デジタルエンタテイメント断片情報誌

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聴いて観て、観て聴いて CD『佐藤勝音楽祭』

久々に、これを楽しみにしていた、というCDが発売された。『佐藤勝音楽祭』(スリーシェルズ)のことである。2017/7/30・渋谷区文化総合センター大和田さくらホールでのライブ録音。正直お蔵入りの不安がよぎっていた所だった。生粋の映画音楽作曲家、佐藤勝の作品集である。

作曲家自身も生前行なっていた、映画音楽コンサートに立ち会える。コンサート当日はそんな喜びを噛みしめた。と同時に、佐藤勝ほどの日本人作曲家でも久々過ぎやしないか、普段からその魅力に触れる機会がもう少しあってもおかしくないのに、「生で聴ける」だけで殊更有難がってしまう現況は如何なものか、といった具合に、鬱屈した思いを少々こじらせてしまった。まあ、いつものことですが。堂々巡りの話題? まずはこうしてようやく自宅で音源が楽しめるようになったのだから、いいじゃないか? うーん、贅沢な話なんでしょうかねぇ。


所謂名作・人気作と称される作品を含め、佐藤勝が音楽を担当した映画は多彩だ。今や東宝の看板となったゴジラシリーズも担当している。

オーケストラに加え、ドラムセットやギターの活躍も華々しい編成、実験的な音響から生み出された音楽は、その後の映画だけでなく、TV作品にも影響を与えたのではないか。ああ⋯そんなことはいいか。こういう御託は今日日ネットで各自調べてもらおう。

何より、音楽を聴くとその作品が観たくなる。そして作品を見たら音楽が耳に残る。佐藤勝の魅力はこれに尽きる。そんな代表作が目白押しの一枚なのだ。演奏も良い。このままライブシネマ・コンサートを開催して欲しいくらいである。

今回は折角なので、収録曲と映画のリンクをセットで紹介しておこう。阿漕に思われるかもしれないが、こんな便利な時代なのだから、可能な手段で大いに楽しんでもらいたい。クラシック音楽の配信でもそんなことを考えている。


山田洋次監督作品より『幸福の黄色いハンカチ』。染み入るクライマックスに比して、道中の音楽はなかなか主張が激しい気もするが、それも作曲家の意図的なものなのでしょうか。


岡本喜八監督作品による3つの映画音楽、『独立愚連隊』『肉弾』『吶喊』。ちゃんと全部観られます。佐藤勝の強みです。もちろん『独立愚連隊西へ』も。

独立愚連隊

独立愚連隊

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
独立愚連隊西へ

独立愚連隊西へ

  • 発売日: 2017/09/15
  • メディア: Prime Video
肉弾

肉弾

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
吶喊

吶喊

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

『独立愚連隊』はメインテーマも良いんだなあ。メインテーマは東宝ミュージックのサイトで販売されている作品集が素晴らしい。他の収録曲も満足のディスク。


黒澤明監督作品による3つの映画音楽は、『隠し砦の三悪人』『用心棒』『赤ひげ』から。『用心棒』のメインタイトルのように、音楽がワクワクさせる映画に出会いたい。そうそう、大和田さくらホールと併設されている、伝承ホールの舞台装置で『蜘蛛巣城』の音楽なんてやって欲しい。演奏しているオーケストラ・トリプティークは最近企画が面白いので、是非。

隠し砦の三悪人

隠し砦の三悪人

  • 発売日: 2015/04/22
  • メディア: Prime Video
用心棒

用心棒

  • 発売日: 2015/04/22
  • メディア: Prime Video
赤ひげ

赤ひげ

  • 発売日: 2015/04/22
  • メディア: Prime Video


ゴジラシリーズは『ゴジラの逆襲』、『ゴジラの息子』、『ゴジラ対メカゴジラ』。今年公開された『キング・オブ・モンスターズ』もそうですが、ゴジラといえば伊福部昭、なのでしょうか。いやいやいやいやいや(多め)、伊福部昭も素晴らしいが佐藤勝の音楽も最高。『逆襲』の不気味さも好みですが、『息子』の音楽は刷り込まれた。「実験準備」の臨場感、カマキラスのギロもさることながら、私は獣の唸り声を奏でているような「ゴジラ対クモンガ」に感無量。

ゴジラの逆襲

ゴジラの逆襲

  • 発売日: 2014/04/23
  • メディア: Prime Video
怪獣島の決戦 ゴジラの息子

怪獣島の決戦 ゴジラの息子

  • 発売日: 2014/04/23
  • メディア: Prime Video
ゴジラ対メカゴジラ

ゴジラ対メカゴジラ

  • 発売日: 2014/04/23
  • メディア: Prime Video



最後に佐藤勝の語る映画音楽を思い起こして、この楽しみに胸を張りたい。映画音楽の未来のためにも。以下引用:

 昔はオペラやバレエ音楽の始まりだって異端視されてたんだからね。でも今や両者ともきちっと確立された芸術になっているでしょう。僕らも映画音楽はいつかああならなければいけないとずっと前から言ってきました。日陰者の映画音楽を”陰”だと思った事は一度もない。むしろ”メイン”だと思ってましたからね。


『300/40その画・音・人』 キネマ旬報社

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