三度目の後にも正直があった、7/31公開の『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』最強ディレクターズ・カット版を観てきました。今年楽しみにしていた映画。今の状況は全く予想していませんでしたが、体調と対策を確認しつつ映画館へ。
それにしても”ダイナミック完全版”上映に配信・ブルーレイ発売と、もう弾はないだろうと思ったら、あったのですね、本編よろしく。公開初日と次の土日は盛況だったようですが、果たして”最強”とはいかなるものか。今回はインターナショナル版、ダイナミック完全版鑑賞を前提とした感想です。詳細を並べ立てることはしませんが、ネタバレありです。
\🔥#T34最強DC版 🔥/
— 映画『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』公式🔥 (@T34movie) 2020年7月31日
\ 遂に本日公開ッ‼️ /
ロシア映画日本興収No.1の
メガヒット戦車アクション、完結──
完全版を超える迫力の3時間11分ッ
映画館の音響と大きなスクリーンで
伝説の戦いの終結を見届けろ‼️👀
新宿ピカデリー他全国進軍🚩#T34レジェンドオブウォー pic.twitter.com/5pgoAwj8yM
映画『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』最強ディレクターズ・カット版の感想
まずサクッと書いてしまうと、想像の余地や物語の余白を心地よく埋めてくれて楽しめるが、作品としては丁寧になりすぎた印象。
特に最初に公開されたインターナショナル版で感じた、間延びしないテンポの良さ。エンターテイメントとして抜群に編集されていたのだなと再認した。上映時間の問題以外に、なるほどこれをこのまま公開しなかったのもよくわかる。未見の人に薦めるのであれば、まずはインターナショナル版を観て肌触りを確かめてもらいたい。合うのであれば、”最強”をどうぞ、といきたい。
もちろん本作のファンとして、新たな情報に退屈しないことは保証する。「ここにこんなシーンあったんだ」「やっぱりそうなるよな」「ああそういう理由があったのか」という具合に、3時間があっという間だ。鑑賞前はさすがに途中でダレるのではと思ったが、これまでの版を観た人間からすると興味が尽きないと思う。
まず戦闘シーンを含め、これまでの版以上に「戦争」を感じる構成になった。やはりアクション、エンターテイメントの爽快感だけではない、現実を心に留める内容を盛り込もうとしていたのだ。それは「勝てば官軍」というものでも決してない。後半の広場での演説から始まる一連の場面はややベタではあるものの、最初の戦いで映される住民が避難する姿は戦況をより生々しく伝える。大隊長も良い味出している。両手の指を目一杯広げて「小さく前ならえ」すれば君も大隊長だ。
人物では、ニコライとステパンの関係は今回の最強版の筋立てが最も良い。立場を変えたニコライを簡単に信用しないというのは当然、納得だ。そこからの関係良化はコメディタッチも入り、観たかいがあった。一方でニコライとアーニャの関係は、ちょっとロマンチックな、運命的な要素を意識しすぎか。二人のきっかけは従来の版で見られた、「偶然の出会い」程度で十分かな。
インターナショナル版の感想で「ナチスドイツだが、愚かすぎたり残忍過ぎたりといった極端な描写がなく作品に没入できる」と書いたが、最強版ではなかなか残忍で冷酷な一面も盛り込まれていた。やはりこの辺りは作品の印象を変えるだけに、慎重になっていたのだろう。この要素もさほど必要なかったかなと思う。
戦車戦では転輪をつっかえさせる、定番の対戦車策も新たなシーンでさり気なく加わって嬉しい。ラストの”決闘”シーンは双方のやり取りがアツい。映像と相まって、ほんのちょっと台詞で意図や狙いを加えるだけで、緊張感、イェーガー大佐の強敵感がグッと増す。
そうそう、最強版では歌の役割・存在感がささやかだが重要だ。ステパンの、エンドロールの歌にもちゃんと伏線があったのだ。歌が作中で家族や故郷をより意識させる。そう言えば新たなシーンで『ホルスト・ヴェッセルの歌(旗を高く掲げよ)』が流れていた。『パンツァー・リート』といい、ちょっとニンマリした。
余談だがこの『ホルスト~』、今は取締りが厳しくて正規のダウンロード販売では聴けない様子。AmazonやiTuneにもない。当然Spotifyにも。流通していたダウンロード音源は復刻状態が良かっただけに残念。CDでは『The Rise of Fascism』(Pearl)に収録されているのだが、この音源はスクラッチノイズがひどいのだ。ちなみにこのCDにはヒトラーとムッソリーニの演説も収録されている。
ちょっと脱線したが、最強版は作品の痛快さやテンポの良さはこれまでの版と比べやや減退している。ファンが観たかった・知りたかったことが明らかになったりするものの、「蓋を開けると⋯まあそんなものか」という種明かしをしてしまった箇所もある。繰り返すが、その辺りのバランスはやはりインターナショナル版やダイナミック完全版が絶妙だったと思う。
とは言え一度『T-34~』に魅了されると最強版も繰り返し観たいと思ってしまうのが、ニクいところか。贔屓目か。最強版の配信や日本版ディスク発売も期待。Большое спасибо!
※2021年追記:めでたく発売されました
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