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邦画と特撮、アニメに寄せて 映画『アリスとテレスのまぼろし工場』の感想

9/15公開の『アリスとテレスのまぼろし工場』(公式サイト)を観たので感想です。詳細なストーリーを書いたりしませんが、一応ネタバレあり。劇場の予告で知って気になっていた作品。
※画像をタッチ・クリックすると特報(YouTube)が再生できます。

映画『アリスとテレスのまぼろし工場』の感想

アニメーションで思春期の性やエロの表現に迫っていることは否定しない。誤解を恐れず書けば、本作のような映像は今、実写では恐らくできないと思う。キャストの演技含めて、その辺りの生々しさは制作の個性を感じるし、一見の価値はある。冬の薄暗さや闇、夜の場面が多く、特に物語後半での演出や場面転換のための伏線とは言え、統一感ある雰囲気は魅力的だ。

一方で、それらを含めた映画を構成する要素が、所謂「昨今流行りのネタ」の複合体のような印象を超えられなかったのが大変残念な作品だ。90年代と思われる舞台設定や基幹産業の栄枯盛衰、震災後を思わせるようなゴーストタウン、タイムリープ、神隠し⋯。舞台設定を「そんなものだ」で済ませて話を進めるにしても、露骨過ぎてオリジナル作品である前に興味が薄れてしまう。

メインのキャラクターに多感な時期の少年少女を配しているのも同様だ。同級生だけでなく家族の存在を物語に盛り込んでいるのは好印象だったが、物語に割く尺が足りなかったように思う。三角関係やサブキャラの恋愛、家族との関係、演出だけでなくもう少しエピソードで踏み込んで欲しかった。親子の機微など、もっと感動的な流れにできた気がする。本作のように並べ立てただけでは、地上波放映の総集編のような印象すらある。ただしヒロインの父親だけは演技過剰。作中で浮くほどの胡散臭さで設定を意図的に誤魔化したかったのかもしれないが、存在含め観ていて大変萎えた。

流行りのてんこ盛り、と前述したが終盤の展開は90年代有名なアメリカSF映画である。作品名を出すまでもない。残される側の視点であることはやや珍しいが、列車に車で元の世界へ、と来ては思い出さざるを得ない。花火の演出など美しく映像は嫌いではないが、この一連の流れもまた特定の世代に向けたノスタルジーか、と書くのは嫌味だろうか。その上でとりあえずハッピーエンドへ舵を切るのは昨今の定石で、色々と目新しさはない。


音楽ついては特に印象なし。主題歌も特に映画本編とのリンクで感銘を受けるものではなかった。個人的に、主題歌を聴いて余韻を感じる映画は余程構成が練られているか、シリーズ物で前から知っている(歌)か、どちらかだ思う。前者でそこまで本編に前のめりになれる映画には、残念だが出会っていない。本作も映画館で観なくとも、興味があれば配信を待てば遅くないだろう。


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