夏休みの宿題の量を嘆いたことはない。正直、学習ドリル辺りは、なんてことはなかった。だが面倒くさいと思う宿題はあった。その一つが「自由研究」である。
一度、任意の自由研究コンクールに応募してしまったことがある。先生や親に強要されたわけではない。応募したら商品が貰えるのでは、と閃いたからである。ガキの頃から現金な奴だった。しかしこれがまあ、つらかった。何をやったかは秘密。勘弁して欲しい。
やる気も無いのに取り組んだから、当然賞なんて貰えなかった。ただ、そのとき一緒に応募した友達は特選だかで表彰されていた。その友達がやっていたのが蟻(アリ)の研究。「ようやるわ」と心の中で思っていた。嫌なやつだな。
そんなわけで、今回プレーするのは『シムアント(SimAnt)』(PC-98、TOWNS他)です。蟻の世界・生活をシミュレートするSLGのPC版です。
今『シムアント(SimAnt)』をプレーするにあたって
『シムアント』のPC版(マクシス社・イマジニア)が発売された当時は、既に自由研究のような宿題が課されない、もっと言うとそんな悠長に夏休みが過ごせない年次だった。その上『シム』シリーズで蟻が題材なんて、正直ふざけているのかと思った。
当時のメーカーは発想・アイデア勝負でこういう作品を大々的に発売していた記憶がある。日本のメーカーでも、光栄(現:コーエーテクモ)やアートディンクが「そうくるか」という独創的な作品を制作していたように思う(しかも案外そんな作品が名作と評されていたりする)。
蟻に慣れ親しんだわけでもない私が今このゲームをプレーするには理由がある。最近、動物・生き物の楽しい動画が観られるようになって興味が湧いたこと、そして金銭的事情が解決したことが大きい。当時はこういうゲームを買う「冒険」をする余裕がなかった。買うのはよほどそのジャンルが好きか、雑誌で評判を見定めたときくらいだったな。
ではプレー開始。オープニングの音楽がえらくカッコいい。オープニングくらいしかロクに音楽を聴いていないが。
なかなか世知辛い『シムアント(SimAnt)』
まず素晴らしいと思ったのが、チュートリアル(入門)があること。操作の説明をしながらゲームの進行を教えてくれるのだ。1991年のゲームでこれですよ。フロッピー2、3枚の容量でもこんなことを平然とやってのけるのね。
ところがチュートリアル通り、仲間を集めて敵の蟻(赤)を攻撃すると負けてしまった。チュートリアルだから上手くいくと思ったらそうじゃないのだ。蟻同士の戦いは蟻の種類によって、勝敗の確率が決まっている。絶対に勝てる組み合わせの設定はなさそうだ。
ここでチュートリアルも「また頑張ってみましょう」と励まして終了。嫌な予感がする。
やはりというか、チュートリアルの手順で巣と仲間を充実させて、何回攻撃を仕掛けも勝てない。負けると再び蟻として生まれるところからスタートなのだが、もう何回も生まれ変わっている。そしてまたせっせと働いて戦う準備を整える。
『シムアント』のマニュアルにはこう書いてある。
しかし、自分たちのコロニーの全体を考える蟻の社会にとっては、1匹の死はそれほど重要ではないのです。
代わりはいくらでもいるってか。蟻ごと、いや他人事じゃないね。実は私もあっけらかんと「生まれ変わった!」してみたいときが、たまにある。
でもそれはできない。大体、自由研究もうやりたくないし。ここは踏ん張って、生態系等サッパリだが蟻の世界をなんとかせねば。
攻略法探してみるべきか。⋯人生の攻略法じゃないですよ。