デジタルエンタテイメント断片情報誌

デジタルな話題もそうでない話題も疎らに投稿

ティシチェンコの弦楽四重奏曲全集がお気に入り

室内楽や器楽は、全集やBOXをドカンと購入してまとめ聴きをしている。体系立てて回収しつつ、その中で気に入った曲は他の単発盤を漁るというスタイルだ。最近そうやって聴いている中で、一際面白かったのがティシチェンコの弦楽四重奏曲全集(Northern Flowers NF/PMA9990-92)。いやはや、買い溜めておいた全集にようやく到着しての感想で(全集の発売はもう4年くらい前)、気恥ずかしいがここらで話題にしようと思う。ありがたいことに、ナクソス(NML)でも聴ける。

Boris Tishchenko - Complete String Quartet

Boris Tishchenko - Complete String Quartet

作品も比較的多く、師であるショスタコーヴィチの曲を引用した作品もあるせいか、この人もやはり交響曲が注目されがちだ*1。しかしこの全集を聴いてみると、弦楽四重奏曲が想像以上に魅力的だった。聴くジャンルをハナから絞らず、雑食してきたかいがあったとういうものだ。

「ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲が好きな人におすすめ」といった宣伝文句で売られているようだが、私が聴いて受けた印象は逆。むしろ「ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲が苦手な人、(現代音楽として)物足りない人」におすすめしたい。また、シュニトケのアヴァンギャルドはちょっと聴き通せない・よくわからない人も、ティシチェンコならいけるんじゃないかという気がする。

用いられる旋律は、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲にみられるような悲痛で厳しい響きではなく、もっと抒情的で温かく、大変惹きつけられる。若書きの第1番から晩年の第6番まで、こういう旋律が印象的に現れる。特に6番では感動的。それでいて作品を構成している現代音楽としての無調や、実験的な響きが作品の興味を削がない。耳に心地良いのだ。現代音楽と聞いただけで、「響きが不快」、「気持ちが悪くなる音で溢れている」と決めつけるのはやはり早計で偏見だ。まず作品を聴いてからの話だと思う。

師のショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲は全集含め様々な演奏団体が取り組んでいるが、ティシチェンコも、もっと色々な演奏を聴いてみたい。演奏会でやるなら、ぜひ行ってみたい。

ちなみに弦楽四重奏曲第1番と3番がタネーエフ四重奏団の演奏で、ティシチェンコを聴いたついでにショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全集をついつい聴き直してしまう。タネーエフ四重奏団が演奏するショスタコーヴィチの全集はAulosが復刻して以来、また手に入れにくくなっているようで、こちらは残念だ。

*1:そういえば亀山郁夫の新書で取り上げられたときも交響曲第5番の話だった。

スポンサーリンク