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邦画と特撮、アニメに寄せて 映画『ぼくらのよあけ』の感想

10/21から公開中の映画『ぼくらのよあけ』を観てきたので感想です。事細かには書きませんが、ネタバレは一応ありです。最近この手のSF、宇宙物をよく観ている気がします。

※画像をタッチ・クリックすると特報(YouTube)が再生できます。

原作を読んだ上での鑑賞・感想ですか? 答え:いいえ

原作を読んだことはありません。実は原作を知っていて鑑賞するアニメ映画はほとんどないです。原作の下調べ、ヒットしているのかどうかもあまり気にしません。小説だろうがコミックだろうが、何か光るものがあって映画化されたのでしょうから、まずは映画として面白ければ問題ないと思います。

映画『ぼくらのよあけ』の感想

現代と変わらなそうで結構進んでいる、ちょっとありそうな未来が舞台。それでいて寝坊したり、慌てたせいでベッドから落ちたりするのはアニメや漫画の古典的な表現だ。こういった表現に関して、本作は破綻なく進む。よく言えば落ち着いた作品、悪く言えば没個性だ。これといって目を見張るようなシーンはないと思う。

前述の未来世界に加えて、メインとなる”未知との遭遇”も映像や展開のインパクトで押さない。特に中盤以降の、宇宙への帰還に至るまでの障壁を乗り越えていく様に手に汗握ることはない。役に立つ”ガイド”もいるし、どうにも予定調和が過ぎて冷めてしまう。

その中にあって、同級生・真悟の姉の存在といじめのエピソードがストーリーの本筋に対して物凄く雑味に感じる。正直アクセントにもなってなくて大いに疑問。下衆の勘繰りだが、一頃見かけた”学校生活の生々しさ”描写を入れてウケを狙ったのか、とすら思う。そういえば団地という舞台や平成初期・昭和を意識した映像の挿入といったノスタルジーを煽る要素もその一環か。

宇宙の問題に比べれば人間関係・いじめの問題など、些細なはずなのに我々は日々悩み、解決できていない。明確な解法もない。意図としてその程度は読み取り、想像はする。劇中で仲直りして、解決してハッピーエンドにしてくれ、というわけでない。作品の方向性に対して、不要だったと思えるくらい、添え物の程度の浅い踏み込みなのが問題なのだ。その上最後までエピソードが何となく影を落としてしまうのでタチが悪い。このエピソードを覆すような展開もカタルシスも途中ないのだ。それなのにロクに後日談すらない。つくづく必然性を感じなかった。

これを映像化するくらいなら他のメインキャラの造形や胸に期するものを描く時間に割いたほうがよほど感情移入できたと思う。そもそも6年の銀之介のキャラクターは希薄だし、前述の真悟にしても姉との関係を描くならもう少し背景にスポットを当ててよかったのではないか。真悟は一度メンバーから離脱するので尚更そう感じる。かつて断念せざるを得なかった親たちの存在と行動も同様だ。敢えて真悟が団地の屋上から落ちそうになるイベントをきっかけにしなくても別なアプローチができただろうし、子供と協力してもう一度⋯といった展開が中盤の盛り上がりに寄与することも考えられただろう。

そして何より、オートボットとの出会いと別れを表現するに、それら過去から現在へのリンクを劇中でダイジェストでしか描ききれていないのが痛恨。科学的な知識や小ネタは楽しめたが、これでは帰還に至るまでの過程を見せられても感動に至らない。映画の尺の都合でこのような中途半端な描写になったのなら残念だが、もしこれが原作通りとしたら、原作の技量に問題がある。

そんなところで最後は宇宙に帰れてめでたしめでたし⋯なのは予期していたが、どうも釈然としなかった。


映像、音楽面は普通。高いレベルで最近のアニメ映画のクオリティは満たしている。キャストの演技も特に不満なし。だがどうも映画を観ただけでは、もう一度観たい、原作を読んでみたい、とまでは思わせてくれなかった。

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