デジタルエンタテイメント断片情報誌

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ゴジラは「気持ちがいい」 ゴジラ俳優・中島春雄の語る『ゴジラ』

今年のサントリーのコーヒーBOSSのCMで、ゴジラとある人物がクローズアップされている。遅まきながらその話題をしたい。

ある人物とは、初代『ゴジラ』からゴジラシリーズ、そして数多くの怪獣を演じてきた俳優・中島春雄のことである。CMでは同氏を顔の映らない”主役”として、過酷な現場や克己する姿を描きながらゴジラの姿へと結びつけている。その様子を語るナレーションの印象も強い、有り体に言えばカッコいいCMだ。コンセプト自体は好きだ。

だがCMを観てもう少しだけ、この元祖ゴジラ俳優・中島春雄が語るゴジラの魅力を付け加えておきたくなった。CMの続き、とでも言おうか。
そんな話が『怪獣人生~元祖ゴジラ俳優・中島春雄~』(著:中島春雄 洋泉社新書y)という本に綴られているのだ。


初代『ゴジラ』撮影当時、映画の舞台裏をいつも見ていたという氏は、『ゴジラ』のミニチュアの出来栄えに少し驚いても、「要領よく仕上げられるのが普通」と語る。ここでまず目に入るのが、CMと同様、プロとしての心意気である。

以下引用:

 ただ、作り物を生かせるかは役者の芝居にかかっている。そしてゴジラは所内の関心を集めている。会社も、本多監督と円谷さんも、この作品に力を入れているようだ。
 いくら厳しい現場でも、絶対に音を上げずに、きちんとやり遂げないといけないな。


※所内⋯撮影所 本多監督と円谷さん⋯初代ゴジラの監督、特撮担当


そして堂々の主役たるゴジラを演じていくうちにひとつの感情に達する。

頑張る気持ちはあっても、ぬいぐるみに入るのは、やっぱり慣れるもんじゃない。どんな撮影も暑いし、息苦しい。でも、現場が続くうちに、「孤独」という気持ちは薄らいでいった。そしてゴジラを演じる気分は「気持ちがいい」になっていったね。

複数のカメラが自分を狙い、回り始めると同時に「大怪獣ゴジラの気分で暴れることができた」そうである。

ちなみに今、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が話題になっているが、ラドンも「気持ちがいい」ようだ。

僕がぬいぐるみを着けずに吊られているリハーサルの写真がある。高く吊られて怖いことなんてないよ。気持ちいいよ。


最後に紹介したいのが、ゴジラを演じる孤独を和らげた人物がいたことだ。他ならぬ特撮のパイオニア、円谷英二のことである。

僕はセットで、なるべく円谷さんの近くにいるようにしていた。小柄な人だけど、不思議と近くにいると安心だった。僕の「孤独」という気分が薄らいで行ったのは、円谷さんの近くにいられたおかげだろう。


努力と孤独な戦いだけで『ゴジラ』は成し得た産物ではない。そのことを当然のごとく、ゴジラの中身は知っていた。だから気持ちよかったのだと、少し吠えたい。

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