デジタルエンタテイメント断片情報誌

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第63回有馬記念に寄せて

今年は競馬関連の記事を少し書いたので、改めて話題にしたい。もちろん、単なるレース回顧や(聞いてもいない)収支報告の記事にしたくないという、多少捻くれた思惑はある。ギャンブルに対して嫌悪感を示す向きには各種事情があるだろうから、広く読まれることも期待していない。

最近は専ら地上波でテレビ中継されるような大レースを「数百円」程度買う、という遊び方をしている。かつては競馬場に行き、馬券を買って現地でレースを観た。その楽しみを知っているからこそ、今はこういう遊び方ができるのかもしれない。ちなみに私の競馬の遊び方については下記記事も参照のこと。


今年の有馬記念はなかなか面白いメンバーで注目していた。レースへの出走と「ファン投票」の関係がこれほど注目された有馬記念は、最近ではちょっと思いつかない。

また、”ジャパンカップ世界レコード決着”の反動や如何に、という視点で注目していた競馬ファンも少なくなかっただろう。調子を崩したり、故障が発生したりしないか、私も少しだけ頭によぎった。レース結果としては冷静に受け止めるが、アクシデントはやはり気分の良いものではない。

レース結果については「ようやく、やってくれた」。この一言に尽きる。3歳馬ブラストワンピースが1着だった。動画はJRAオフィシャルより:

※画像をタッチ・クリックすると動画(YouTube)が再生できます。


今年の春に同馬の日本ダービー出走にかこつけて、一つ記事を書いた。同馬を取り巻く血統、関係者に浅からぬ因縁を感じたからだ。

記事を書いた後、ダービーでの結果は5着。それを受けて追記した。「やはり、こうして記事にしたところで上手くはいかないものだ」と。ドラマは創り、創られるものではないことを痛感したのだ。それだけに今回、有馬記念のレース結果を受けてこうして記事を書いていると、何だか清清しい。


改めて書くと、今回勝利したブラストワンピースを管理する大竹正博調教師の実父が大崎昭一元騎手だったのだ。そして、大崎昭一の初G1(八大競走)制覇も有馬記念(カブトシロー)だった。日刊スポーツの記事が手短にまとめてくれているし、世間でも多少は話題になっていると思うので詳細は省く。
p.nikkansports.com

日刊スポーツは大崎昭一が引退後評論家として予想記事を書いていたので、特に触れているのだろう。同じく大崎昭一が騎乗したグリーングラスのラストラン(1979年・第31回)の話題も嬉しい。向正面から仕掛けて先頭に立ち、4コーナー・直線でセーフティリードを確保して他馬の追撃をしのぐ、シブい勝ち方だった。記念テレカがちょうど4コーナーのいい場面を切り取っている。私の「グラスの有馬」はワンダーの方ではなく、コチラなのだ。

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そういえば、ブラストワンピースは緑のシャドーロールがトレードマークで、グリーングラスは緑のメンコ⋯。ここまでくるとこじつけか。


ブラストワンピースには厩舎共々、これからも頑張ってもらいたい。予想の際は、多少情にほだされたい。

そうそう、最後に大崎昭一の騎乗観について、『瀬戸際の勝負師』(著:井口民樹 現代書館)、『競馬ノンフィクション 夢を背負って走る』(著:真船寛之 経済界)から引用しておこう。何が言いたいかは、競馬ファンならわかるはず。この2冊は晩年の大崎昭一を知りたい御仁は必読。

「騎手が勝つんじゃないですよ。馬が強くて勝つんです。それなのにステッキ振りかざしたり、ガッツポーズをしたりなんかしちゃあいけませんよ。下で馬が迷惑してます」
(『瀬戸際の勝負師』P.26 現代書館)

「次は誰が乗るかわからない。そのとき勝たなければ。二着ではダメですよ、勝負は」
(『競馬ノンフィクション 夢を背負って走る』 P.60 経済界)


『夢を背負って走る』 本の感想と第85回東京優駿(日本ダービー)に寄せて

かつてJRAに大崎昭一という騎手がいた。私が名前を意識し始めた頃には、既に「ベテラン」と呼ばれる騎手だった。

昨今、所謂ベテランや「○○界最年長」みたいな選手がスポーツニュースを賑わせているが、53歳まで現役(騎手生活36年)で、1000勝目指して苦闘していた(1999年の引退時970勝)姿は、今ならもっと注目されたと思う。

今の競馬ファンには、もはや薀蓄でしかその名前を口にすることはないのではないだろうか。例えば今の時期なら、ダイシンボルガードで日本ダービーを勝利した際、直線で厩務員が外ラチ沿いに乱入したこと、レース後ファンに胴上げされたこと。

ちなみに大崎昭一は日本ダービー2勝ジョッキーである。もう1勝のカツトップエース(皐月賞・ダービーの2冠馬)も、トライアル3冠馬・サンエイソロンの話題の陰に隠れることが少なくない。

また晩年を知っているファンからは天皇賞(秋)のレッツゴーターキンや、桜花賞のツィンクルブライド(2着)の名前が挙がるだろう。実績の凄さよりも、どちらかと言えば、その意外性が話題になる。

そんな大崎昭一の晩年のドキュメンタリーが収録された本がある。『競馬ノンフィクション 夢を背負って走る』(著:真船寛之 経済界)だ。雑誌『競馬最強の法則』に掲載されたものが収録されているので、雑誌で読んだファンもいるだろう。

晩年の大崎昭一は小倉や新潟といったローカル競馬場での騎乗が多かった。少なくなった乗鞍を求めてのことだ。その原因の一つに、本書でも触れられている新潟競馬場での八百長疑惑の事件がある。

疑惑の内容は主に「特定のファンに騎乗馬についてコメントした」というものだが、真相は私にはわからない。”新潟事件”などと呼ばれているようだが、そんな名前をつけられるほどの事件だったかと、当時の記憶を辿ってしまう。当人は「引退したら言う」と話しているが、もちろん現時点で暴露も何もしていない。むしろ本書を読む限り、八百長行為をするような人物には思えないし、後々になって何もかも暴露するような人物にも思えない。

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本書ではその事件を経た大崎昭一の晩年の孤独な戦いぶりが、本人の口調と同様に、淡々と綴られている。騎手としての厳しい状況を語る、「もう五十歳ですよ」「よくここまで来れたと思いますよ」「厳しいですよ」といった言葉が突き刺さる。事ある毎に口癖のように繰り返される、「どうってことないですよ」が心に響く。

引退後の言葉も印象的だ。やはり騎手として華々しく活躍したかった、という気持ちが率直に出ている。

「また、大レースを勝って、格好よくそのまま引退したい⋯。そういう思いが頭を過ぎることもありましたね。やってみたかったですね」(P.59)

そして無念さが滲み出ている「どうってことないですよ」がここで現れる。

「馬に乗れなくなるのは寂しい。⋯乗ってさえいれば、どうってことないですよ」(P.60)

電子書籍もなく投げ売り状態だが(記事時点)、騎手であり続ける、そのことに賭けた勝負師の姿が読める貴重な本だと思う。



来週5/27は第85回東京優駿(日本ダービー)である。そのダービーに、ブラストワンピースという競走馬が出走予定だ。
db.netkeiba.com

特に最近何かと話題になっているので、既にご存知のファンも増えただろう。ブラストワンピースを管理する現JRA調教師の大竹正博師の実父が大崎昭一である。大竹師の管理する馬がG1に出走する度に「大崎昭一」の名前をニュースで見かけることも多くなった。
number.bunshun.jp

ブラストワンピースの母はツルマルワンピースである。そしてツルマルワンピースを管理していたのが橋口弘次郎元調教師である。前述のレッツゴーターキン等々、晩年の大崎昭一に騎乗を依頼していた調教師の一人だ。そのツルマルワンピースの仔が大竹厩舎所属となってダービーに出走する。競馬に創られたドラマを求める気はないが、私など意識せざるを得ない。

大崎昭一が別の本、『瀬戸際の勝負師』(著:井口民樹 現代書館)で語っていたことを思い出す。

「もう少し、ぼくが若かったら」
ひょいと、彼が言った。
「そしたら、息子に乗せてもらえるんですけどねえ」

(『瀬戸際の勝負師』 P.55)

その夢は実現しなかったが、この縁に、大いに期待したい。


まずはブラストワンピースには無事にレース当日を迎え、出走・完走してくれることが前提だ。ただ、大崎昭一曰く「二着ではダメですよ、勝負は」ということなので、もちろん目指すは勝利だ。そして私の馬券が当たれば言うことはない。

案外難しいのは最後だけではないか。

(2018/5/29追記)やはり、こうして記事にしたところで上手くはいかないものだ。そこが競馬の、現実の面白さだ。まだまだチャンスはあるので頑張ってほしい。実は『夢を背負って走る』には、デビューした頃の福永祐一のドキュメンタリーも載っている。この記事を書いた際に読み直していたので、「ああ、こちらのドラマか」などと感慨にふけってしまった。

(2018/12/23追記)まさか有馬記念でG1初勝利とは。ささやかに喜びたい。

競馬という娯楽の愉しみ方

「競馬を楽しむ」、ってタイトルにすればいいのにね。「愉しみ」ってのも洒落たつもりかね。まあいいや。

とにかくタイトル通りの記事なのだが、”娯楽”というのは明記しておきたかった。
だってこういうのを書くと、ネットでも実生活でもいるでしょ? 「競馬よりも投資の方が儲かるから」みたいなことを仰る御仁が。まあ極端な話題がウケる昨今、仕方ないことなのかもしれない。

その辺りも含めて、今回は、私にとっての”競馬”の話。

競馬は娯楽である

私にとっての競馬は娯楽、コレに尽きる。前述の通り、生活に直結する金儲けの手段として資産運用と同一視したり、予想紙的な話を展開する気は毛頭ない。娯楽なので、好き嫌いも大いに結構。ギャンブルと言うだけで眉をひそめる御仁にまで、この記事は読んでいただかなくてもよい。

そんなことを先人がちゃんと宣言しているから引用しておこう。菊池寛の『我が馬券哲学』だ。「競馬好き」っぷり溢れる文章なので全文紹介したいが、私のスタンスと一言一句違わない一文だけ。以下引用:

一、馬券買に於て勝つこと甚だかたし。ただ自己の無理をせざる犠牲に於て馬券を娯しむこと、これ競馬ファンの正道ならん。競馬ファンの建てたる蔵のなきばかりか(二、三年つづけて競馬場に出入りする人は、よっぽど資力のある人なり)と云わる、勝たん勝たんとして、無理なる金を賭するが如き、慎しみてもなお慎しむべし。馬券買いは道楽也。散財也。真に金を儲けんとせば正道の家業を励むに如かず

(『我が馬券哲学』より)

うーむ、何も付け加えることはない。先人と言えば、もう一人、”競馬の神様”、競馬評論家・大川慶次郎の言葉も紹介しておこう。『競馬神様の法則』(三心堂出版社)より。以下引用:

私がこの馬のことを「そのうちきっと走りますよ」と言ったんです。で、それを聴いたファンが、ある時この馬の馬券を買ったところ、残念なことに負けてしまった⋯。
怒って、投書をよこしてきましてね。「命から二番目に大切なお金を賭けたんだ。軽率なことをいっては困る」と。
困るのは私のほうです。すぐに「競馬に使うお金が命の次に大事なら、あなたは今すぐに競馬をやめるべきです」と返事を出しました。

(『競馬神様の法則』  三心堂出版社)


大体投資の話自体、私自身やっているやっていないに関わらず、ブログの話題としては敢えて避けている。もちろん他人がするのはご自由にどうぞ、だ。例えば天下国家や宗教の話は、(自身の興味・関心とは別に)SNSや職場ではしない、という向きは少なくないはず。それと同じこと。そして少なくとも私は娯楽の意味を多少は心得ているので、冒頭で書いたような切り口で競馬・ギャンブルの話はしない。

ここまで書くと皮肉が過ぎるか。でも今どき、この程度は記事として配慮しておこう。

私にとっての競馬の魅力

競馬という娯楽には無数の魅力がある。その中で私が挙げるなら、血統や戦績を見て予想するのが面白い、レース展開に興奮する、特定の競走馬や騎手・厩舎のファンである⋯⋯といったところか。的中した瞬間にお金が増えてアドレナリンがドバドバ状態も格別だ。別にいいだろう、自分と周囲に迷惑をかけなければ。最近はグレードのついた、所謂大レースだけ遊ぶことも多い。

もちろん、馬の走る姿が美しい、そういうのも文句はない。私は馬の走る姿自体に特に感銘は受けないが。一生懸命走っているかもわからないし、むしろ馬の気持ちなんてわからないから、良い。人間の気持ちだってロクに理解できてないのに

◆自宅で楽しめる

家で楽しめるから、という魅力は強い。JRA、地方競馬ともにネット環境があれば家で馬券が購入できる。特に地方競馬・SPAT4の充実ぶりは圧巻だ。おかげで競馬場に行かなくとも競馬が満喫できるようになった。なので私は競馬場へ行くことも特段オススメしない。

http://www.jra.go.jp/dento/

SPAT4インターネット投票

◆競馬SLGが好き

競馬ゲームの貢献度も高いだろう。私が競馬にハマるきっかけもゲームだった。今だにウイニングポスト7を延々と遊んでいる。元々はビクターの『クラシックロード』シリーズのほうが完成度が高かったのだが、競馬ゲームに関しては、現在コーエーテクモの一強状態だ。

◆競馬とお金

競馬に月いくら使うか、という話も少ししておく。月だろうがレース毎だろうが「娯楽と許容できる範囲」というのが当然なのだが、カネについては指標が欲しいという向きもあるだろう。ここで前述の『競馬神様の法則』(三心堂出版社)から紹介したいのが、「月収の1/6」はどうだろうか。

例えば厚生労働省の平成28年学歴別初任給をみると、競馬で遊べる成人になりたての頃の平均初任給は16万~23万、月収20万程度とみていいだろう。20万円の1/6、3万円程度使うとする。土日・月8回遊ぶとして、1日の費用は4千円弱だ。

4千円でどれだけ馬券が買えるかというと、百円単位で買えば40通りも買える。1レースで40通り買ってもよし、その日の全レースいかに買うか考えてもよし、メインレースこの一頭に全てを賭けてもアリだ。

こんな感じで収入・馬券購入の結果ごとに調整するのはどうだろうか。

◆”ドラマ”を感じるもよし

私が競馬に注目したきっかけは前述の競馬ゲームと、ある騎手のおかげだ。そんな話を付け加えておこう。
元JRA騎手、大崎昭一の話である。

大崎昭一のプロフィール | 騎手データ - netkeiba

昨今、所謂ベテランや「○○界最年長」みたいな選手がスポーツニュースを賑わせているが、53歳まで現役(騎手生活36年)で、1000勝目指して苦闘していた(引退時970勝)姿は、今ならもっと注目されたと思う。

幸い晩年のレースを見る機会があり、年齢を感じさせないアグレッシブな騎乗が好きだった。ラチギリギリの経済コース、前目の位置取りを狙い、腕っぷしで着に残る。思いきった逃げ、追い込みも仕掛ける。現在の外国人騎手に近い気がする。それ故かケガも多かったようだ。

大崎昭一は日本ダービー2勝ジョッキーである。後々知って凄いと思ったレースは”TTG”・グリーングラスのラストラン、有馬記念。所謂テン乗り・初騎乗でこのレースぶりである。今なら3コーナー辺りでもっとざわめくところではないだろうか。グリーングラスについてはこちらの日刊復刻記事が良い。

そんな大崎昭一の晩年の話を綴った本で、『瀬戸際の勝負師』(著:井口民樹 現代書館)がある。大崎昭一だけでなく、村本善之や清水英次といった、元騎手の興味深い話が満載である。清水英次の写真さえ間違っていなければ。

ちなみに案外知らない競馬ファンがいるので書いておくが、現JRA調教師の大竹正博師の実父が大崎昭一である。正直に書くと、これがあって私自身、大竹厩舎所属馬の馬券の取捨に躊躇することがある。だからこその娯楽なのだ。

最後に:今春の競馬シーズンに寄せて

如何に愉しんでいるかの話を一通りしたので、最後に今春競馬の話をしておこう。

何と言ってもクラシックレースである。特にダービー。今年は注目している馬が沢山いる。キタノコマンドールなんてオーナー辺りに眉をひそめる向きもいるだろうだが、私のような偏屈はそういう馬が活躍するのにもニヤニヤしてしまう。

ブラストワンピースも気になってしょうがない。これだけ書いて買わずにハズレたら恥ずかしい。でもそれをやってしまうのが競馬なのだ


やはり競馬は面白味のある”娯楽”だ。

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