ベートーベンの交響曲第9番『合唱付』が好きな人はよく見かける。特にCDのレビュー、感想はちょっと検索すればゴロゴロ出てくる。だが、そういう人が第9の演奏会に足繁く通っているかというと、案外そうでもなさそうだ。CDの感想が列挙されていても、演奏会に関する言及はゼロの人はザラにいる。
手軽さや個人の都合(または単に話題にしていない)はあるので、実演を聴いていないから云々なんて全く思ってはいない。ただ、特にこの時期の日本はほぼ毎週第9が聴ける時期であり、色んな演奏を聴くという点でせっかくの好機を逃しているのでは、とふと思うことがある。
そんなわけで今日は、「MAXフィルハーモニー管弦楽団」の演奏を聴きに行ってきた。実は今年になってこのオーケストラの存在を知ったクチなのだが、公式ページもない(検索するとfacebookはある)のでどんなオーケストラかよくわからなかった。せっかくなのでプログラムから当日の曲目と、ごく簡単なオーケストラの概要を引用しておこう。
2013/12/30 14:00開演
場所:紀尾井ホール(四ツ谷)
モーツァルト:歌劇「魔笛」序曲
モーツァルト:オーボエ協奏曲K.314(285d)
ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付」
サイモン・イームス(Ob)他
古澤直久指揮 MAXフィルハーモニー管弦楽団MAXフィルハーモニー管弦楽団
年末にベートーヴェンの「第九」を! という指揮者古澤直久の呼びかけで結成された。プロフェッショナルからアマチュアまで、幅広い層の音楽家が集まっている。
特定の作曲家・曲を中心に取り上げているアマチュアオーケストラといえばオーケストラ・ダスビダーニャ(ショスタコーヴィチメイン)やオーケストラ・ニッポニカ(邦人作品メイン)が思い浮かぶ。ベートーヴェンの第9メインのオーケストラは、そういえばありそうでなかった。
しかし日本のオーケストラだと年末(12月)はどこもかしこも第9、という気がするが、これはアレか、ホントの年末に演奏するぞという意味か。ちなみに指揮者・ソリストはマレーシアフィルハーモニー管弦楽団の奏者。これも興味を惹かれた理由だったりする。マレーシアフィルはスメタナの『我が祖国』が良い演奏(SACD)で気になっていたのだ(このお二人が録音に参加しているかは不明)。※参加されているとのことです(12/31追記)
スメタナ:わが祖国 (全曲) (Smetana : Ma Vlast / Claus Peter Flor , Malaysian Phil) (SACD Hybrid)
- アーティスト: スメタナ,クラウス・ペーター・フロール,マレーシア・フィル
- 出版社/メーカー: BIS
- 発売日: 2011/01/13
- メディア: CD
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それでは演奏会の感想。前半2曲のモーツァルトは曲自体が好き過ぎるので割愛。オーボエ協奏曲が生で聴けて満足。
メインの第9は、流石第9のためのオーケストラというべきか、上手い。これなら毎年聴きに行きたくなる。入場料を考えてもかなりお得だと思う。個人的にはこの時期第9を聴きたくなったら、プロオケ含めたところでも、迷わず選択肢に入れたい。3楽章の演奏が美しくて、もたれない演奏だったのが印象的。全体の演奏タイムは標準的だった(70分程度)が、各楽章しっかり聴かせてくれる良い演奏。あとは、管楽器が想像以上に上手く、また響きが良かった(これはホールの特性もあるのかな?)。
演奏頻度の少ない曲を聴きに行くことが多いため、特にアマチュアオーケストラを聴きに行く時は、明らかな弦の滑りや管楽器の音が弱い・音外しを感じないだけで個人的にはOKなのだが、今回そういう不満はほとんど感じなかった。また、紀尾井ホールとしてはオーボエ協奏曲くらいの編成が持ち味を活かせるのだろうが(実際良い演奏だった)、第9の編成でも音がドカドカせず、気にならなかった。
最後のアンコール、というか締めは『ほたるのひかり』(蛍の光)。粋な選曲だと思いました。毎年そうなのかな? 選曲の理由が気になってちょっと考えたのですが、マレーシアは蛍が有名だからかな?
『ほたるのひかり』の演奏は2番まででしたが、最近の政治・国際情勢的に3番・4番が思い浮かんで…なんて安直な政治ネタはやめときます。ただ、『蛍の光』は曲も、どの歌詞も好きです。年末に素敵なオーケストラ・演奏会に巡り会えて幸運でした。
(2018年追記)
年末になると、この記事のアクセスが急増するのだが、おそらく検索で辿り着いた御仁の求める内容ではない気がするので、単なる第9のオススメ録音について書いた記事をリンクしておきたい。
こちらのほうが幾分、録音目的ならば有用かと思う。