デジタルエンタテイメント断片情報誌

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駅売りとスワロフスキーとマーラーの”懐”

スワロフスキーと言っても、ジュエリーではございません、ええ。普段そういったものに縁が無い私でもそれくらいは注意喚起できますよ。大体、日々節操も統一性もない記事で埋め尽くしているとはいえ、さすがにファッションやアクセサリーの話は勘弁してください。

今回は指揮者ハンス・スワロフスキーの話です。

クラシック音楽でもご多分に漏れず、違法にコピーされた海賊版や、正式な演奏家・団体が不明な録音が溢れかえっていた時期があった。今でも駅前やスーパーで音楽CDを販売する特設コーナーを見かけることがあると思うが、ああいう場所で安価に売られているクラシック音楽のCDが「パチモン」だったのだ。ひょっとしたら今でもそうなのかもしれない。聞くところによると、その問題に対処すべく正規の国内盤が1枚千円前後の価格で販売されるようになったらしい。

ともかく、そういったCDが世に溢れ出した頃に、コピー元の録音だったのか、名前だけ使われたのかわからないがよくみかけたのが指揮者「ハンス・スワロフスキー」の名前だった。要は評価しようにも「本当にスワロフスキーが指揮した録音なのか?」という確認作業が必要な状態だったのだ。

そんなスワロフスキーの音源がまともに発売され評価できるようになったのは、割と近年なのではないかと思う。私自身、アバドやメータの指揮の先生、くらいしか認識のなかったスワロフスキーだが、数少ない録音の中で「これは」という録音が数点ある。

その中でも今回は、ウィーン交響楽団とマーラーの交響曲第5番(BERLIN CLASSICS)を紹介したい。これがもうね、凄い。オーケストラをよく鳴らし、細部まで聴かせるだけでなく、音楽の表情づけが自由自在。この録音ほど、光と影すべてを表現しきった演奏はなかなかないと思う。特に終楽章のインテンポによる歌い上げは、オーケストラがバテバテになるまで音を、音楽を絞り出していて圧巻。マーラーの録音聴き比べなんぞするときは、ぜひリストに入れて欲しい。

(2024/2追記:商品リンク更新とSpotifyリンクを追加。まず試聴をどうぞ)

Symphony No 5

Symphony No 5

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余談だが、欅坂46の『キミガイナイ』という歌の歌詞に「マーラーの憂鬱な交響曲」というのがあって、どの交響曲のことか、とか、そもそもマーラーの交響曲で「憂鬱」を感じるのか? マーラーのこと知ってる? みたいな話題がクラシック音楽ファンの間に噴出したのを一頃見かけた気がする。実際、私もこの歌詞に一瞬抵抗を覚えた記憶がある。

(2024/2追記:Spotifyリンクを追加)

キミガイナイ

キミガイナイ

  • Sony Music Labels Inc.
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だが改めてこのスワロフスキーの録音を聴くにつけ、別に憂鬱を感じても良いんじゃない、マーラーは曲に陰も陽も結集させてるから、いろんな聴き手にいろんな表情を用意してるよ、などとうそぶきたい気分になった。ましてこの程度で、欅坂46や作詞者に噛み付いたり皮肉るのは一言、狭量かなと思う。

もちろん自戒も込めて、ネ。

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