庭用ゲーム機の作品を中心に、1990年代くらいまでのいわゆる”レトロゲー”を復刻・配信して遊べるサービスだ。
ゲームタイトルは『サバッシュ』(1988)、『サバッシュ2』(1993)の2作である。どちらもファンタジーRPG。インターネットが一般的でなかった当時をして、自由度と難易度の高いゲームという評判が定着していたと思う。一方でファンのやりこみ度も相当で、雑誌の攻略記事で最短攻略を競い合っている様子に正直ついていけなかった。そんなゲームを今一度プレーする機会を得たので、追々遊びたいと思う。
なにせ今、この両ゲーム絡みで遊んでいる作品があるので⋯。
サバッシュ | プロジェクトEGG | レトロゲーム配信サイト
サバッシュⅡ | プロジェクトEGG | レトロゲーム配信サイト
そんなPCゲームと落語の接点や、寄席(よせ)や噺(はなし)のこと、東西の落語家、落語(界)の歴史⋯そんなことを少しかじって、円丈師匠の落語を聴きに行ったりしていたところに、一冊の本に目が行った。『落語家の通信簿』(祥伝社新書)である。
- 作者:三遊亭 円丈
- 発売日: 2013/10/02
- メディア: 新書
そしたらこれが驚いた。タイトル通り、現役の落語家による落語家評なのである。芸能人なんかで考えてみて欲しい。”共演NG”みたいなウワサは聞くにしても、現役中に「〇〇のここが嫌」「あの芸はつまらない」みたいなことを書くだろうか。
本書は著者・円丈の大いなる主観を以て、古今東西の落語家を評価しているのである。著者のエピソード披露や好みの芸風もわかって面白い。気鋭の落語家も網羅しており、著者が今どきの落語家をどう聴いているのかもわかる。遅ればせながら、「円丈師匠ってこんなこと考えてたんだ」と人となりを知った。
⋯実は、最近朝の顔になったある落語家をぶった斬っていて、それで思い出しました。そこだけ拾い読みでも、ニヤリとするかも。