デジタルエンタテイメント断片情報誌

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映画『ペンギン・ハイウェイ』に寄せて

予告編を観て興味が湧いた映画を観てきたので、感想を。それほど公開期間も長くなさそうなので、今のうちに。核心に触れるようなネタバレは書いていないので、鑑賞前の下調べで読んでも支障はないかと思いますが、基本的に映画を観ていること前提の内容です。

※画像をタッチ・クリックすると予告編(YouTube)が再生できます。

原作小説を読んだ上での鑑賞・感想ですか? 答え:いいえ

最近、特にアニメではメディアミックスを意識することが多く、アニメ本編だけでなく、原作(小説)、ドラマCDやスピンオフ等々まで目を通した上でまるっと楽しむのが前提、みたいな風潮を感じることも少なくない。だが今回私は原作小説も読んでないし、公式サイトでストーリー等々を事前に調べてもいない。ネタバレもそうだが、そういう感想を求める向きもいるだろうから、あらかじめ書いておこう。

もっとも、原作つきの映画なんてザラにあるし、まず映画として楽しむのに原作を知っている知らない云々は必要ないかとは思う。ちなみに森見登美彦作品のことを書くと、『有頂天家族』を小説・アニメで楽しんだくらい。

映画『ペンギン・ハイウェイ』の感想

強烈な印象・衝動に駆られる内容ではなかったが、余韻の良い作品。ノスタルジック、と一括りにしたくないが、そういう魅力や要素も少なくない。

子供の頃に抱いていた探究心、自身が成長することの希望・期待と大人への憧れ、家族・同級生との関係。そして舞台となる地域。主人公(小4)と周囲の環境は、ファンタジー・SFの舞台として考えても突飛な設定ではない。すんなり入り込めると思う。

そのため、特に主人公の、子供らしさ・らしくなさ、「マセた」性格の同居も観ていてそれほど違和感ない。リアルであり、アニメらしく消化もしている。記録し、考えさせ、重要なタイミングで主人公を導く父親の存在は、フィクションとしても、嬉しい。色んな立場、世代で「こんなことしたな」「こうありたいな」と唸ってもおかしくない。

また、スマホや携帯、PCが有用な道具として堂々と登場しない辺りは、やはり現代に生きる主人公の同世代よりも、90年台くらいまでに少年時代を過ごした層の方がすんなり映画に馴染めるように作られているのではないか。

もちろん、子供たちが観て共感がわかない、面白くない作品とは思っていない。例えば「おっぱい」という象徴の存在、その単語を連呼する場面があるだけでも楽しくなりそうだがどうか。ストーリーに絡んでくる大人や異性への憧れだって、理解できるだろう。むしろそういった、子供たちがリアルタイムで進行、経験があって然るべき要素は押さえていると思う。

ラストに向けての展開は、もし人に聞かれたら、気楽に見て大丈夫ですよ、楽しいですよ、と答えたい。そもそも「ペンギン・ハイウェイ」って何か知らない? 全く問題ない。少なくともちゃんと観ていればわかるし、その辺りは前述の通り、幅広い層を狙った隙のない、真っ当なつくり。私などは、ペンギンを発端とするファンタジー・SFの要素よりも、いつのまにか現実・人生を振り返り、垣間見るような気分になった。物語の謎・核心がある意味”大雑把”なのも、そこが狙いなのではないか。一方でファンタジー・SFとして前のめりで観ると、平凡過ぎて物足りなさを感じるかもしれない。


画として目を見張るような箇所は正直なかったが、映像は作品に集中できる文句のないクオリティ。キャストの演技も違和感なかった。声の演技については、かなり許容範囲が広い方だと思う。あくまで自分の主観で"聞くに堪えない"と感じなければ、それでいいし、声優、俳優、素人誰が演技していてもかまわない。

ただ、昨今の天変地異に気が滅入っている向きには、強く鑑賞を勧めたりはしない。今の状況が落ち着いて、観たくなったら観ればよいと思う。お話の展開的に、ちょっと脳裏によぎる要素があるかもしれない。フィクションとは言え、そこは多少慮りたい。ただその意味で、公開時期の巡り合わせはどうしようもないし、仕方ないとは思っている。


与太話として、心情的な甘酸っぱさや前述のノスタルジックな感傷よりも、「エロガキ」の気持ちを時々呼び起こされて、くすぐったかった。多分、私は主人公よりもスケベなガキだった。それを思い出してニヤッとするのも、映画の余韻として悪くなかった。今もそうなのは置いておくとして。

そして、そんなふうに感じたシーンを原作小説ではどう表現しているのか。ちょっと気になった。いつか読んでみたい。

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

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ペンギン・ハイウェイ

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  • 発売日: 2019/12/01
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