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『交響曲ガールズ&パンツァー』の感想

3/11に『交響曲ガールズ&パンツァー』のCD、ハイレゾ音源(e-onkyo他)が同時発売されています。ガルパンの新たな音楽世界を楽しみにしていたファンも少なくないでしょう。

交響曲ガールズ&パンツァー

交響曲ガールズ&パンツァー

  • アーティスト:浜口史郎
  • 発売日: 2020/03/11
  • メディア: CD


さらにさらに今回、Spotifyでも聴けます!(3/11時点) 素晴らしい! 各種音源購入は聴いてからでも遅くない。ついでにTV、『劇場版』サントラ他も配信開始。探してみましょう。聴き比べも一興。

今回はそんな『交響曲ガールズ&パンツァー』についての感想と雑談です。

オーケストラと収録場所のこと

今回の演奏メンバーや収録場所(チェコ・フィルハーモニー管弦楽団のメンバー、ドヴォルザーク・ホール)は、案外知っている人が多いのではないだろうか。

まずクラシックファンにとって、この2つの名前は馴染み深いところだ。私のような半可通でもピンとくる。ドヴォルザーク・ホールは、ああプラハのルドルフィヌム(芸術家の家)ね、という具合に。デカデカと載ったジャケットに苦笑するかもしれない。

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また、日本で最新の録音が聴けるオーケストラのひとつがチェコ・フィルハーモニー管弦楽団だ。オクタヴィア・レコード(日本のレーベル)が発売している指揮者・小林研一郎との一連の録音(もちろん場所はドヴォルザーク・ホール)は演奏・録音の質共に一聴の価値があると思う。これも今やSpotifyで聴ける。(一部のみ配信の音源あり。残念)特に音質面で、こうした音源との比較も興味があれば。


もっとも、今回演奏を担当した「チェコ・フィルハーモニー管弦楽団のメンバー」というのは、録音をサポートしたハーモニクス・インターナショナルが揃えたフィルムハーモニック・オーケストラ(FILMharmonic Orchestra)のメンバーのこと。こうした企画の録音を行うプラハが拠点のオーケストラで、ここにチェコ・フィルの団員も参加しているわけだ。


そして何よりアニメファンなら、スタジオジブリ作品の音楽でチェコ・フィルやドヴォルザーク・ホールの名前を見かけたことがあるのではないか。

このジブリ作品の録音に参加してきたエンジニア・江崎友淑(※前述のオクタヴィア・レコード代表である)が、『チェコ・フィルプレイズ スタジオジブリ交響曲集』のライナーでこんなことを書いている。以下引用:

僕たちが普段行っている録音活動は、あくまでクラシックの再生芸術の分野において、先の巨匠たちが残した楽曲を演奏者と我々録音側でその時々の正誤を探って仕上げてゆく。しかも、そのほとんどは欧州においてで、欧州の演奏家達と欧州の作曲家の作品の携わることがその大部分である。すなわち、我々日本人がそこで現場をリードする事は容易いことではないのである。

ジブリ作品の録音を通じては、いつもの逆で日本人の作曲家のものを、作った本人とともに音楽制作していくというのは非常な醍醐味である。


今回ガルパンの録音で、そんな”醍醐味”の成果を味わうことができるのは、まさにファン冥利に尽きると思う。

『交響曲ガールズ&パンツァー』の感想

まずCDのライナーは曲目解説もなく、すごく素っ気ないと書いておこう。ガルパンのCDは大体こんな感じだ。御託よりも音(楽)で勝負、ということなのか。

ただ聴く前にエンジニアの名前を眺めていると、オーケストラ作品のCDで見かけたことのある名前(Oldřich Slezák)を見つけた。前述のチェコ・フィルの話題にも関係するが、日本でも活動していた指揮者ズデニェク・コシュラー(チェコ出身)のスメタナ『わが祖国』やドヴォルザークの録音に参加したこともある人物だ。まさかここで名前を見るとは。


そんなこんなで「これは録音に期待できる」と気分が高まったのだが、まず一聴して自然な残響に安堵。『劇場版』のサントラでは、特にヘッドホン使用時に残響が弱冠気になってしまったのでこれは嬉しい。そして演奏は管楽器の厚みと余裕のある鳴らしっぷり。弦楽器群もしなやかだ。そこにきてホール収録のオーケストラ作品らしい音の広がりとクリアな見通し。各セクションのバランスが良く、音が遠すぎる・近すぎるということもない。まさシンフォニックな響きが良い。

聴き慣れたはずの『戦車道行進曲!』も胸が高鳴る。楽曲構成はTV版と『劇場版』を汲んだ流れか。それを思い浮かべざるを得ない構成だ。ただこれは映像が頭に浮かんで~というより、より一層センチメンタルな趣ではないかと思う。実際に聴いていてそう感じた。

特に第3楽章、『戦車道とは女子としての道を極めることでもあります!』のオーケストレーションがたまらない。聴いていて「おっ」と唸った。たおやかでいて、この切なさ。作品のこれまでより、まだ観ぬ今後の展開に思いを馳せたくなる。本編で流れて欲しい、いや流れるような場面が観たくなる。

そこから第4楽章の緊張感と不安を煽る弦楽器群。そして管楽器の咆哮。広くファンを飽きさせない構成が光る。第5楽章のような楽想でも映像など合わせず、各々キャラクターやこれまでのエピソード、大洗の思い出等々に浸りたいと思わせる。総じて最後まで音楽の力だけでガルパンを語るに足りる内容であり、大変満足した。録音状態や音質云々ではなく、心に残った。


”交響曲”と銘打ったことについて。作品の性質から、全曲交響”詩”なのでは、という気もしなくもないが、ひとつ大きな『ガルパン』という筋を通したいというところで、深く考えず楽しむものだろう。標題交響曲ならば、リヒャルト・シュトラウスの作品なども思い浮かぶところだ。まあ、そのリヒャルト・シュトラウスは『ガールズ&パンツァーのための狂詩曲』に苦笑することだろう。


そうそう『狂詩曲』はサンダース、知波単、アンツィオ、黒森峰辺りの躍進を予期するものですか。次点でプラウダかなあ。連合対枢軸か。『最終章』後半は一体どうなるんでしょうね。そんな軽い楽しみも与えてるくれる素晴らしい音楽でした。CDに限らず様々な手段で聴けるので、広く聴かれて欲しい。

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