デジタルエンタテイメント断片情報誌

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派手でなく、素朴に、身近に、真面目に転職を考えたいときに読む本

会社を辞めたい、別の職場で働きたい、と考えたときに、身近な人間に話したりSNSで発信する人がいる。だが誰もが相談相手がいて、意思表明する場所を持っているわけではない。何より、「自分のことは自分が責任持って決める」と真剣に考えたときに、そういった手段を採りたくない、採れないと考える人もいるだろう。


そんな”転職”を考えたときに拠り所の一つとして読むといい本がある。『一生、同じ会社で働きますか?』(著:山崎 元 文響社)である。Amazonでベストセラーになっており、少し驚いたが納得。元々『転職哲学』というタイトルで出版されており、本書はアップデート版だが、基本的な内容は変わらない。

一生、同じ会社で働きますか?

一生、同じ会社で働きますか?

転職哲学

転職哲学

12回転職を経験した著者の、転職術に特化した本である。体裁は流行りのビジネス用語・専門用語が飛び交うでもなく、平易な文章で読みやすい。何より特定の業界だけに通用する話ではなく、仕事をしていく上で普遍的な内容であり、会社「あるある」もふんだんで楽しく、役に立つ箇所が多い。社会人生活の長短関係なく、新社会人も読んで損はないはずだ。この本の内容を思い出して、後々クスクス笑えるようになってもおかしくない。個人的にはそうなって欲しいと思う。


本書の特色を3つ紹介すると、

  • 転職を考えるときの三要素が明快

時間」「お金」「自由」である。現在の仕事(会社)でこの3つを比較し、ときに比率を変え、調整するために転職を検討するのだ。もちろん現職と転職後の比較も重要だ。


・時間⋯仕事(会社)に拘束される時間、通勤までの時間、仕事の習得に要する時間、家庭の事情に拘束される時間等々

・お金⋯給料や会社の仕事以外で得るお金(副業等)のこと

・自由⋯スキルとして仕事を身につける自由、仕事(職種・業種)を選択する自由、時間外をどう使うか(他の仕事か、趣味に費やすか等)


この3つであれば、あらゆる職業や生活スタイルに当てはめて考えやすいのではないか。また、このうちどれが「問題」で「満たされていない」のか容易にわかると思う。

  • 強く起業を勧めない

誰もが起業し、経営者として生きることだけが目的ではない。人それぞれに生活があり、個人の欲求がある。そのバランス感覚が、巷の”ハデな”働き方本より現実的で地に足がついており、共感を得るのではないかという気がする。以下引用:

「サラリーマンに向いていないから、といって、起業家(や経営者)に向いているというほど世の中は甘くできていない」

もちろん、著者は今だに”社員”というポジションでも働いている。

  • 転職の理由の考察が率直

転職の理由はズバリ、会社の「人間関係」と序盤で説いている。世の会社へ、”社員があなたの会社への不満無しに転職することは、まず無い”とメッセージを送った上で、以下引用:

不満を居心地が悪いというレベルで感じる背景に、周囲の人間が関わらないはずはない。

と喝破している。

その上で、人間関係が理由で転職することを否定しないが、同時に自分自身の分析が必要なことをフォローしている。以下引用:

自分がどのような性格で、仕事にあって、組織にあって、どのように人間関係を結びがちなのかということは時々意識しておくといいだろう。

月並みだが、ここが世の転職本で置いてきぼりになりがちな気がする。


ちなみに繰り返すが、著者は12回転職している人である。その転職歴と人となりは、『僕はこうやって11回転職に成功した』(文藝春秋 ※本が出版された頃はまだ11回目だった)を読むとわかる。特に新卒時入社した会社で、社員旅行と幹事を断固拒否して行かなかったエピソードは、「わかるなぁ」と思いながら爆笑してしまう。社会人スタートした”試行錯誤”の時代はいま読んでも面白いし、参考になると思うのでオススメ。

僕はこうやって11回転職に成功した

僕はこうやって11回転職に成功した


この他にも辞めるまでの会社での過ごし方等、実践的な内容が含まれている。本書を読んだ後は、例えば退職のエントリーなんて、すごくビジネスライクなのね、と実感するのではないだろうか。個人の独白・告発に目が行く記事もあるが、大抵はこれからの仕事や働き方を見越して、延長線上に書き記していることがわかる。まして世の中に公開しているのだ。今後の仕事で関わる人間が見ないとは限らない。それを承知の上で、真意を”読解”する楽しさももちろん否定はしないが。


転職について、誰しもが一世一代、一大決心である必要はない。選ばれし人間だけに与えられた選択肢でもない。記事冒頭でも書いた通り「自分のことは自分が責任持って決める」ことを応援したい。そんなときにまず本書を薦めたい。

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