デジタルエンタテイメント断片情報誌

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ちょっと外に出てクラシック音楽を聴きに行く 演奏会のすすめ

巷では「最近の人は音楽を聴かない」という話題もあるようだが、そんなこと言ったらクラシック音楽なんてどうなのよ? というわけで今回は、演奏会に行こうよ、という話。軽い? いや、楽しみの入りは軽く、ね。

普段は曲・音源の記事が中心だが、クラシック音楽好きとしては、やはり実演を聴く楽しさも広めたい。そしてこれがクラシック音楽の普及だけでなく、楽器の演奏やDTMを始めとした様々な趣味・興味に繋がって貰えれば幸いである。

演奏会に行くメリットは

演奏会場で生の音の響きが楽しめる・確認できる

多くのクラシック音楽が、実演での”生の音”を想定した上で作曲されている。スピーカーを通した音ではない。これはクラシック音楽の作曲家が活躍した時代を考えればまあ当然だろう。現代の作曲家だって、演奏に立ち会い、生の音を確認するものだ。※現代音楽や映画音楽といった、用途によってミキシングルームや録音で音をチェックされた曲はあるだろうが、それらは除いて考えてもらいたい。

クラシック音楽も配信が便利になり、曲目・音源に不満なく家で楽しめるようになった。今だにCDやレコードを膨大に所有している向きも少なくないだろう。だからといって、「実演を聴く必要はない」というのは早計だ。むしろ家で音源をコレクションしている御仁こそ、家で音楽・音響を楽しむために実演を聴いておく価値があるのだ。

それに体感あってこそ、例えば「家のスピーカーでこんな響き再現できないかな」「ホールだと結構低音が聴こえていたから調整してみよう」などとオーディオ趣味にも熱が入るというものではないだろうか。

曲の編成や奏法を見て確認できる

ステージを一望できる場所で、特にオーケストラの各パート・演奏を確認できるのはありがたい。楽譜を所有している・読めるのならば、そちらで確認すればよいのだが、視覚・聴覚合わせて確かめることができるのはメリットとして大きい。よく知っている曲でも、演奏会場で接して「あの箇所はフルート2人で吹いていたのか」などと気がつくことがある。

ちなみに私は楽譜の入手も困難な現代曲の場合、この楽しみを目当てに演奏会に足を運ぶことが多い。ステージに並んだ珍しい楽器群に演奏前からテンションが上がることも少なくない。

演奏会を選ぶ・探す

プロだけでなく、アマチュアの演奏会にも目を向ける

演奏会に行こう、そう決めて演奏会を探すと、今どきネットで検索すれば直近の演奏会がゴロゴロとヒットする筈だ。プロの演奏なら、ぴあやイープラスでも容易に見つかる。特に日本のプロオーケストラなら年間のスケジュールを公開しているし、オーケストラの会員でなくとも、よほどのことがない限りチケットが入手できるはずだ。

ただ地方によっては、演奏会の頻度、特にプロの演奏を聴く機会は、厳しい地域もあるだろう。そんなときに市民・学生・企業といったアマチュアの演奏会を選択肢に入れることも、私は積極的にお薦めしたい。プロの演奏会よりも格安の入場料(無料もある)で楽しめることが多い上、プロが諸処の事情で採り上げ(られ)ない曲を演奏していることがある。演奏会での「日本初演」が聴けるケースもある。この点だけでも、趣味が高じれば高じるほど、注目度は増すのではないか。
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技術云々の理由をつけて、アマチュアの演奏というだけで眉をひそめる向きも見かける。しかし近年、「聴くに堪えない」「噴飯物」で、途中退席したくなるレベルの演奏会には、少なくとも私は会ったことがない。むしろ年1回程度の演奏会のために、よく練習して挑んでるなという意欲的な表現に出会い、度々感嘆している。なお、個人の音楽体験にケチをつける気はないが、くれぐれも客席で自分の「耳の肥え度」を顕示し、撒き散らすのはご勘弁願いたい*1

演奏会を探すのに便利なサイト

前述の「ネットで検索」を説明させないでよ⋯と言いたくもなるが、親切第一でいこう。特にアマチュア・オーケストラの演奏会を探すなら「i-amabile(アマービレ)」が便利だ。曲名・作曲者名で検索できる。本当にありがたいサイトで、このサイトを見て演奏会の予定を埋めるのが楽しみの一つだったりする。

実際に行ってみた:オーケストラ・ミュズニック 第2回演奏会

最後に、演奏会はこんなに楽しいよ、というレポートを紹介して締めよう。昨日3/9(金曜)はオーケストラ・ミュズニックの第2回演奏会(杉並公会堂 19:00~)に行ってきた。医科学生オーケストラね。曲目の目当ては何と言っても、ショスタコーヴィチの交響曲第12番。プロのオーケストラでも比較的珍しい曲目なのに、平日夜の演奏会でメインの上、入場料無料。楽しみにしていた「タコヲタ」も多いのではないか。私のことなんですけどね。

会場は自由席で、6割程度の入り。前半のフンパーディンク、チャイコフスキーから、特に弦セクションがしっかりしてて良いなと思っていたのだが、メインのショスタコーヴィチが大当たり。行ってよかった。

冒頭のチェロ、コントラバスが奏でる旋律からしてゾクゾクした。弦セクションの地鳴りのような合奏は、自宅では決して味わえない。打楽器群も胴に入った音で、録音だとイマイチ乾いた音だったりするのだが、腹の奥まで響くような鳴らしっぷりに大満足。フルート、ピッコロを始めとした木管楽器の”ショスタコ節”も堪能できたし、各セクションが力の限りを尽くしていて素晴らしい。
ショスタコーヴィチの交響曲としてはイマイチな評価の第12番だが、プロ・アマ関係なく、この音楽絵巻はここまでやらないと映えないのだ。演奏会向きの曲とも言える。

個人的にショスタコーヴィチの音楽の演奏でポイントなのは、音の大きさ・小ささ、テンポの遅い・早い、そして音楽の「振幅」ではないかと思っている。ボリュームとスピードが織りなす独特の音響に加えて、獣や大蛇が息を潜めているような音の「気配」や「空気」と、それらが一気に襲い掛かってくるような「勢い」「凄惨さ」の落差が表現できていれば、演奏の疵など、私は大して気にならない。今回の演奏はその点で、最高だった。


⋯⋯最後はお前がショスタコーヴィチ好きなだけだろ、みたいな感想を並べてしまったが、事実その通りなのでしょうがない。
(白々しく)とまあこんな風に、演奏会を生活の一部に組み込んでみてはいかがだろうか。自宅で得られない、新たな発見・体験があるかもしれない。

*1:たまにいるんだな、これが。しかも話を聞いていると演奏家・経験者っぽい人だったりするのね。周りの心の声は聴こえなくなったようで、ウヒヒ。

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