デジタルエンタテイメント断片情報誌

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映画『ロケットマン』に寄せて

8/23公開の映画、『ロケットマン』を観てきたので感想と紹介を。ネタバレありです。といってもいつも通り、あらすじ紹介やいきなりストーリーの核心に触れたりせず、観た人が「ああ、あのことね」とわかる程度の内容に留めたいと思います。

事前知識ほぼなし。エルトン・ジョンというミュージシャンの存在と歌をほんの少しだけ知っていた、程度です。今回は内容と絡めて、その辺りを軽く前半のQ&A形式でまとめています。まずこれで観に行くか判断材料になれば幸いかな、と。

※TOHOシネマズ公式の6秒予告。画像をタッチ・クリックすると動画(YouTube)が再生できます。

鑑賞にあたってのQ&A

エルトン・ジョンのことを知っていましたか? ファンですか?

いいえ。前述の通り、名前と歌を少しだけです。当然ファンでもなかったです。ゴシップ等についても詳しくは知りませんでした。

事前にエルトン・ジョンの音楽はチェックしておいた方がよいですか?

いいえ、知らなくても多分差し支えないと思います。もちろんチェックしておけばより楽しめます。

例えばSpotifyでは既にサントラが配信されています。YouTubeにもエルトン・ジョンの公式チャンネルがあります。惜しみなく楽曲を公開しているので、鑑賞前・鑑賞後どちらでも楽しめます。




この映画を観に行ったきっかけはなんですか?

ちょうどロックバンド・クイーンを題材とした『ボヘミアン・ラプソディ』がヒットしており、実際私も楽しんだので、そういう映画に関心があったからです。誤解を恐れず書けば、クイーンに続いて大物ミュージシャンの作品が来たな、程度の期待感もありました。

『ボヘミアン・ラプソディ』は観ておいたほうがよいのですか?

観てなくても大丈夫ですが、観ておくと楽しい要素はあります。クイーンに興味を持って知識を仕入れておくと、役立つかと思います。


PG12(小学生以下視聴の際、保護者の助言・指導が必要)作品ですが、その辺りの描写はどうでした?

台詞・行動含めて、スラングや性的な行為・関係を示す場面が結構あります。例えば『ボヘミアン・ラプソディ』と比較すると、本作の方が直接的な描写は多いと思います。ただ本作のテーマにも係る要素であり、是非は各自で判断頂きたいと思います。個人的には映画作品として許容範囲でした。

映画『ロケットマン』の感想

エルトン・ジョン本人の歌唱だけが挿入されるのではなく、キャストも歌うミュージカル映画であり、伝記映画である。だがそこに”主人公”エルトン・ジョンの成功・挫折・復活や、家族の絆・親子の機微が通り一遍に描かれることを期待して鑑賞すると、スカッとせず、暗澹たる気持ちが立ち込めるのではないか。何度も繰り返し鑑賞するのはちょっと⋯という向きもあるかもしれない。

特に家族関係は最後まで尾を引く。理想の家族像や家族との和解といった要素をエピソードとして脚色し、月並みな感動場面として盛り上げることはない。そのやるせなさや救いのなさは、生々しくさえある。

少年時代を発端とする音楽活動の各種成功エピソードですら、爽快感に水を差される。ミュージカルや歌の挿入シーンの演出は、プラスの場面転換だけではない。堕ちていく様にもつながる。主人公が関わるもの、そして主人公が求めるものが、事あるごとに主人公を精神的・身体的にチクリチクリと痛めていくのだ。終盤につれその痛みが大きくなっていく。

名声、金、ドラッグ、性のこと⋯⋯あらゆるものを自らに備えて、「やった」と作中で語る主人公の姿は、エルトン・ジョンのことをよく知らなくとも、氷山の一角なのだろうなと察してしまう。そしてラストでようやく、この作品はミュージカルを、歌だけを楽しませる作品に敢えてしなかったのだな、と気づかされる。


スマイルズの『向上心』(竹内均訳 三笠書房 知的生きかた文庫)という古典的な自己啓発本がある。

向上心 (知的生きかた文庫)

向上心 (知的生きかた文庫)


そこには巷の伝記・自叙伝に関してこんな警鐘を鳴らす箇所がある。以下引用:

自叙伝はどれも興味深いが、やはり作者自身の飾らぬ姿を期待するのは難しい。自分の思い出を書き記す時、人は自分のすべてを見せようとはしないからである。

 自叙伝にもある程度までの真実は描かれている。しかし真実の一部分しか伝えていないために、全体的には嘘を並べ立てているような印象を与える。
 それは、その人の本当の姿ではなく、こうありたいという姿をあらわした偽装とも言い訳とも受けとれる。横顔の描写は正確でも、正面を向いた時に顔全体の印象をすっかり変えてしまうような特徴が反対側にないと誰が断言できるだろうか。


存命しているからこそ、敢えてエルトン・ジョンは映画を通じて、横顔だけでなく、正面を少しでも見せたかったのか。そしてそれが今のファンや観客にどんな風に見えるのか、問いかけたのか。それこそ誰かが勝手に自身のことを広める前に。


そう考えると、作中のエルトン・ジョンが見せたシニカルな台詞や表情が脳裏に浮かんでくる。こういう映画もロックンローラーらしいな、と思う。私はエルトン・ジョンに興味が湧きました。


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