デジタルエンタテイメント断片情報誌

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ベートーヴェンの交響曲と日常02:レナード・バーンスタイン

音楽でもその他趣味何でもよいが、”定番”から入って、”定番”から離れ、”定番”に戻ることがないだろうか。

クラシック音楽を聴き始めた頃は、まずラジオで聴くか図書館でCDを借りていたと思う。インターネット上はまだショップはおろか音源の情報も乏しく、今のように無料で公式音源が楽しめなかった。そこでネットや書籍で得た情報を元に作曲家を知り、演奏家・団体を憶え、音楽を聴いていった。そうして巡り会った演奏家の一人が、指揮者:レナード・バーンスタインだったと思う。もっとも名前を以前から知っていたこともあり、「やっぱり人気のある指揮者なんだな」と軽く納得していた。CBS(ソニー)の音源は比較的入手しやすい上に、バーンスタインだけでなく他にも鉄板とされる演奏家が揃っていた。

それらをひとしきり聴いた後、音源収集に熱が入りだした頃にはすっかり興味をなくしていた。気に入らなかったのではない。「バーンスタインはいつでも聴けるからいいや」といった調子で、”レア”・”希少”と目される音源や未知の音源探しに勤しんでいた。

それから何十年も経って、サブスクリプションが隆盛し、クラシック音楽もようやく手軽になった。そこで取り敢えず探すのがバーンスタインを始めとする”定番”の音源だったりするのだ。やっぱりちゃんと配信されてるよな、と思いついた音源を検索し、確認してしまう。今回はそんな私の堂々巡りしている音源について雑談したい。

レナード・バーンスタインのベートーヴェン交響曲全集

バーンスタインの指揮ぶりは情熱的で情念的・感情移入が凄まじい、などと書かれているのをしばし見かける。私も聴いていて演奏に集中させられる感覚を度々味わったことがある。ただ、音楽に飲み込まれる魔力といったドロドロしたものよりは、もっと新鮮で爽快感のある印象を受けている。それが飽きない魅力の要因だと思う。こうして幾度となく聴き直したくなる。昨今、バーンスタインの音源に触れることは容易い。ディスクからサブスクリプションまで、一通り揃っている。有り難いことだ。

まずDG録音の話をすると、ウィーンフィルと1978年頃に録音した交響曲全集は各パートの音の浮き上がり方が独特だ。そして弾性のある音楽を繰り広げている。近年のベートーヴェン解釈に通じる響きのコンパクトさを感じることが多い。案外それが期待はずれだった、という向きもあるのかもしれない。私は偶数番が特に好きだ。ブルーレイオーディオが発売されたようだが、こういう録音であれば手元に置いて聴き比べたくなる。

9 Symphonies -CD+Blry-

9 Symphonies -CD+Blry-


そしてニューヨーク・フィルを指揮した1960年代の録音(CBS)。こちらの録音が前述のバーンスタインの魅力を十二分に湛えている上に、音楽世界が空間を切り取るようなキレが良い。単なる指揮姿や演奏の様子、音の大小や低音・高音の鳴りっぷりだけで判別できない、こういう演奏こそ”熱い”というのだろう。ウィーンフィルとの録音より、私はこちらが気に入っている。第6番なんて、実はワルターがコロンビア響を指揮したステレオ録音より私は推したい。オーソドックスな演奏だとたかを括って聴いたので余計に感動したのを聴く度に思い出す。

SINFONIEN 1-9, OUVERTUERE

SINFONIEN 1-9, OUVERTUERE


音源漁りは楽しい。色々聴き比べたい欲求はいまだ衰えていない。だが今の音楽事情だからこそ、こういう”定番”といわれる音源の底力を忘れて、奇を衒い虚栄心で趣味嗜好を変質させることがないよう自戒したい。

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