デジタルエンタテイメント断片情報誌

デジタルな話題もそうでない話題も疎らに投稿

新しくて、気持ちのよかった「老舗」

昨日は雨かと思ったら雪も降って、まあ別に少々寒くてもいいじゃない、どこの地方ですか? というわけで東京ローカルな話題です。


最近ニュースで、神保町にある天丼、トンカツを出す老舗の定食屋が今年3月末で閉店の報が流れた。
すぐには反応できなかった上、そのことを知らずに先日店の前を通りかかり、これまでのように食事をしてしまった。
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念のため説明をしておこう。神保町は、所謂「東京神田の古書店街」が有名で、古本・本屋、音楽・レコードのショップがひしめく街。カレーやラーメンの有名店が並び、喫茶も多い。誤解を恐れず言えば、いかにもSNSをやっている人間が好きそうな街のことだ。ご多分に漏れず私もその一人。そうそう、秋葉原にも徒歩で行ける距離。役満だろう。

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そんな神保町に『いもや』という、いわゆる”良心的な”価格で、天丼やトンカツを出して客足が途絶えなかった店があったのだ。店の写真や情報は記事の先で十分だろう。紹介した記事中では、客が学生時代を懐かしむ声や経営方針の話題が中心になっている。


しかし、2~3ヶ月に1回行くか行かないか程度利用していた私の印象は少し違う。

この店、歴史は古いが、「さっと食事をして、足早に店を出る」という、そこいらのファストフード店となんら変わらない構造がセールスポイントなのだ。いや、少しくつろいだりスマホを眺める客もいない分、もっと殺伐とした印象を受ける客がいたかもしれない。

とても現代的な店だったのだ。そのせいか、通う度に昔を思い出して⋯ということがなかった。懐かしくないのだ。

むしろ働き始めてから、店を訪れる度に感じる諸々の”スピード感”が、段々フィットしていくような気がした。私自身がようやく追いついた、でもいい。今思えば、それが新鮮で通っていたのかもしれない。

この店のことをビジネスで例えるなら、最近の書籍ではなく、スマイルズの『西国立志編(自助論)』で示される、仕事の「勤勉さ」や「手際の良さ」、「迅速さ」の重要性を用いたくなる。現代でも通用する”古典”を体現した店だった、とは大げさだろうか。

閉店のニュースで行列ができているようだが、食事をしたくて、物が欲しくて⋯並んで待つのだって、また、現代ではないか。


そういえば『いもや』の店の作りは、カウンターの中で調理する形式だ。目の前で天ぷらが、カツが揚げられるさまだって、劇場で観る芝居、映画、つまり実演販売という”ショー”だ。

料理ができる様子を見るのは、気持ちがいい。油のはねる音や盛り付けで高鳴る気持ち、それはいくらネットが便利になっても運んできてくれないものだ。

不思議なことに、料理の過程というのは画一的な印象を与えない。私など、ブログをカスタマイズしても「なんだか他のサイトの真似しただけかな」などと自己嫌悪に陥ってしまうのに。それも老舗の凄みなのか。ズルいなあ。

今回紹介したような店は、東京だけでなく全国にもまだあるだろう。そんな店があったら、今のうちにぜひ味わっておいていただきたい。

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