いやまさかそんな、世界に開けたインターネットで地域性丸出しの話なんて、それも雪が降った・積もったですって? 今日は一段と冷えますわね、嫌ですこと。オホホホ⋯などと書いて、私は一体何がしたいのでしょうか。
こんな日は、メルヘンチックにまいりましょう。
柄にもない? 求めてない? でも気にしない。(全国気にしない協会)
絵本『ねずみのおいしゃさま』(なかがわ まさふみ 作・やまわきゆりこ 絵 福音館書店)の話です。「ぐりとぐら」なんてご存じの方には今更な、有名な本かもしれません。
- 作者:なかがわ まさふみ
- 発売日: 1977/04/01
- メディア: 単行本
まず簡単にお話を紹介すると、「ねずみのおいしゃさまが、冬の夜に熱を出した、りすのぼうやの家に往診に向かう話」です。
他愛のない話だと思うことなかれ。このおいしゃさま、ものすごくグータラなのです。なにせ家に向かう途中、雪で乗っていたスクーターごと埋もれちゃうんですよ。絵面的に、今週の首都圏ニュース映像に使われてもおかしくないです。
その上、途中で冬眠中のかえるの家で休憩して、朝になってからりすのぼうやの家に急ぐのです。すると、りすのぼうやの熱は一夜で下がっていて、おいしゃさまは”にがわらいして”(原文ママ)帰っていきます。何しに行ったんだ。
しかも最後は前日の夜のせいで、おいしゃさま自身が風邪をひいてしまうという⋯。
お話を「だらしない」の一言で済ますのは簡単ですが、私にはこの人間臭さが愛おしくて、大人向けに思えて仕方ないのです。「やらなくちゃいけないことがあるけど、どうしても疲れたから切り上げる・休む」、「しょうがないから明日に回す」、「でも責任感がないわけではない」⋯妙にリアルな”良心の呵責”に、日々の出来事を思い起こして和む方も少なくないのではないでしょうか。ましてやネットでは、”デキる”御仁が上昇志向で息巻いているのばかり見かけたりしますから。
また、おいしゃさまが休憩している中、寝ずに働いている人たちを描写しているのですが、これが良い。大の大人でも無性に感謝・反省したくなるような、優しさがお話と絵に溢れているのです。
何だかんだで、久々に雪の積もる道に埋まりながら歩いてこの絵本を思い出し、ささやかな活力にしています。