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邦画と特撮、アニメに寄せて 映画『シン・仮面ライダー』の感想

ネタバレありです。3/17公開の映画『シン・仮面ライダー』を観てきたので感想です(公式サイト)。事細かにストーリーを書いたりはしませんが、観た人向けの内容かと思います。


※画像をタッチ・クリックするとプロモーション映像 A(YouTube)が再生できます。

シン・仮面ライダー』を観る前に

感想の前に、私がどの位昭和の仮面ライダーが好きか、ということを簡単に。所謂TV放映は再放送で観ました。それも『V3』くらいまでです。最近だと無料配信の機会に再鑑賞しました。シーンを見て、「ああ、あったなそういうの」と思い出す程度のファンです。漫画版は読んだことがないです。今回の映画前に予習したり、日頃から鑑賞しているわけではありません。ただ子供の頃、切り立った場所や河川敷でライダーごっこはしました。そういう記憶とともに思い返す作品です。

今回は普段通り、他の一般映画作品と同じスタンスで鑑賞したつもりです。『シン・ウルトラマン』の感想と同様、まずは日本を代表するヒーローを題材にした最新映画としてどうだったのか。その後は、ぬるいファンの雑談で締めたいと思います。

ちなみに私は『ゴジラ』や『ウルトラマン』といった、東宝・円谷系の方が特撮は好きです。何となく、アニメファンだとやはり東映特撮が人気のような気がしますが。

シン・仮面ライダー』の感想

まず普段は感想で優先させないのだが、冒頭からCGと思しき処理のクオリティの低さに少々萎えてしまった。人間サイズ・等身大が中心の映画なので、車でも木でも、比較しやすい対象物が多い。合成はもう少し凝って欲しかった。バイクによる逃走劇は観やすかったが、手に汗握るという画では決してない。そのせいもあって、CGが映像から浮いているなとすぐ感じた。特撮の味わい、にしては中途半端だと思う。むしろ大げさだが、日本映画の弱点は相変わらず、という印象に落ち着く。

さらに序盤で、駆け足気味に舞台背景から用語、登場人物の気質まで台詞でまくしたてる構成はどうにかならなかったのか。劇中で行動で表したり、透けてくる構成になぜしないのか。できないのか。「今回の仮面ライダーはこんな設定で、登場人物はこんな風にしたんです! したいんです! わかった?」の圧に嘆息した。TV放映版を始めとした原作を知らない層への配慮があるのかもしれないが、もう少し自然な導入で一本立ちした映画作りが見たかった。これだけ制作陣を含めた宣伝をしているので他作品の名前を出すが、『シン・ウルトラマン』も開幕から同様の印象を受け、そろそろ唐突感に気がついて欲しい。

今作では序盤から台詞を中心とした演出や場面転換が芳しくなく、度々気になった。台詞回しも一部不自然で古臭い。芝居的な表現でもなく、現代劇らしくもなく意図が不明だ。また口癖での性格付けを漫画・アニメ的な手法で狙っていたとしたら、残念ながら役者の演技が追いついていない。特に本郷猛を始めとした主人公サイドに妙なあざとさや、ぎこちなさを感じてしまう。そこから繰り出されるギャグも間が悪く、薄ら寒い。これも古典的だが、大真面目なシーン、淡々としているのに観客にはおかしくてたまらない、という手法も世の中にはある。正直引き出しの少なさを感じてしまう。

このような慌ただしく冴えない作品世界の構築に影響されてか、ショッカー、特に怪人(オーグ)も敵としての魅力をあまり感じなかった。映画という限られた尺の中だからこそ、ヒーローに匹敵する魅力を垣間見せてもよいはずなのに、である。口調や台詞による雑なキャラ付けが目立った。知能面で優れている、という見せ方にしても単調だったか。人工知能の存在も既存のSF的な想像の範疇で、現代の風刺という風情でもなく、あまり本作の面白さに寄与していない。余談だが元・味方(今は敵)という関係性や展開はこのところ創作でよく見かける。キャラクターを一人作る手間が省けるからだと推察するが、個人的には食傷気味。

メインのストーリーに関しては、現代らしく個人や家族にフォーカスしていると言うには前述の設定披露と性格付けのせいで、何が起きてもダイジェストのような感が否めない。一方で、人類を救うという目的の真意や使命という観点から着目しても内輪話のような世界観しか見えてこず、最後まで登場人物に感情移入することもなく終わってしまう。登場人物が感極まるシーンと、観客側の感情の高まりにズレが生じている気がした。

では肝心の戦闘シーンはどうだったか。あまりピンとこなかった。所々ロングショットのチマチマした画が挿入され、迫力に欠ける。CG使用の悪い点が表出している。映像的にはロケ現場を見る楽しみはあるが、それ以上のものがない。シーンの挿入としてはストーリーの流れが悪いのか、戦闘に期待が高まり、夢中になる展開が少ない。せっかくの戦闘が中断されて間延びする箇所もある。人間離れした強さを表現するに、PG12の中途半端な血飛沫は虚しかった。必要な要素だったのかも疑わしい。グロテスクな描写以外でも、異常な力と人を殺した恐怖や実感は表現できるのではないか。敢えて書くが、それに苦心していたのが原作の一つ、TV放映版のように思う。空想の戦いを彩るのならば、格闘や剣技で型や組手の美しさを強調してもよいのに、そういった様式美、カッコよさが”ライダーキック”にだけ残っているのが何より寂しかった。夜間・暗闇の戦闘は盛り上がりどころなのに暗すぎて視覚的に分かりづらく、ライダーの光る目やライトが眩しい演出に囚われすぎている。

そこにきて最後の戦闘は、それまでの演出と打って変わって泥臭くて笑ってしまった。笑ってしまったといえば、泡になる演出もしつこく見せ過ぎたか。展開と相まって、あの頻度で繰り返されると恐怖や絶望を感じることはない。別れやショッカーの恐ろしさを演出するには、陳腐になってしまった。制作側が大真面目に作っているのに、観ている側がギャグに感じてしまう好例だと思う。


最後に音楽は、相変わらず全て新録していない様子。今回は原曲をアレンジした新録もあり、悪くなかった。映画音楽・サントラ好きとして、なぜ音楽は新しい響きに挑んでくれないのか不可解だ。結局のところ、新しいヒーロー像を見せ広く一般に問う映画というより、コアなファンが楽しむに過ぎない映画だったということか。それをエンドロールの選曲で示唆している、と。そう考えると合点がいく。

雑談:邪魔な相手はゆるさんぞ

見出しは本作の内容にも一応合っている歌詞から。最後に私が『シン』を観ての与太話をほんの少し。既に巷に溢れている内容と大差ないだろうが、気にしない。


・単に発信機をつけるだけでなく、裏の裏をかくような蜘蛛男の頭脳プレーが好きだったのに、ただの薄っぺらい講釈垂れになってしまって残念無念。初期の魅力だと思うんだがなあ。現代において迂闊な知恵比べ、化かし合いの描写は作品の底が知れるということか。


・本郷たちの後ろをついてくるサイクロンがバトルホッパーみたいで可愛い。ああいうさり気ない一コマの方が未来を感じる。


・カードで本郷猛とハチオーグ(変身後)が出て大満足。実は蜂女の回が好きで、家で鎖タイプの自転車の鍵を体にまいて、手を握りしめながら椅子に座って遊んでた。もちろん一人で。この回はライダーキックもえぐくて好き。だから『シン』でキックをわざと外したときは凄まじくがっかり。


・『ライダーファイト!』だったかの楽曲の新録かアレンジは聴きたかった。ついでに2号の同ポーズは腕がもう少し、気持ち水平なタイプが好き。


・仮面ライダー1号、2号のラインと見分け方は、今回でまたバリエーションが増えるわけですか。なるほどこうして商売にも繋がると。こういう小ネタを拾うのは嫌いじゃないのだが。最後のバタバタしたマスク剝がしの戦闘もね、オマージュなのはわかっていても、うーむ。


・このキャストなら、もう次は『シン・ウルトラマンVSシン・仮面ライダー』か。ビデオで観たなあ。特撮がウルトラシリーズと一味違って面白いのね。やらないとは限らんよなあ。



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