雪に風情を多少は感じる性分ですが、「蛍雪」などとは縁遠い存在です。しかしたまには学問、いや雑学に絡めて。
書店等でいわゆる「名言集」が目につくことは多いかと思います。まず刺激的な本のタイトルと、1ページ・1名言のような構成が、手軽そうで惹きつけられます。また、自堕落な自分にとって体のいい起爆装置にならないかと期待します。一方で、購入すると何となく熱が冷め、内容の薄さも感じたりして読まなくなる本も経験上少なくないです。
今回は直接名言に感銘を受けたわけではないけれど、名言集のおかげで膝を打つことがあった話です。
- 作者:谷沢 永一
- メディア: 新書
その中で楠正成(楠木正成)伝(『桜井之書』)を引用している項があります。実はこの項の著者による解説が、自分の志向する趣味人・文化人的要素、俗に言うマニアやオタク像にピッタリはまり、シンプルな表現で大変気に入っています。以下引用:
人間というものは、自分の智恵はまだまだ不十分で、いまだ智恵を蓄え磨くことに関心があると思っているぐらいがちょうど良く、自分はすでに知恵がついたと思ってうがったものの見方をしているときは、すでにその智恵は腐り始めている。
(『名言の智恵 人生の智恵―古今東西の珠玉のことば』 PHP研究所 P.113)
本でもニュースでも、世にある宣伝文句で「上級者用」「マニア向け」などと銘打っているものに、何か抵抗を感じることはありませんか。また、そういった字面に惹かれてみたものの、「案外大したことないなぁ」などと思うことはありませんか。もちろん本当に”濃い”場合もありますが、そういった感覚はいわゆる「上には上がいる」を実感しているからこそだと思います。
そしてそんな方はおそらく、無意識に上記引用のような”心意気”なのでしょう。
心意気とは、大げさでしょうか。でも、ポリシーでもないし、プライドもしっくりこない気がします。「いやいや私はまだまだですよ」「私など端くれです」⋯自称するより、相手に評されたときにこんな返しができる人間でありたいものです。このサイトも日々節操のない話題で埋め尽くしていますが、いろんな記事を書くことで少しでもそんな域に近づきたい。
⋯まあ正直、「マニアック」「ディープな世界」といった字面をみただけでスルーしちゃうタチなのですよ。ああ、なんか喧嘩を売っているかな。