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邦画と特撮、アニメに寄せて 映画『かがみの孤城』の感想

昨年12/23から公開の映画『かがみの孤城』を観てきたので感想です。細かい内容は列挙しませんが、一応ネタバレありです。原作はヒット小説ですので、既にストーリーを知っている方も少なくないでしょう。実写ではなくアニメ、という点にも期待していました。

※画像をタッチ・クリックすると予告編(YouTube)が再生できます。

原作を読んだ上での鑑賞・感想ですか? 答え:いいえ

原作小説を読んだことはありません。メディアミックスにも様々な戦略があるのでしょうが、個人的に映画は映画、原作は原作で作品が一本立ちしていると嬉しいです。その上で各々異なる味わいや楽しみが得られると最高です。「小説を読んでいればこのシーンの意味がわかる」、といった補完の関係で終わってしまうのはやはり寂しい。本作はどうでしょうか。そのあたり話題作の映画化ということもあり、映画が面白ければ小説にも触れてみたいです。映画公開前は既に古書でずらっと並んでましたが、再度人気が出ている様子。

映画『かがみの孤城』の感想

SF要素、ファンタジー要素はあるが、設定等は深く気にしない方がよい作品。鏡の存在を始め、突然何が起きても「ははあ、そういう世界なんだ」と思って、割り切って観た方が楽しめる。何より作品の主眼がそこではない。主人公を軸として、鏡の向こうの”城”を通じて明るみになっていく彼女達の現実と、再び歩み始めた先は果たして如何に、という作品である。

特に主人公の境遇は浮ついたところのない、リアルで生々しいものだ。細部は異なれど、これこそ私と同じ体験、という向きも決して少なくないのではないか。自身が当事者でなくとも、同じような悩みや出来事を世のニュースで知ったり、身近で起きたことがあれば実感が湧くし、想像は容易だと思う(そうであってほしい)。城が話の中心だとタイトルで思わせて、物語を動かす、未来を左右するのはそうした彼女たちが生きる現実世界の出来事であり、行動である。この辺りの構成はちゃんと筋が通っている。

ただこの構成故か、残念な点が少しある。まず城での鍵探しの過程がイマイチ映像映えしない、あまり面白味を感じないのだ。種明かしのきっかけは古典的で悪くないが、全体的にかなり地味で素っ気ない。原作通りなのかもしれないが、時間の経過ばかり強調されて、行動としてあまり画になっていない。台詞で片付けている箇所も見受けられる。冒険もの要素を期待して鑑賞すると肩透かしをくらうだろう。彼女達にとって、現実世界から離れて仲間と安寧に過ごせる時間・場所が貴重なのは理解するが、舞台装置としてはこざっぱりし過ぎた感がある。

次に主人公のこころ以外の6人の境遇については、ややバランスを欠いた描き方だったと思う。数合わせ気味に存在する人物もいる一方で、ストーリーの核心に迫る人物については、もう一押し人となりを細やかに描いて欲しくなった。映画という尺の問題もあったのかもしれない。ラストの流れは悪くないが、全員を描くがためにかえって薄味で駆け足気味になってしまった。前述の通り、城での鍵探しがメインの展開でもなく、個々の特性を活かす場面が印象に残るような作品ではない。せっかくの世代と学校という繋がりの妙味がもったいなかった。最近の映画で定番とも言える、ノスタルジー要素もそつなく挿入している。これが終盤の種明かしにも関係しており、単なる幅広い層へのウケを狙っているだけでないのは好感が持てる。それだけに繰り返し観て登場人物の人となりを再発見したり、したくなるには少々物足りない出来になったのが惜しい。

キャストの演技は気になる箇所はなく、全く問題ない。音楽は無駄な音響なく、可もなく不可もない。映像面は高い水準で普通。昨今のアニメ映画ならこの位は当然、というクオリティ。アニメならではの派手な演出は少なく、作品を忠実に再現することを意識したものではないか。余談だが、作中で「可愛い」と評されるキャラクターとの差別化、老若男女の表現はまだまだ難しいのだなと感じた。アニメ化に際しての問題点かもしれない。脇役含め、全員可愛いキャラデザだと思った。


公開時期を考慮して改めて書くと、冒険もの、スカッと何かを発散するような作品ではない。じっくり鑑賞するタイプの作品だ。映画単体としてはやや不満だが、原作も気になる内容になっているとは思う。機会があれば読んでみたい。


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