デジタルエンタテイメント断片情報誌

デジタルな話題もそうでない話題も疎らに投稿

言葉について検索する前に『日本語相談』を読んでおく

文章を書いていると、言葉の意味や語源・用法がふと気になることがある。辞書を引けばよいのだろうが、PCを使っているとネットで済ませがちだ。

そこで検索をすると、出典も不明な上に、素人が書いたのか専門家が書いたのかすらよくわからない記事がヒットする。最近は頻度が高い気がする。いわゆる検索流入と広告収入を狙った記事だと思う。

そんな記事でも、自分の知識と合点がいけば「そんなものか」とつい信じてしまいがちだ。記事の体裁がよく整っていて、巷で流行りの”伝える技術”を駆使した表現の術中にはまっているとも言える。

私自身、「どの口が言うのか」と言われかねないことを書いている自覚はあるが、やはり情報を探す上で出典や引用箇所の明記というのは重要なのだ。また、権威主義のつもりはなくとも、学問に係るような内容は記事を書いた人物の経歴を意識せざるを得ない。もちろん趣味のサイトだとわかるものはそのままで構わない。だがサイトの概要に「みなさんの生活の向上のためにサイト運営を開始しました」などと書いてあっては、流石に胡散臭い。「新生活と同時にブログ始めました」という自己紹介からの、商売っ気アリアリ記事連発もどうかと思う。


そんなところで久々に『大野晋の日本語相談』(河出文庫)を読み返している。かつて『週刊朝日』に連載された、日本語に関する読者の質問と識者(大野晋)の回答コーナーを収録したものだ。大野晋の名前にピンとこなくとも、編著の辞典名を挙げれば知っている向きも少なくないかと思う。

この本に収録されている仔細な回答を読むと、情報や知識を上辺だけ汲み取ってもモノにはならない、ということを痛感する。1986年~1992年に連載された内容だが、今だ話題になる質問・疑問も少なくない。

例えば「一ヶ月」と「一ヵ月」の違いについて調べたくなったことがないだろうか。大げさに書けば、本書を読めばもうネットで調べることはなくなるかと思う。成り立ちや出典も順序立てて、簡潔に解説されている。

見れる、食べれるといった「ら抜け言葉」の質問も掲載されている。言葉の出現時期から広まった経緯、研究者の見解まで一通り読める。意外とポッと出の言葉ではなく、以前から”問題”として認識されていたことがわかるだろう。


上記は一例だが、普段なら本文を引用してもう少し面白おかしく書こうとするところだ。だが今回は、この記事に辿り着いた御仁に”遠回りの近道”を味わってもらいたく、具体的な内容には触れないでおきたい。


⋯舌打ちでもされて早々に記事から離脱されるのがオチか。なるほどそれじゃあ商売にならないよなあ。

スポンサーリンク