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『ガールズ&パンツァー最終章』第4話の感想 現時点の総括として

劇場での公開以降、あっという間に4D上映、Blu-rayが発売された『ガールズ&パンツァー最終章』第4話。Blu-rayは最初からこのくらいのペースで発売してくれれば⋯。そういえば生コマフィルムはアンツィオ横並びのシーンでした。「パスタのないソース」の場面。ガルパンで人気どころがちゃんと映っているコマ引いたの初めてかも。

今回は『最終章』第4話の区切りの私的総括記事です。本編や既に公式サイトで発表されているキャラクターの情報から、第4話の感想や残り2話の展望を。記事は鑑賞済み、ネタバレ前提です。

※第1話~第3話の総括記事はコチラ:


『最終章』第4話 ストーリー概要

準決勝序盤であんこうチームを失うも、大洗女子学園は前生徒会長・杏の呼びかけによって態勢の立て直しを図ることに。塹壕作りでカモフラージュしつつ、地下を掘り進めて地上に抜ける作戦を実行する。対する継続高校のミカもこれを察知し動くが、大洗女子は窮地を脱することに成功。途中カメさんチームが離脱するものの、新たな隊長に指名されたウサギさんチーム・梓始め大洗女子のメンバーが奮戦し、ついに継続のスナイパー・ヨウコの車輛を仕留める。さらにミカに迫る大洗女子だったが、試合会場の勝手知ったる継続は進行先をフリーライドの”スキー”に誘導する。途中の雪崩にも怯まず大洗女子は互角の勝負を続けるが、ついにフラッグ車のみに。静寂の中、ゆっくりと間を詰めていくミカとBT-42。しかし腹を括ったアリクイさんチームの”筋肉”パワーがミカの目を欺く。BT-42に白旗が上がり、大洗女子が勝利した。

準決勝他校試合は黒森峰女学園対聖グロリアーナ女学院。押し込まれつつも五分に持っていく黒森峰と、落ち着いた試合運びで譲らない聖グロリアーナ。将来を見据えた戦いと自分だけの戦車道に賭ける戦いの激突は、互いに体制を整えた上で総力戦に。だがそこには聖グロリアーナの車輛がもう一輛潜んでいた⋯。センチュリオンが僅かな差で黒森峰のフラッグ車を仕留める。聖グロリアーナは愛里寿を受け入れていたのだ。大洗女子の決勝戦の相手は聖グロリアーナ女学院となった。

『最終章』第4話 新要素とその感想

戦評・3回戦の対戦校:継続高校

第3話であんこうチームがわかりやすくリタイアして、さすがにこの流れで第4話序盤の展開に驚くには至らず。ここまでミエミエの展開でありながら、畳み掛けられない公開時期が⋯。本編外の話とはいえ。4D上映やBlu-ray発売までの期間が短くなったものの、果たして今後の公開はどうなるのでしょうか。現時点(2025年5月)では相変わらずのペースのようですが。

ここにきて杏がチームをまとめるのに一肌脱ぎます。シリーズで一貫してキャラクターの立ち位置や関係性はとことん崩したくないのですね。見せ場といえば聞こえはよいですが、隊長・河嶋桃の成長を感じる場面にできたのでは、と思えてしまうのが口惜しい。もっともそれを描けるだけの伏線が『最終章』第1話~第3話にあったかというと、厳しいところです。その上都合よく「西住ちゃんと話はできてる」といった調子の台詞を突っ込んでストーリーが進むのであれば、伏線も何もあったものではないでしょう。

これは梓に白羽の矢が立つシーンも同様です。この流れが来るまでに、杏や各メンバーの梓に対する評価や想いをもう少し日常場面で散りばめていたらと思うと、『最終章』は本当に惜しいです。梓の成長・変化も、露骨な位伏線があってもよかったと思います。観たかったものを観たはずなのに、どこか満たされない、個人的にそんな気分です。この点は、ガルパンという作品の最大の弱点ではないでしょうか。『最終章』で成長やら卒業をテーマに掲げている割に、大洗女子の生徒同士の交流や新たな一面の描写は希薄だったとつくづく感じます。チームに1~3年まで満遍なく揃えているので、たとえありきたりな画になったとしても、そういうエピソードを挟んで欲しかったです。そうすれば今頃、万感の思いで次期隊長・澤梓の余韻に浸ることができたはずなので残念無念です。後々の話で回想したりエピソード補完や種明かしをする手法もありますが、正直期待薄です。群像劇と戦車戦のバランスを取るにしても、残りの話数が少なくなりすぎました。

演出面からの話であれば、ニューヒーロー誕生はベタでも音楽で盛り上げるのを期待していましたが、そんなことはなく平常運転でした。本シリーズは劇中楽曲も魅力の一つなだけに、梓隊長の専用テーマ位用意して第4話だけでも破格の扱いにするのかと思ったのですが、そこまではしないよ、ということですね。みほなんて、今更こんなことでキャラやポジションが食われる造形でもないでしょうに⋯。そういえば、みほは今話も収支動揺する様子すら見せませんでした。ついでに梓の隊長ぶりに関しても、特に感慨深げでもなさそうでした。もっとも、本編で関係を築いていたかもわからないので、今更どうこう書いてもしょうがないでしょう。離脱したあんこうチームの関わり方も、何とも淋しい。直接会話する描写を入れなくとも、あんこうチームの語る各チーム、というだけでメンバーとの関係性や個性、卒業というテーマまでも表現できる場面となり得ただけに、色々と逸した気がしてなりません。

継続高校との試合に話を戻すと、前半の攻防は素晴らしかったです。ここは原点回帰、と書くと大袈裟でしょうか。作戦に応じた戦車の動きをじっくりと描いていて、継続高校の謎のスナイパーを警戒するという緊張感がその進行を一層引き立てていると思います。スピード感一辺倒でもなく、映像面での緩急が良いです。音楽や音も過剰な演出を入れず、戦車の駆動音や冬山の空気を感じるゆったりとした場面づくりで、久々に気分が高まりました。ヨウコの3突を仕留めるまでは、取っ組み合いのような一進一退で、スパッと決着がつかなかったのもポイント高いです。欲を言えば最後までこのスタンスを貫いて欲しかったです。

前半は大洗女子の各チームのやり取りも、とても味わい深かった。この点は、「あんこうチーム抜き」が作品に良く作用しています。今話で一番感動したのは、カモさんチームのそど子がさり気なくも率先して動くサマかもしれません。やれ先輩だと言わずとも、3年のそど子も卒業ですからね。そういえば『最終章』第1話からずっと活躍していました。期するものがあるのかな、と思い浮かんだ瞬間に、キャラの依怙贔屓などとは感じなくなります。こういう風に描写できる技量は確かなのですから、他メンバーも今話であんこうチームが離脱する前から色々と作中で関係描写を仕込んでおいて欲しかったと重ね重ね思います。

園 みどり子(そど子)|ガールズ&パンツァー最終章 公式サイト

さらにそう言いたくなるのが、継続高校の生徒同士の関係性。ヨウコの「融通がきかない」という性格を、ギャグではなく後輩らしい未熟さに昇華していて感心しました。ユリのデザインが発表されたとき、元ネタがあるにせよ、正直スベった感がありましたが、後輩を適宜指導しつつ才能の芽は摘まないスタンスのキャラクターには好感度大です。知波単学園もそうでしたが、どうも他校のキャラクターの方が血が通っている感があります。

試合の最後の最後でアリクイさんチームの”力技”を見抜けず、つい「フフッ」と笑ってしまうミカも人間味があって良い。冷静で何を考えているかわからない、という性格付けだけでなく、こういう可愛げがキャラクターの魅力に寄与するのではないでしょうか。試合から離脱しても相変わらず超然とした佇まいのみほを見せられると尚の事です。繰り返しになりますが、試合に参加しない状況がメンバー全員の新たな側面を描くに絶好の機会にもなると期待していたのに、あんこうチームはとことん蚊帳の外にされており、物語として、演出として、やはり巧くないなと感じました。


後半の雪山を滑降しながらの戦闘については短めに。新たな局面や戦いの妙味、今後の戦いを占う場面といった解釈や読みを入れたくなるような内容では正直なかったです。アトラクション要素の集客に舵を取った本作ならではの、用意された見せ場をとにかく浴びせられているようでした。MX4Dも体感しましたが、このスピード感、ジェットコースター風味にかつてほどテンションは上がらなかったです。そういう面白さの頂点には『劇場版』以降、遠ざかっているというのが実感です。これならば、前半のような近接戦闘に終始しても継続戦は臨場感があって面白かった気がします。制作側の考える映像面の魅力を全面に出した結果が『最終章』第4話ということであれば、履帯が外れやすいといった各車輌の特色や蘊蓄の披露も、もはや過去のものなのでしょう。もっとも、装甲の設定だけは勝敗に繋がるのでまだ完全に捨ててはいないようですが。⋯いや、マーク4戦車の活躍は見た目からの想像通りでしたが、結構頑丈でしたね。

その他、今回は軽く2点ほど別トピックに:

河嶋桃の今後

『最終章』のラストに向けて、今後の活躍なり、注目ポイントなり、今だに伏線らしいものがない。今回の感想も含め『最終章』の話題でさんざ採り上げていますが、果たして一体どういう扱いにしたいのか、に尽きます。もちろん家庭の事情は見せたし、戦車道の合間も勉強している様子はありました。それにしても、試合中にここまでキャラクターを動かさない(動かせない)、ドラマを入れないとは。

振り返ると『劇場版』にしても、終始美味しいところを会長(杏)に持って行かれた上、大洗女子が追い詰められた状況で彼女なりに奮起している様子を描いたにもかかわらず、ギャグで片づけられた感がありました。まだ残り2話あるとは言え、このままだとガルパンシリーズで顕著な「キャラの多面的な魅力は引き出さず、立ち位置も変えない」の犠牲者で終わってしまいそうです。

第3話の感想でも書きましたが、大学に受かる受からないの結末は、実はどちらでもよいのですね。そこに至る過程に、とりわけ戦車道の中で、河嶋桃と言うキャラクターの新たな魅力が開花することを期待しているわけですから。まだ作品が完結したわけではないので、微かに期待は残したいと思います。

継続高校の新車輌

大方の予想通りの3突に加え、KV-1も登場。こちらは重戦車の面目躍如という印象の働きぶりでした。完全に目新しい戦車がT-26だけでは、さすがに露骨な戦力差かと思います。鹵獲ネタも悪ノリが過ぎず、このくらいなら許容範囲です。そういえば試合終了直後にカチューシャがミカに抗議する一コマでも入るかと思いましたが、そういう余韻を案外残してくれないのがガルパン、と半ば諦めています。

戦評:3回戦の各校試合結果

キャラクターの背景や伏線の楽しみが少ないガルパンで貴重なTV版からの因縁、第3話までのOP、『最終章』になり度々戦車道について葛藤する姿からの戦車道を掴んだ瞬間⋯。過去の感想で、ここまでお膳立てがあれば『最終章』でも決勝はエリカ率いる黒森峰か、と予想しましたが外れました。あと2話残っているとは言え、決勝戦の相手は大洗女子に負けなしの聖グロリアーナのようです。同じ画作りは制作側も飽きが来るのかな、などと考えたりもしましたが、それ抜きにしても、もう少し「これは聖グロリアーナあるぞ」と深読みしたくなる空気を劇中で感じたかったです。

私も本編の感想外では「決勝は聖グロリアーナかな」と考えたことはあります。今思えば黒森峰に対して若干贔屓目があったかもしれません。ただ、これまでの『最終章』のように単に勝ち進んで可能性がある、だけでは展開の妙味としてはやはり今一つでした。SNSでバズるのを狙ったような、分かりやすい対比や対立構造の画や展開は敢えて避けていたとしても、『最終章』を通じた注目ポイントなりは各話に散りばめて欲しかったと思います。愛里寿参戦も、サプライズというより予定調和の印象が勝りました。車輌が引き続きセンチュリオンなのも目新しさに欠けました。

もっとも、それなら黒森峰は十分時間を割いて描かれてきたかというと、正直そういうわけでもなく⋯。今話の試合場面冒頭でグビグビやる様子も付け焼き刃の個性づけ、というのが第一感でした。聖グロリアーナの新キャラクターも同様で、現時点で個性を楽しむまでには至っていません。冷静だけど優雅なようであまり優雅でない、むしろ豪胆という一貫した聖グロリアーナの気風や戦いぶりを脅かす展開に僅かばかり期待したいと思います。

『最終章』 今後の展開予想

対聖グロリアーナ女学院の勝敗

第5話で試合をするのか確定ではないですが、決勝戦の相手としての期待値は、結構冷めているかもしれません。だって愛里寿の車輌だけで大方片付けることができるんでしょ? 『劇場版』を観る限り。あんこうチームやまほの車輌にも言えそうですが⋯。その辺り、強さとライバル関係の描写だけでゴリ押しされるとシラけるので、そうならないことを願いたいです。

何より愛里寿の車輌は、愛里寿だけでなく、操縦手や装填手も凄腕のはずです。車内だけでなく、他の車輌とのコンビネーションを描く余地もあるでしょう。愛里寿だけ個人の技量のような描き方に回帰するのは悪手だし、『劇場版』だけで十分な気がします。ガルパンという作品に魅せられたきっかけである、戦車(戦)の独特な魅力をもう一度丁寧に描いてくれたら、個人的に『劇場版』の二の舞いは避けられると考えています。その上で登場するキャラクターに、完全無欠でない、どこか愛着の湧く人間味を感じることができたら最高です。もはや勝敗はどちらでも構いません。

展開でもう一つ書くと、最後の試合は一騎打ちで大技を仕掛ける、単騎でフラッグ車を仕留めて決着、といったパターンもせめて外してもらいたいころ。⋯「勝敗はどちらでも構いません」などと書いたそばから大洗女子の優勝する前提で書いてしまった。継続高校と同じパターンになるし、好きなシーンでもないのでヒネリが欲しいですが、『劇場版』よろしく愛里寿が歌い出して進撃する展開は今のガルパンならもう一回やりそうかな。とにかく、『最終章』の決着場面は色々と苦心の跡が見えますが、繰り返し観たくなる名場面を望みたいです。今のところ、『最終章』本編で最終決戦に繋がる戦法や技の伏線が貼られている様子がないので(『最終章』はこういう点が本当に残念ですが)、第5話以降を観ての楽しみと割り切ります。

そもそもお互い一騎当千の車輌を有しており、序盤でみほか愛里寿が白旗、の展開は流石にやらないと踏んで、ならば新鮮な攻防が観たいものです。そういえば、次期隊長と召される生徒がいるのも両校の共通点でしょうか。彼女たちの影が薄くならないか、少し危惧しています。

最後に車輌はコメット辺りが新登場するのでは、と軽く予想しておきます。別に大洗女子側で乗換があってもよいのですがね。今回力尽きたマーク4戦車なんて、スペック的に使い所・見せ場がいい加減難しいでしょう。と思いましたが、イギリスゆかりでネタにした方が美味しい、と判断されるかも。決勝の伏線としてのマーク4登場か、というのを本編未完の状況で騒ぐのは時期尚早かな。

雑談:『最終章』こんなシーン・展開観てみたい その4

最後は過去の総括記事同様、私の妄言・独りよがりで記事を締めます。

・このまま無限軌道杯の話がメインで完結するのか

第3話の感想と似たような与太話になってしまった。ここまで淀みなく試合を消化している無限軌道杯ですが、果たしてこのまま決勝戦で、『最終章』は終わりなのでしょうか。ちゃぶ台返しが待っているとしたらどうでしょう。突然の無限軌道杯中止とか。何だかんだで聖グロリアーナは「大洗女子に負けなし」で作品を締めくくるのも、それはそれで立ち位置として美味しいですよね。

かねてより「トーナメント(無限軌道杯)から離れた展開が観たい」と書いていましたが、第5話の公開時期も現時点(2025年5月)で未定な今、これはもしや第6話とセットの新たな展開で(ようやく)畳み掛けるためでは? まだこんなことを書いているから「ファンはいつまでも待ってくれている」と勘違いされるのでしょうかね。

ともかく、最後の試合は作品の総決算として敗退した各校のメンバーも再度参加して派手に試合するのではないでしょうか。まほも留学から帰国して緊急参加でいいよ。どうせならすごく弱い車輌に搭乗してもらいたい。いかにもか、マイナーな車輛で。

登場校の生徒シャッフルで一つの車輌に乗り込むのもいいですね。特に車長や隊長やっている生徒がどの役割やるのか、楽しみになってきます。人間関係も要注目です。これまで本編で見られなかった相性の良さや意外と後輩思いで優しい面を見せるあのキャラクターといったものから、先輩方に囲まれてタジタジ(ダージリン様ではない)のオレンジペコや梓まで、なかなか乙なものではないでしょうか。こういう願望丸出しにすると大体当たらないですね。


どうやらスピンオフ作品の劇場公開が先に決まったようですが、第5話はどうなるのでしょうか。展開も公開時期も。

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