デジタルエンタテイメント断片情報誌

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クラシック音楽・名曲を拘って楽しむ 第4回

クラシック音楽を趣味とする界隈で、好きな演奏・録音を「これさあえれば他はいらない」「○○(作品名)の演奏は○○(演奏家・団体)に止めを刺す」、などと評していることがある。比較的息の長いフレーズで、ネット上で検索すれば一字一句同じでなくとも、同義の使用例が今でも簡単に見つかるだろう。

「個人の趣味だから」と言ってしまえばそれまでなのだが、さすがにここまで言われると「そうかなぁ、他にも良い物があるのでは?」、「(半ば嫌味を込めて)余程、世にある演奏を聴き尽くしているのだろうなあ」などと思ってしまう。そして自分の所有している音源を聴き直したりする。話に上がった音源を持っていなければ、買い漁る。

一方で単純な良い・悪いという評判(それこそ「○○(演奏・録音)は良いね」、程度)にも簡単に食いついてしまう。悪いというのなら尚の事、如何に悪いのか聴いて確認しておきたくなる。それがファンの端くれとして、このご時世、世にどれだけ未知の録音・演奏が溢れていて、かつ手に入れることが容易になったかを多少考えた上での、ささやかな流儀、いや礼儀だと思っている。


というわけで今回録音を紹介したいのはチャイコフスキーの『交響曲第4番』です。もう「止めを刺す」なんて書いたら、「勝手に刺しておけ」と言われそうなくらい選択肢の多い作品です。

実は私も、長らくムラヴィンスキー指揮レニングラードフィルハーモニー管弦楽団の演奏(1960、DG)が最高だと、言い聞かせるように聴いていました(今でも好きな演奏ではあります)。世の定評に影響を受けなかったといったら嘘になります。また、曲そのものよりも指揮者・演奏団体に心酔していた節もありました。でもね、やっぱり音源を漁っていくと惹かれる演奏が他にも沢山あるんだなぁ。最近、ようやく素直にそう思えるようになった気がします。いやはや、私も「これさえあれば他はいらない」と書いて、満足してみたいものです。

有名曲なので曲自体に「飽きた」という御仁も大勢いるでしょうが、個人的には「はじめ熱心に聴いて、しばらくしたら、また聴きたくなる」を繰り返す曲ですね。そうやって聴き継がれて、今の評価があるのでしょうね。

・フランスのオーケストラによる4番
アルベルト指揮ラムルー管弦楽団の演奏は、LP時代でも割と知られていた録音だったようですが、近年になって入手しやすいCDで復刻されました(ACCORD)。今ならMP3でも販売されています。ムラヴィンスキーのDG録音と近い時期のステレオ録音(1959)。ロシアのオーケストラとは異なる、ここぞという所でパンチの効いた管楽器と、時に華々しく、時に荒々しい演奏の振幅がとても楽しい名演奏です。この復刻シリーズでは他にも、フレスティエ指揮セント・ソリ管弦楽団ベルリオーズ幻想交響曲なども素晴らしくて、カタログから消えてほしくないですねぇ。

Tchaikovsky: Sym No 4 / Borodin: In the Steppes

Tchaikovsky: Sym No 4 / Borodin: In the Steppes


フランスオケからもう1枚。今年の新譜、コンドラシン指揮フランス国立放送管弦楽団による1976年のステレオライブ録音(Altus)。これはもう本当に面白い。同時リリースのショスタコーヴィチ交響曲第8番の録音(1969年)の方が注目されそうだし、話題にする御仁も多いかもしれない。実際私もショスタコーヴィチの「ついでに」購入した。すると聴いてビックリ、ショスタコーヴィチも良かったが、アタリはこのチャイコフスキーだった。「今更チャイコフスキーなんて」と言わず、ぜひ聴いてみて欲しい。コンドラシンの真っ直ぐなテンポ設定に、オーケストラが強烈なリズムと音響を叩き込んでいる。そして前述のフランスオケ特有の華々しさ・荒々しさがよくマッチしている。演奏の疵は散見されるが、技術的なものというより、勢い余ってつんのめった感アリアリで、それすら聴いていて楽しくなる。そう、これはコンドラシンショスタコーヴィチ解釈に近い演奏なのです。逆に言えば、コンドラシンショスタコーヴィチをロシアの交響曲の系譜として扱っているのだなあ、と感慨しきりです。

チャイコフスキーの演奏だけでも高カロリーなのに、併録のプロコフィエフ:交響組曲『キージェ中尉』がまた凄い。これもアタリ。コンドラシンにはNHK交響楽団との1980年の録音(キングレコード KICC3017)があり、解釈は近いが、録音・オーケストラの音色は格段にこちらの方が良い。このCDはコンドラシン、ロシア作品・オーケストラファンのみならず、広く聴いてもらいたいです。

・ロシアのオーケストラによる4番

「本場の味」などと言われると、またしてもコレクター根性で「それってそんなに良いものかね?」なんて疑問をぶつけたくなる時があるが、国やオーケストラの演奏・解釈の伝統と冷静に考えていくと、結局音源漁りをしてしまう。カタログから消えて久しいが、ドミトリエフ指揮サンクトペテルブルク交響楽団チャイコフスキー後期交響曲SONY)は、「今でもロシアのオーケストラはこんな音色なんだ」「こういう解釈の演奏が聴かれているんだな」と思わせてくれる演奏。デジタル時代の録音で残してくれたことにも感謝。再発して欲しいなあ。

交響曲第4番ヘ短調

交響曲第4番ヘ短調

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