デジタルエンタテイメント断片情報誌

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邦画と特撮、アニメに寄せて 18/9/17週  家族

一時期連載していた記事なのですが、すでに放映終了した作品と、この夏公開された映画の感想でも書いておきましょう。元々こういう不定期記事にしたかったのですが、定期更新を意識して結局息切れしました。連載にするとインパクトが薄れて、ただでさえ細々としたPVが一層イマイチになりますしね。反省。

アニメ:『ダーリン・イン・ザ・フランキス』第19話~最終話に寄せて

ノリやネタを楽しむ感覚で観ることができた6話、7話頃までと比べると、以降は悪い意味で展開に疑問符がついた。なんとか楽しい記事を書こうと意識しつつも、内容には慎重にならざるを得なかった。初期の謎や伏線について、12話頃の感想で「ベタに話を進めているから、考察しがいがありそうで、案外なさそう」と書いたが、当たってしまった。とにかく考察しがいのある複雑な謎解きにしろとは思っていないが、予想以上に場当たり的な、もしくはノリや勢いで押し切ったような展開が多くて辟易した。また既存の作品に対するオマージュ、パロディ的な要素はあってもよいが、特に作品の面白さを引き出す要素でなかったことも残念だ。

キャラクターについても、主人公・ヒロインとその周辺、コドモたちの設定・関係も活かしきれず作品が終わってしまった。主人公とヒロインを作品の中で特別な存在にするのは構わない。ただ、そこに至るまでのストーリーなり見せ方なりが御粗末だったように思う。コドモたちの存在意義は、話を追うごとに薄味になっていった。例えば如何にも意味ありげなコードナンバーにすら、結局大した仕掛けはなかった。

また初期の演出に対して、「後の話で解明・消化しないと演出過多になりそう」と危惧したのだが、これもその通りになってしまった。5話の頃だったと思う。続き物の話を鑑賞する上で、全話観てからならともかく、あの段階で担当スタッフ等の名前を出して注目してしまうと、作品全体としての評価を見失ってしまうきらいがあるのだ。この作品もそうだが、昨今は公式・非公式関わらず、制作側から設定や”制作裏話”のような情報提供も多い。私も関係者の名前・作品歴を追うのは好きだが、色々な内幕披露を見つけて落胆することも少なくない。その点からも前述の通り、慎重になったつもりである。

キービジュアルや設定には惹かれた。オリジナル作品を作る心意気も買いたい。それだけにもったいない気がした。

映画:『未来のミライ』

迂闊だったが、観に行く前に映画の評判を知ってしまった。正直、芳しくない様子だった。そのため映画館で、上映前に変な身構え方をしてしまった。「どんな展開が来ても冷静に、な」みたいな感じである。鑑賞のスタンスとしてはあまり良くないと思う。こういうことがあるので、ときに情報の遮断は必要だ。

本作の監督が近年発表している映画は一通り観ている。肌に合わない部分もあったが、毎作何かしら印象に残るシーンや展開はあった。監督の名前だけで注目していたのではない。表現の可能性、実写で難しいこともアニメだからこそできる⋯そういうものを作品から度々感じていた。本作の評判がどうあれ、その辺りは期待した。

※画像をタッチ・クリックすると予告編(YouTube)が再生できます。

映画の序盤は、正直そんなに悪印象はなかった。むしろ話の導入はすんなり入り込めて、上映前の無駄な警戒心が解けた。話の筋自体も別段難解ではない。家族の系譜やそのきっかけとなる出来事を通じて、4歳の主人公が現在・過去・「未来」の家族と触れ合い今に至る様子を描いたものだ。

ただ全体的に、ピンとこない、物足りなさを感じてしまった。また作品の舞台だけではなく、映画全体がこじんまりとした印象を受けた。

ときに親が仰天するような、子供の駄々や残虐性を表現している点は良い。現代に生きるお母さん、お父さんの子育てを描くことも大いにアリだと思う。しかしどうも通り一遍で、狙いが透けて見えるような印象を受けるのだ。「狙い」というのは作品の構成要素だけでなく、今はこのテーマで、こんなキャラクターを出して、こういうお話にすれば世間にウケるよ、というものを商業的に並べた感がある、ということである。

その一方で、旧来の価値観や世間体にとらわれず結婚・出産を経てもごく当然に仕事を続ける母親を描いているのに、「婚期」を気にして「未来」から妹がやってきたりする。作品のジャンル・テーマをはかりかねる展開があって、釈然としない。

曽祖父との出会いも同様だ。率直に言って、戦時の様子、機械・兵器を画にしたかっただけなのかな、というくらいヒキが弱かった。私自身、個々人に左右どちらかのスタンスをはっきりさせたいわけでもなく、また中道を気取りたいわけでもない。ただ、特定の思想を以ていきり立つほどのメッセージが込められたエピソードには感じなかった。

そんな風に消化不良が溜まっていき、気がついたら終幕だった。評判を知ってからの鑑賞だったので、なんというか、他人の「よくわからない」という感想がよくわかる映画だった。

そうそう、度々入るギャグには、正直クスリともできなかった。ウケ狙いを意識しすぎたのか、ギャグの中身やタイミングが読めてしまうのだ。「だるまさんがころんだ」のシーンでは特に顕著だ。これには今まで発表された作品にはなかった、作風の劣化を危惧してしまう。

主人公の声については、最初は慣れなかった。演技も悪くなかったのだが、もう少し子供らしい可愛さ、拙さがあってもよかった気がする。珍しく画のイメージから違和感を覚えてしまった。

もう一度観るなら、テレビで放映があったときに内容を再確認するくらいだろうか。

雑談:私が好きな”家族”の映画

家族・会話劇で思い出したが、『しとやかな獣』 (1962 カラー作品)という邦画が好きだ。ストーリーの中心である前田家なんて、本当にいたら絶対に関わりたくないはずなのに、その良好な家族関係と悪賢い結束力に惹かれてしまう。そしてこの家族、父親が旧態然とした家父長のようで、その実一家の舵をとっているのは母親なのだ。その辺り、テンポの良い会話劇と共に、ぜひとも注目してもらいたい。

他にも当時のブームや世相に対する風刺もあり、何より団地の一室に限定された演出・映像も面白い、見どころ沢山の作品なのでオススメしたい。

しとやかな獣

しとやかな獣

  • 発売日: 2015/09/21
  • メディア: Prime Video


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