デジタルエンタテイメント断片情報誌

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『ベストプレープロ野球』と野球を考えること

今回は『ベストプレープロ野球』(Windows版)、ベスプレと野球にまつわる話です。初登場のPC・ファミコン時代から30年以上経とうとしているシリーズのPC版最新作です。最終作かもしれませんね。

野球"シミュレーションゲーム"という存在

野球ゲームというと、「自分が選手になったつもりで遊びたい」「ホームランを打ちたい」「完封したい」そんな欲求でついアクション要素を求めてしまいがちです。現実に贔屓にしているチームがいれば、俺が操作して優勝させてやる、そんな風に意気込んだりもするでしょう。

ですが、本作で行うのはチームの指揮。選手の起用を考え、試合の流れを読んで采配を振るうゲームです。球団運営要素もなし。野球中継を観戦しているときの「俺が監督ならこうする」を「じゃあやってみてください」というゲームです。特に野球観戦を趣味にしていて、野球関係の記事や書籍を読んで試合に思いを巡らす向きにはたまらないゲームではないでしょうか。

選手のパラメータは最低限。それでも試合画面で動く選手たちは生き生きとしていて、能力に応じた活躍をしてくれます。派手な演出はなくとも、実際に操作はできなくとも、選手の動きを追いかけてしまいます。

※'00なので、デフォルトデータは当時の選手が並ぶ。

※つい最近まで現役だった選手の名前も。


監督となったチームの試合は1球1球指示(コマンド)を出すことができます。全オートにして、シーズンをシミュレートみたいなこともWindows上ならサクサクできます。

※Win版なら1シーズンもあっと言う間に終わらせることも。

※COM同士の試合も同時進行といった、現実のような設定もできます。

このゲーム、パラメータや試合日程等、色々とエディットできるのも強み。一生モノ、なんて大げさな表現を使っても差し支えないでしょう。実際、Win版は今プレミアがついている様子。ちなみにWindows10の64bitでも問題なく動きます。とは言え配信か、新作出して欲しいなあ。ストライク・ボール表示も変わったしね。

あとはデータの入れ替えや試合消化のスピード面で劣りますが、CPUはGBA版の方が優秀です。こちらはまだプレミア度合が優しいかな。それでも定価からすると随分な値段になってしまいました。

ベストプレープロ野球

ベストプレープロ野球

  • エンターブレイン
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以前別の記事でも書きましたが、”あらゆる野球ゲームの中で、監督・コーチ・ファンの気分が一番味わえるプロ野球シミュレーションゲーム”というのは決して過言ではないと思っています。

野球を考えることの楽しさ

私がプロ野球を好んで観るようになったのは、1999年~2001年に阪神タイガースを野村克也・元監督が指揮したことがきっかけです。正直筋金入りの野球ファン、と言うにはおこがましいところです。

ヤクルトをあれだけ強くした監督が、「弱い」ことで有名だった阪神をどうするのか。ふとしたことから湧いた興味だったと思います。ただそれからというもの、阪神の試合はもちろん、他チームの中継や各種ニュース、書籍を日々ハシゴしました。まだまだインターネットの情報も今ほど豊富ではありませんでしたから。

そこで知った”ノムさん”の野球に関する話や文献は格別に面白かった。月見、じゃなかった、月並みですが「野球ってこんなに考えるんだなあ」と頷くものがありました。そうなると野球を観るのがまた楽しくなる。野球アクションゲームのような面白さも好きですが、それこそゲームでホームラン打って、0点に抑えても、役割をこなすだけでは何か物足りなくなる瞬間があるのです。後述する本の引用ですが、”野球も一球投げるごとに間がある。それは考えるための時間を与えてくれているのではないか、と思った”、これは選手にとっても、ファンにとっても野球の醍醐味ではないでしょうか。

私はビジネスと野球の話を安易に結びつけることには懐疑的なのですが、観察すること、工夫すること、そして人間の情という要素はやはり共通項だと実感することがあります。色々出版されてる中では、『無形の力 私の履歴書』(日本経済新聞社)が”名将・野村克也”の人生と考え方を知るに表現も過剰でなく、スタンダードだと思います。巷で話題になるエピソードも大体出てきます。

無形の力

無形の力

  • 作者:野村 克也
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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楽天の監督就任直前・直後までの内容なので、できれば楽天時代も含めた総決算の本を手に取りたかった。野球論の集大成を⋯いやそれは出さないか。そう書いてありました。その箇所を引用して、僭越ながら野球をこれからも楽しみたいと思います。

 「野村の考え」は永久に完成しないと思う。なぜなら野球は常に進化し、変化しているからである。
(『無形の力 私の履歴書』(日本経済新聞社))

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