デジタルエンタテイメント断片情報誌

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整理と『ワンダービット』

家の本棚を整理した。読んだ本、読まなくなった本を処分して、今読んでいる本を収納するスペースを作った。

どちらかというと、買った本やゲームは売らない性分だった。読み終えたもの、クリアしたもので今だに所持している作品がある。だが最近は配信やダウンロードが便利になって、所持にこだわらなくなってきた。10年物(あるいはそれ以上のもの)を今更ながら処分、この割合が高くなっている。

そして何より、世の中がどんどん新しいものに移り変わる。特にゲームの”一生モノ”なんて言葉は、死語になったように思う。そのとき楽しいと思うものを、そのとき遊べばいいのである。そんな気分も影響している。

そんなことを考えながら整理をしていて、ある漫画に手が止まった。『ワンダービット』(著:島本和彦 アスキー、メディアファクトリー)である。連載当時はPCゲーム誌『ログイン』に掲載されており、単行本化ののち、ようやく電子書籍でも読めるようになったようだ。

ワンダービット 1 (島本和彦漫画全集)

ワンダービット 1 (島本和彦漫画全集)

  • 作者:島本和彦
  • 株式会社ビッグバンプロジェクト
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著者が一筋縄では行かないSFを目指しただけあって、キャラクターからストーリーまでバラエティに富んでいる。『銀河鉄道999』を思わせる教訓・道徳めいた話もある一方で、女子プロレスラーが巨大化して怪獣と戦ったりする。ライダーシリーズを思わせるヒーローと悪の組織が出てくる不条理な特撮物や、果ては当時のログイン編集者(※今偉い人)の写真マンガ等々、飽きさせない。不思議とネタの鮮度も落ちていない。


その中で好きな話を一つ挙げると、連載時の最終話「死ぬまでゲーム」だ。

若い頃からテレビ番組をビデオに溜め録りしていた老人が、引退後にビデオを消化していくうちに観るのは時間の無駄と気づいた一方で、同様に買いだめしていたゲームを全部クリアーすることにした老人の友人は、ゲームにハマりにハマって抜け出せなくなっていた、という話である。丁度最近、過去のゲームを遊ぶ機会を増やしており、改めて真顔になってしまった。

本にも、テレビ番組にも、古典的な魅力を湛えたものがある。ゲームも例外ではないと思う。昨今のソフト・ハードの復刻状況はその最たるものだ。だがゲームには感動に至るまでに、「プレーする」という際立った能動的な要素がある。ゲームを「クリアする」は、いつ遊んでも「読む」「観る」のように最後まで辿り着かないことがある。終わらない、終われないからこそ、ハマりやすいのだ。その強みを難なく描いていて、著者のゲームに対する愛着を再認した。


これからもワンダービットを繰り返し読む度に、今のゲームだけでなく、昔やったあのゲーム、やりたかったゲームの魅力に再び引き寄せられるのだろう。本棚に残しておいた。

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