デジタルエンタテイメント断片情報誌

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CD『伊福部昭百年紀Vol.1』を聴く

生誕100年を記念して、昨年から今年にかけて、伊福部昭作品の演奏会や新音源・録音の発売が盛んです。ファンとしては「(アニバーサリー・イヤーに限らず)もっともっと普段から取り上げてよ!」という気持ちもある一方、やっぱり嬉しい。

私にとって伊福部昭の音楽は、クラシック音楽に限らず、映画・特撮・アニメ・歴史と色々な趣味に引き戻されたり、足を突っ込んでしまうことになってしまった、いわば「すべての元凶」と言っても過言ではない存在です。元凶は言葉が悪いかな? じゃあメフィスト。うーん、こんな下衆な文章で使っていたら、元ネタを知っているファンに怒られますな*1。とにかく、それくらい氏の音楽は聴きたい・知りたい魅力に溢れているのです。

そんな中、今年行われた演奏会のCDが先日発売になって、これがすごく良い。『伊福部昭百年紀Vol.1』(スリーシェルズ)である。2014/2/1・すみだトリフォニーでのライブ録音。収録内容は映画音楽デビュー作の「銀嶺の果て」から、鉄道記録映画作品(「国鉄」組曲)、「ゴジラ(1954)」、「海底軍艦」、「地球防衛軍」といった特撮映画作品が並ぶ。

伊福部昭百年紀Vol.1

伊福部昭百年紀Vol.1

  • 発売日: 2014/06/10
  • メディア: CD

ここ最近は特に純音楽作品での評価・蘇演の機会が多くなり、映画音楽作品の演奏がこれほどメインで取り上げられることがあまりなかったように思う。企画・演奏曲目共に大変刺激的な内容だ。『完全収録 伊福部昭』や『東宝怪獣行進曲』といったサントラを蒐集・愛聴している御仁には特に聴いてもらいたいと思う*2。劇中での迫力に負けない演奏・録音でいて、演奏会用の組曲として聴きやすく再構成・編曲されている。また、ライブ録音だが演奏の疵・ノイズも気にならない。

特に曲目の感想を言うと、「銀嶺の果て」より3つのシーンは、改めて伊福部作品でのピアノの効用と、バレエ曲とのつながりを感じる。「国鉄」組曲は馴染みのモチーフが現れつつ、ユニーク。記録映画「国鉄」の映像が観てみたい。「ゴジラ」組曲は7/13の演奏会が楽しみになる。フリゲートマーチ(M11)の開放感ある演奏、決死の放送(M-B)の空間が歪むような迫力がたまらない。サントラ『怪獣王』に収録の「ゴジラ組曲3-1954-〜ゴジラ〜」と聴き比べても面白いでしょう(※)。「海底軍艦」組曲は、構成が『ゴジラ伝説』の「轟天建武隊出撃せり!」に似ていて、マーチを心ゆくまで楽しめる。個人的には海底軍艦試運転3(M17)も聴きたかった。「地球防衛軍」組曲の迫力はぜひ聴いて欲しい。マーカライト・ファープ(M17)はよくぞここまでやってくれた、という演奏で、『SF交響ファンタジー第3番』が物足りなくなる。この演奏でサントラを完全再現して欲しいくらいです。アンコールの「交響ファンタジー「ゴジラVSキングギドラ」より」は演奏当日の演者の演奏ぶりが印象的だったが、改めて聴いた録音は、バランスよく収録されていて聴きやすいな、と思う。

(※)7/15追記:『怪獣王』収録の「ゴジラ組曲3-1954-〜ゴジラ〜」は「伊福部昭『ゴジラ』映画音楽の世界」(AI-2014-1、-2)という生誕百周年記念のCDで入手できるようになりました。オーケストラ、録音状態ともにサントラという感じのまとまった演奏です。このディスクでは第二回伊福部昭音楽祭の「『ゴジラ』より<オリジナル版>」も聴けます。先日の全曲演奏といい、演奏・録音に恵まれてきました。


*1:三浦淳史のライナーノーツは品のある文章で面白かったなぁ。

*2:まあそういう御仁はおそらく演奏会の情報から既に嗅ぎつけているだろうが・・。

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