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戦いを知る:『孫子』もいいけど『三十六計』もね

読書でもゲームでも、歴史物、特に中国や日本の戦国時代にハマって読みたくなったのが、兵法書として有名な『孫子』だった。各作品に登場する人物が学んだ書物は如何なるものぞ、というわけである。

あわよくばそれを自分も活かすような立ち振舞をしたい、「軍師」「参謀」といった響きに少々憧れたのである。もっとも、実生活がそんな戦乱の世のように荒れ狂っているはずもなく、せいぜいゲームをするときに使える作戦はないかな、その程度の興味からだった。とは言え、当時のゲームは難易度がそれほど高くなかったし、かといってコンピュータもこちらの計略に引っ掛かるほどマヌケでもなかった。

そんなことを『孫子・三十六計』(著:湯浅邦弘 角川ソフィア文庫)を久々に読み直して思い出した。

『孫子』は訳から解説、ビジネス書の類まで世に溢れかえっている。個人的にビジネスシーンに活かすスタンスで書かれた『孫子』の書籍で、あまりいい印象を抱いたものがない。ビジネスの究極には、通常「死(他人を殺す・殺される)」「滅亡」という選択はない。ビジネスにおける”勝敗”の感覚を戦争におけるそれと混同しているのではないか、そんな気がしている。

となると、やはり世界各地の戦いを振り返ったときの歴史的視点、現代の世界情勢、政治・軍事行動に絡めた視点として顧みるのが素直なのではないか。そしてそれらを題材とした娯楽⋯ドラマや映画、読書とゲームを楽しむ際の参考として読めば一層楽しめる古典なのだと思う。

少し話がそれたが、本書の『孫子』はそういった場面で役立つような、平易な訳と解説である。前述のビジネスライクな『孫子』本に辟易している向きには、入門としてもお薦めしたい。


そしてこの本の良いところだが、『三十六計』を併録している点である。『三十六計』は『孫子』よりも兵法、戦いのエッセンスを簡明にまとめた書物である。”三十六計逃げるに如かず”で有名な『三十六計』である。ただ、全三十六計には、案外触れたことがないのではないか。私自身も『孫子』を手に取った頃、併せて読んだ『三十六計』のとっつきやすさに感心した記憶がある。本書も歴史上の戦いを例に挙げながら計の内容をわかりやすく解説してあるので、未読ならばぜひ読んでみて頂きたい。

少し紹介すると、第十計「笑裏蔵刀(しょうりぞうとう)](顔は笑っているが、実は、刀を隠し持っている)、第十四計「借屍還魂(しゃくしかんこん)」(一度、衰退あるいは消滅した勢力が何かを利用して再興すること)⋯⋯わざわざビジネスに寄せようとしなくとも、余程昨今の情勢が思い浮かぶ。そんな視点だけでなく、前述の娯楽作品を楽しむ際の基本的な予備知識となるだろう。

もちろん昨今話題の小説やゲーム、アニメといったシナリオを考えるクリエイティブな用途としても、知っていて損はないと思う。いや、大丈夫だろうが、このくらいは知っておいて欲しい。ファンタジー要素、一騎当千のキャラで突き抜けるのもいいが、人間の知略もなかなかエグくてどす黒いことを。

そういうのは作品に反映してもウケないか。

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